個別エントリー別

« 横浜市立大、任期契約への同意書問題 一つの山場 | メイン | その他大学関係のニュース »

2005年03月22日

Academia e-Network Letterの終刊に思う

 Academia e-Network Letterの終刊が,2005年3月18日付の245号において伝えられました。
 同レターの編集発行人である辻下徹氏は,同氏のHPによれば,文部省が国立大学独立行政法人化の方針を打ち出した直後の1999年10月1日に「国立大学教官への呼びかけ」を発し,下記「終刊のお知らせ」にも触れられているように,2000年3月から日本の高等教育・学術研究に与える影響と問題点を掘り下げ,情報の共有と独立行政法人化のもつ諸問題についての共通認識を拡げるために,メールマガジン「独立行政法人化問題週報」を発行されました。それ以降,同週報は「国公私立大学通信」・「Academia e-Network Letter」と名称を変えつつ,今日に至るまでの約5年間,全国の大学人に送り届けられました。
 今回,終刊ということで,その5年間の足跡をあらためて確認させていただきました。それは次のようになっています。

■「独立行政法人化問題週報」(2000.3.13~2003.05.25 )(通算116号)
http://ac-net.org/wr/backnumber.html
■「国公私立大学通信」(2003.07.01~2003.09.30)(通算44号)
http://ac-net.org/kd/index.php
■「Academia e-Network Letter」(通算245号)
http://letter.ac-net.org/log.php

 5年間に渡って配信されたレターの総計はHPで見る限り405という膨大なものです(加えて,他にご自身がお書きになった文書類も数多くあります。5年間は約265週ですので,レターの発行頻度というものがここでよくわかります)。その内容も一つ一つ確認するまでもなく,単なる関係情報の羅列というものではなく,一つの編集方針に沿ってまとめられ,読者に分かりやすいように提供されています。これらの発行にあたっては,もちろん情報の収集が前提となるわけですから,同レターの発行頻度を考えると,この5年間は毎日のように情報の収集・編集・発行作業を繰り返されたことが容易に想像されます。こうした作業をお一人で継続されてきたことはまさに驚異であり,敬服に値するものです。
 レター読者もご承知のとおり,同編集人が編集したレターには,わが国における「国立大学独立行政法人化」のプロセス・事実関係が詳細に把握され,また生起するであろう様々な問題点とそれを指摘する多様な文書・声明等がほぼ全て蓄積されています。その意味で,同レターは国立大学独法化問題の「全貌」・「総体」を把握した唯一の歴史的記録と言えましょう。同様に,国立大問題のみならず,東京都立大,横浜市立大など公立大改革問題,さらには私学も含めて各大学で起こっている重要な問題や高等教育政策に関わる情勢も把握され情報提供されています。私が関わってきた不当解雇事件などの大学教員の権利侵害問題についても何度も取り上げていただきました。
 独法化されて1年たった現在,国立大学法人は,同レターで幾度となく問題として指摘されてきた事柄が現実化しつつあります。同じ独法化は,いま公立大学において頂点に達し,その過程で大学破壊さえ進行しています。私学にあっては,全体として2極分解が起こり,一方で市場原理により経営危機に瀕し廃校に向かって突き進む大学も多数現れてきました。学問の自由と大学の自治が甚だ軽視される時代となり,任期制問題に見られるごとく大学を担う教員の身分も不安定化してきました。
 こうした状況は,すべての大学人にとって,これまで以上に日本の高等教育の現状とその将来を真剣に考えさせる契機となっています。その際,Academia e-Network Letterの編集発行人が5年間配信し続けたレター,および膨大な文書・データを蓄積しているホームページ「国立大学独立行政法人化の諸問題」は,単なる過去の記録庫という消極的なものではなく,今後も引き続き大学問題を考えるうえで利用される第一級の「資料・情報・知の宝庫」となることは間違いありません。

 Academia e-Network Letterの終刊にあたり,辻下氏のこれまでのご努力に対して, あらためて心より敬意を表したいと思います。(ホームページ管理人)

終刊のお知らせ

Academia e-Network Letter No 245 (2005.3.18 Fri)

 多くの団体や個人による精力的な情報発信と、RSS Reader の普及により、インターネット上で大学界全体の変動を詳しくリアルタイムに知ることが容易となりましたので、この号をもちまして発行を終了します。

    ────────────────

 2000年3月にメールマガジン「国立大学独立行政法人化問題週報」を発刊して5年が経過しました。高等教育の新しい法体系における微小な違いが将来の大学全体のありかたを大きく左右すると考え、大学の教育と研究の現場で情報を共有し、独立行政法人化のもつ諸問題についての共通認識を拡げることにより事態を少しでも好転できないかという思いからでした。

 しかし、2002年4月には旧国立大学協会が独立行政法人化を「賛成多数」で了承したことにより、国立大学法人法が2003 年7月に成立し、国立大学制度は2004年3月で廃止となりました。2004年4月より、国立大学制度とは名称以外には法的共通点のない国立大学法人制度が動きだし、各国立大学法人の多彩な試み、種々の混乱、そして危惧されていた行政側の「背信行為」が伝わってきます。

 また、公立大学を独立行政法人化する検討を進める地方自治体も増え、独立行政法人制度を大学に適用することについて危惧されていた構造的問題点がそのまま現実となる事例もあります。私立大学の経営者も、国立大学法人の企業に匹敵する機動的で全権的な役員組織に危機感を持って、同様のものを実現しようとしているようです。

 全大学関係者で共に取りくむことが可能であった法的制度設計段階から、新しい歪の多い法的枠組を運用する段階に移り、国公私を問わず、具体的状況における「仁義なき」試行錯誤が満ちあふれる時が来たように感じられます。しかし、その中で、大学全体の未来を視野においた冷静な努力もボトムアップに真剣に行われてもいるようです。佐藤清隆氏の取りくみはそれを象徴するものと感じます。

────────────────

 これまで「大学界の緊急事態」と考え、配信拒否がない場合は配信をするオプトアウト形式をとってきました。無断配信に不快な思いをされたかたが多いと思いますが、どうぞお許しください。

 一方、いろいろな方々からの情報提供や励ましのメールと、日々情報発信を続けるウェブサイト・ブログ群に支えられてきました。メール送信者およびサイト管理者の方々に深く感謝いたします。

 国立大学制度が廃止されるまでに収集した資料等は、「国立大学独立行政法人化の諸問題のページ」 http://ac-net.org/dgh (1999.10 -2003.9)に保存しています。国立大学独法化阻止全国ネットワーク(2001.6-2004.6)のサイトhttp://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html には、重要文書が整理保存されています。

Academia e-Network Letter 編集発行人


投稿者 管理者 : 2005年03月22日 02:04

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/911

コメント