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2005年01月31日

東北大の学長選廃止、学部間の不公平は解消 「非民主的」との批判も

毎日新聞(1/29)

 ◇選考会議「経営感覚重視し選出」

 東北大(吉本高志学長)は今週、これまでの学長選挙を廃止し、新たに設けた「選考会議」が学長を決める方式を打ち出した。同大は国立大学法人に移行した昨春、大学運営の決定権を学部代表による評議会から、学外有識者の入った経営協議会に委ねる「改革」を行ったが、自らのトップすら投票で選べなくなる事態に、学内からは「研究者の意思が大学運営に反映されなくなる」と危惧(きぐ)する声が出ている。【鈴木英生】

 □民主的か公平か

 東北大の学長は1919年以来、教官による選挙で決めてきた。戦争で大学自治が危うくなった時代でも、文部省の圧力を受けながら選挙を貫いてきた歴史がある。いわば学長選は「大学自治の根幹」とも言える存在だった。

 しかし、その一方で、選挙での選出は教官数が多い学部の出身者ばかりから選ばれるという「欠点」も併せ持っていた。東北大の教官配置は工学部系約760人、医学部系約600人など理系に厚く、工学・医学部系で全教官(約2600人)の半数を超える。このため、新制大学移行(49年)後に選出された10人は、両学部出身者で8人を占め、他の学部は学長選の蚊帳の外に置かれてきたのが実態だった。

 「学長選改革」は、こうした経緯に照らし、「民主的だが必ずしも公平ではない」という在り方を否定したものと言える。学長選考会議の小田滋議長(元国際司法裁判所裁判官)は、従来の学長選びを「大学運営にとって合理的ではない」と退け、「法人化された大学の学長には、経営者としてふさわしいかどうかの判断も必要だ」と、学外からも幅広い人材を求められる新方式の意義を語った。

 □「みな後を追う」

 だが、選挙によらない学長選びは、学長に縁が薄かった文系学部からも疑問の声が上がっている。文学部のある教授は「私たちは学内の研究教育に責任を持てる人を、民主的に学長に選んできた」と指摘。選考会議が経営者感覚を強調している点をとらえ、「研究成果を即実社会に還元できるとは限らない文系学部は、さらに軽視されるかもしれない」と危機感を募らせた。

 東北大職員組合(吉田正志委員長)も、新方式を強く批判している。「ほとんどの大学構成員の意見を反映させる仕組みがない非民主的・独裁的なものだ」とし、新方式を導入するにしても、選考に一般教官の意思を反映させる仕組みを作るよう吉本学長に求めた。

 東北大は、国立大学法人になって以来、次々と学内改革を打ち出し、東京で連続セミナーを始めるなど「ブランド力」強化を目指す取り組みも始めている。学長選廃止もその一環といえ、選考会議委員の植木俊哉法学部長は「東大も京大も旧来の学長選を残したが、将来はみな東北大の後を追うだろう」と“先駆的取り組み”への自負を口にした。

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 ◇新制大学になって以降に選ばれた学長

氏名    出身学部 在任期間
黒川利雄  医    57年7月~63年6月
石津照璽  文    63年7月~65年10月
本川弘一  医    65年11月~71年2月
加藤陸奥雄 理    71年5月~77年4月
前田四郎  工    77年5月~83年4月
石田名香雄 医    83年5月~89年4月
大谷茂盛  工    89年5月~90年9月
西沢潤一  ※    90年11月~96年11月
阿部博之  工    96年11月~02年11月
吉本高志  医    02年11月~


投稿者 管理者 : 2005年01月31日 01:01

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