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2005年01月31日

教育基本法改悪案の今国会上程を阻止できました

教科書情報資料センター
 ∟●教育基本法改悪案の今国会上程を阻止できました

教育基本法改悪案の今国会上程を阻止できました
――次は、流れを完全にこちらへ引き寄せる運動へ!!――

  1月26日、与党は、教育基本法改悪案の今国会への上程を断念しました。産経新聞は、「中央教育審議会が基本法見直しを答申して2年近くが経過してもなお、改正のメドはたっていない」と嘆き、上程は「来年の通常国会以降に先送りされる」という見通しを報じ(国内外ニュース1/28)、たんなる「上程延期」にとどまらない可能性を示唆しました。

  今国会への上程を断念させた最大の理由は、なんといっても与党内の二つの対立でした。その一つは、自民党内部の未調整。いくつかの記事は、上程断念の理由を、「郵政審議を優先」のため、としていますが、これはあくまで表向き。上の産経の記事が認めているように、なんといっても三位一体改革の横槍によるものです。三位一体改革による義務教育費の国庫負担の廃止は、文科省の権限を弱め、教基法の改悪の流れと真っ向から対立するため、これまで教基法の改悪を推進してきた森喜朗氏などは、国庫負担廃止を強行しようする麻生太郎氏など(彼らも教基法の改悪では盟友だった)と対立、決着は、今年秋に予定されている中教審での結論待ちになりました。

  これにあせったのが右派です。中教審には、三位一体改革派も新たに加えて審議するため、必ずしも彼らが希望するような結論になる保障はないからです。ならば逆に、今国会で教基法改悪案を成立させることにより、秋の中教審の結論を縛ろうと、彼らは上程にやっきとなり、公明を動かそうとしました。

  しかし、公明党は、昨年6月に教基法に関する与党合意を行ったものの、参院選挙で自民党に大きな退潮の兆しを見、さらに与党内で相対的に力が増したこともあって、以後は様々な面で独自色を強めてきました。愛国心をめぐる自民との対立だけがよく報道されていますが、それ以外でもいくつのもの点で、与党合意を行き過ぎとする見解が党の主流を占め、ぶり返しが起こってきました。その結果、自・公の対立は今、一般に知られている以上に深まっている現状なのです(愛国心を受け入れる考えが公明に広がっているとする朝日1/17の記事は、その点で誤報に近いものです)。

  以上が、与党内の第二の対立でした。報道紙によると、憲法論議との調整の必要性が理由であったように報じているものがありますし、とくに教基法の前文に現憲法が盛り込まれているため、それを改訂するには改憲論議との関連が浮上するのは確かです。しかし、前文の憲法との関係部分を削って法を成立させることも不可能ではありませんでした。むしろ、教基法の改悪は、自民党右派によって憲法改悪の前提として戦略的に位置づけられてきました。もし今後、憲法改悪とリンクさせることが原則となるなら、逆に教基法の改悪も、憲法改悪の高いハードル――国会の三分の二、国民過半数の賛成――を飛び越える状況にならなければ実現しないことになります。これでは、教基法改悪の戦略を破綻させますし、実質的には論議を棚上げにすることも意味するでしょう。

  そのため自民党右派は、深い危機感をもって、今国会での上程へ向け、公明党に対して激しい圧力をかけてきました。そのことによる動揺もあって、公明が岐路に立たされたことは事実です(先の朝日1/17の記事は、これを伝えたものでした)。しかし、今年7月の都議戦をひかえ、公明は、教基法の改悪に対してより批判的な創価学会の協力を得なければなりません。これが大きな転機となりました。そして、私たちの存在も、ここで大きな力となったのです。

 「教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会」は、昨年来、院内集会やロビーイング活動など、波状的な働きかけを国会に対して行いました。この動きは、これまでの日教組・全教という枠の外にある新鮮な勢力として、議員会館に新しい風を送り込んだのでした。これは、公明が感じていた孤立感を払拭させるとともに、自民が本格的に公明を揺さぶるためには、民主の一部を巻き込むしかなかったのですが、すでに鳩山氏たちの超党派の動きが党中央から封じられていたのみならず、私たちの働きかけによって横路・生方氏などのリベラルの会(会員53人)が教基法について鮮明な立場を打ちだし、教育基本法の改悪を止めよう!11・6全国集会へ代表が参加、発言するなど、既存の共産・社民の反対がしっかりと健在であることを含め、強い核が国会の中に形づくられ、揺さぶりの余地を無くしたのでした。

  つまり市民運動が国会に新しい風を送ったことで、公明のがんばりを支える力になったのみならず、共・社はじめ民主リベラルの会を固め、中間派のブレを完全に消し去り、公明切り崩し戦術を自民党右派に取らせなくさせたのでした。これには、自民の分裂という予期せぬ味方が幸いしたとはいえ、そのチャンスを生かし切った私たちも、上程阻止に少なからずの力を発揮したということです。

  たしかに、これで教基法改悪そのものを阻止できたわけではありません。1年間の時間的余裕を得たにすぎない面があります。しかし、小泉政権はこれから終極へと向かい、政局は流動化する一途です。私たちは与えられた時間を生かし切り、これまで地方議会で勝ち得た多くの決議をさらに増やし、そして今年焦点となる「新しい歴史教科書をつくる会」との教科書採択に競り勝つならば、私たちは教基法の改悪を完全に阻止する段階へと歩を進めることができるでしょう。


投稿者 管理者 : 2005年01月31日 00:59

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