個別エントリー別

« 悪魔の鏡(シリーズ2) | メイン | その他大学関係のニュース »

2005年02月15日

横浜市大、どうにも止まらぬ「教員流出」

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ∟●横浜市大、どうにも止まらぬ「教員流出」(2005-2-14)

横浜市大、どうにも止まらぬ「教員流出」

 『「改革」に揺れる横浜市大、密室で決定 いきなり公表 トップダウン、学部統合 全教員の任期制 研究費ゼロ』と報道した、「東京新聞」(2004年2月16日付)「特報」欄で、『逃げ出す教員「隠れFA」も、“石原・都立大”と手法同様』という巨大な見出しが躍ったのをご記憶の方も多いだろう[1]。その当時以前から、中田市長らによる「市大改革」に嫌気がさして教員流出が始まっていたが、最近の調査で、その流れがどうにも止まらなくなっていることが判明した。リストラ対象となった八景キャンパスと木原生物学研究所における過去3年間の教員数の推移を、下記の表に示す。……


 …表から分かるように、全体で21.5%の減員となっているが、減員が最も多い商学部で26.4%減、次いで国際文化学部の24.1%減、木原生研の22.2%減、総合理学研究科の16.7%減、理学部の16.4%減となっている。このような大幅な減員では、横浜市大が過去75年以上にわたって築いてきた学問的蓄積と伝統をとうてい維持・発展できるはずもなく、教育・研究面での大幅なレベルダウンと市民からの信頼失墜は避けられないだろう。

 なかでもとくに目立つのが流出者の多さで、全退職者56名のうち、75%を流出者が、残りの25%を定年退職者が占めている。「毎日新聞」(2004年5月29日付)が『キャンパスは『異常事態』 学生は不安、研究者は去っていく』の見出しで報道した、日本中世史の泰斗、今谷明教授(現国際日本文化研究センター教授)の流出[2]をはじめとして、過去3年間で合計42名、本年度だけでも14名の教員が流出する。本年3月末に流出予定の教員の中には、現・前学部長等の幹部教員も含まれている。 

 横浜市当局は、昨年末の12月28日に教員組合に対して、「公立大学法人横浜市立大学教職員の勤務条件等に関する文書」(『「無抵抗な家畜の群れ」化へのマニュアル』05-1-5)なる文書[3]を提示したが、この文書は、「全国の就業規則のなかで最悪の就業規則」[4]・「滅茶苦茶ですね」[5]などの惨憺たる悪評の代物である。また、先月27日に行われた当局による「教員の勤務条件に関する説明会」では、福島部長(大学改革推進部、人事・労務担当)の“有期雇用の方が雇用は安定していて、任期を定めない雇用は不安定だ”という“暴論”が飛びだし、教員組合から“期間の定めのない雇用を不安定と強弁するのは、不見識をとおりこし、意図的で悪質な主張と言わざるをえません”と糾弾されているが、このような“暴論”をゴリ押しして平気な人達は、どう考えてもまともとは思えない[6]。いっぽう、流出教員の余りの多さに危機感を覚えたのか、松浦最高経営責任者(CEO)・副理事長[7]が“もうこれ以上、出て行かないでください。限界です。”と、教員説明会の席上で“悲鳴”を上げたという。

 本年度の横浜市大入試では受験者数が「激減」したが、とくに不人気だった理学系では、倍率が昨年度の5.0倍から本年度の2.0倍へと急落した[8]。これを知って市大の将来性に見切りをつけた複数の理学部4年生が、大学院の進学先を、すでに合格していた市大から他大学の大学院へと志望変更する連鎖反応もおきている。『東京新聞』が昨年4月20日付「特報」欄で、「波紋広がる横浜市大 教員に続き院生も流出」と報道[9]した流れがますます加速し、もうどうにも止まらくなってしまった証拠だろう。

 行政に生殺与奪の権を握られ、教員と院生に逃げられ、受験生にも見放されて、横浜市大はどこまで落ちて行くのか。 

2005年2月14日 総合理学研究科 佐藤真彦

----------------------------------------------------------
[1]

『東京新聞』2004年2月16日付 こちら特報部:『改革』に揺れる横浜市立大 学部統合全教員の任期制 研究費ゼロ
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040216tokyo.pdf 
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040216tokyo.htm 
[2]
『毎日新聞』2004年5月29日付 横浜市大、地方独立法人に移行へ キャンパスは『異常事態』 学生は不安、研究者は去っていく
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040529mainichi.pdf 
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040529mainichi.htm 
[3]
横浜市立大の全教員任期制、「恐るべき法解釈」 「一般民間企業で全社員を有期契約にしている事例はあるのか」05-1-5
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050105katayama-nagamine.htm
『無抵抗な家畜の群れ』化へのマニュアル: 横浜市当局、勤務条件・任期制等について提示 05-1-5
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050105hitsuji.htm 
・・・横浜市当局は,昨年末の12月28日に,教員組合に対して勤務条件・任期制等についての文書を提示した.一読して明らかなように,教員評価制度と連動した,全教員に対する任期制と年俸制を強制することで,行政の意を汲んだ教員の協力のもとに,市当局が教員を徹底管理することを第一目的としたマニュアルとなっている.すなわち,伊豆利彦本学名誉教授がいみじくも指摘された,教員を「無抵抗な家畜の群れ」化するためのマニュアルである.・・・
[4]
永岑三千輝氏『大学改革日誌』2005年1月12日付 「全国の就業規則の中で、目下のところ最悪の就業規則」、その意味での文字通りの「オンリーワンの就業規則案だ」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050112nagamine.htm 
[5]
「滅茶苦茶ですね」 永岑三千輝氏『大学改革日誌』2005年2月9日付
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050209nagamine-mechakucha.htm 
・・・つまり「1年経過後」に整理解雇を実施する意図があることを言外にほのめかしているのではないかということです。「法人化された後の横浜市大では1年後に整理解雇を行う予定である。任期制を選択した教員はその対象外であるから、よりましな選択だ。」という脅し(メッセージ)がその中に含まれていると考えなければならないということです。・・・ところで、昨年末に出された就業規則案ですが、ひどいですね。組合でも議論されたことと思いますが、まったく噴飯ものの案ですね。特に懲戒の理由に「法人の名誉や信用を著しく傷つけた場合」とは別に「法人に対する誹謗中傷等によって法人の名誉を傷づけ」というのがあります。これは拡大解釈で、教員・職員による大学批判を封じる条項になりかねません。先生のように意見(異見)を自由に公にされることに引っ掛けてくるかと思います。くれぐれもお気をつけください。・・・
[6]
2005.02.08 「教員組合週報」(PDF版)を発行しました。内容/教員説明会における福島部長の暴論を糺す
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/kumiai-news/weekly050208.pdf 
教員説明会(1月27日)における福島部長の暴論を糺す 05-2-8
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050208weekly.htm 
・・・福島発言の核心を取り出すと、「有期雇用の方が雇用は安定していて、任期を定めない雇用は不安定だ」ということになります。しかし、これはとんでもなく逆立ちした主張です。・・・雇用形態のこのちがいを逆立ちさせ、期間の定めのない雇用を不安定と強弁するのは、不見識をとおりこし、意図的で悪質な主張と言わざるをえません。・・・労使交渉を誠実に果たすべき役割と責任を持つ人事・労務担当者がこうした発言を行うことは大学当局への深刻な不信感をもたらすものであり、座視することができません。何が何でも任期制に同意させるための誘導とみられても仕方のない発言は厳に慎むべきです。・・・
[7]
横浜市立大、理事長に宝田良一氏(寶田商店代表社員)、副理事長・改革推進本部最高経営者に松浦敬紀氏(多摩大教授)に決定 04-7-23
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040723katayama-rijichou.htm 
臭気ぷんぷんの市大理事長人事 04-9-5
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040905ohnuki-punpun.htm 
・・・そして、おまけは、地方独立行政法人化される横浜市大の理事長に、食器店経営の宝田良一氏を選んだことです。宝田氏は昨年の知事選挙で自民、公明から推薦を受けて立候補した人物。昨年末市教育委員に就任したばかりでした。まったく畑違いの人物が市の教育委員になり、そして、市大の理事長になるとは、知事選での論功行賞を自民党・公明党に代わって行ったもので、とりもなおさず中田市長の両党へのすりよりの産物です。・・・
[8]
永岑三千輝氏『大学改革日誌』2005年2月4日付 横浜市大入試、受験者数「激減」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050204nagamine.htm 
・・・任期制と成果主義賃金の導入具体化案を見て、予想通りとはいえ、そのひどさにびっくりしています。・・・受験者数が発表になったので、昨年と比べてみました。今年の横浜市立大学の出願倍率はかなり落ちていますね。・・・商学部は半減、理学部はそれ以下ですから、「激減」といっていいですね。・・・全員任期制や成果主義賃金導入で教員が逃げ出し、商学部と理学部をつぶして受験生が逃げ出し、でしょうか。「市場」を無視した横浜市による改革の成果が早速でているような気がします。・・・
[9]
『東京新聞』2004年4月20日付 カリキュラム変更で競争力強化? 波紋広がる横浜市立大 学生側 「専攻課程がなくなる」 教員に続き院生も流出 大学側 「トップダウン必要」 改革断行「内部だけでは無理」 「結果で正しさ証明」 市長の意向、学長認める
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040420tokyoshinbun.pdf 
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040420tokyoshinbun.htm 


投稿者 管理者 : 2005年02月15日 00:51

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/656

コメント