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2005年03月24日

埼玉大学教職員組合、学長見解撤回要求書

埼玉大学教職員組合
 ∟●学長見解撤回要求書(2005年1月24日)2005/3/16掲載
 ∟●学長回答(2005年3月2日)2005/3/16掲載

2005年1月24日
国立大学法人埼玉大学
 学長 田隅 三生殿
 教育研究評議会御中
埼玉大学教職員組合
執行委員長 本城 昇

学長権限に関する学長見解の撤回を求めます!!

 田隅学長は、200年12月3日、学長権限に関する見解を明らかにしました。しかし、大学構成員の間でこの見解に対して強い批判が巻き起こっています。この学長見解は、これまで生じた大学運営に関する問題を正当化し、埼玉大学の大学運営のルールを無視するものです。組合としては、この学長見解は次の問題があり、断固として認められません。田隅学長が同見解を直ちに撤回することを求めます。また、教育研究評議会は、このような学長の暴走を許してはならず、「国立大学法人埼玉大学教育研究評議会規則」を厳しく運用し、埼玉大学の教育研究に関する最重要機関としての役割を完遂していただくよう要求いたします。

1 学問の自由と大学の自治を無視するものであること
 学長見解は、「法人としての国立大学の意思決定は最終的に学長に委ねられている」とし、「学長は、教育研究評議会での教員評議員の意見に拘束されずに、その国立大学の教育研究に関する方針を決定する権限を有している」としている。これは、学長が大学の機関や大学構成員の意思に拘束されずに教育研究活動を含む大学運営について意思決定できる権限を持っているとするものといえる。このような意思決定権限が唯一学長に集中しているとする解釈は、学問の自由や大学の自治とどのように両立可能というのであろうか。こうした解釈では、自由闊達な教育研究活動が展開される基盤自体を損なわないという保障は確保されない。 学長見解は、学長が独裁的に全てを決めてよいということを意味しないとしているが、そう言うのであれば、それが制度的にどう保障されるのか説明すべきである。単に教育評議員の意見を考慮するという程度では、恩寵として少しは聞いてやるというのであり、権限としては独裁できると言っていることと同じようなものである。
 憲法で保障された学問の自由と密接に関係する大学の自治の重大性に鑑み、国立大学法人法第3条は、「この法律の運用に当たっては、国立大学……における教育研究の特性に常に配慮しなければならない」としている。同法の国会答弁において、文部科学大臣も、「大学における自主性の中で最も大事なのはその教育研究の自由、教授が持つ自由であろうと思います。当然ながら、それは新たな法人化いたしましても、正にそれがより自律的に自主的に行われるようになるということでございます」(2003年5月29日参議院文教科学委員会)と答弁している。しかし、教育研究活動を含む大学運営についての意思決定権限が唯一学長にあるとする上記解釈では、大学における教育研究の自由、大学構成員を基盤とする大学の自治は制度的に保障されず、そうした自由や自治は実体を失ってしまうのである。
 国立大学法人法成立時の国会附帯決議という形で、国会も、「国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営を確保すること」を求めている。学長見解は、学問の自由、大学の自治の重要性を全く認識していないのであり、学問の自由と大学の自由と対立するものであって、撤回されなければならない。

2 大学運営ルールを無視するものであること
 組合は、昨年12月10日、田隅学長に対して大学運営の正常化を求める要求書を提出した。しかし、その要求に応えようとしていない。それどころか、学長見解により、これまでの不正常な大学運営を正当化し、その姿勢を改めようとしていない。

(1)国立法人法についての問題のある理解
 学長見解は、「国立大学法人に設置された機関、すなわち、役員会、経営協議会、教育研究評議会は全て審議機関であり、意思決定を行う権限を有していない」とし、それら審議機関で審議されたとしても、その審議にかかわらず、学長が教育研究活動を含む大学運営にして意思決定できると主張していると見られる。
 しかし、役員会の審議・議決や教育研究評議会の審議について、国立大学法人法の国会答弁を見ても、そのような学長の暴走を許すような軽々しいものとしてとらえられていない。文部科学副大臣は、「学長が独断専行になった場合、暴君だと、こういうような場合、学長が意思決定を行うに当たっては、経営協議会あるいは教育研究評議会、これが審議や役員会の議決を踏まえる必要があるなど、一定のチェックの仕組みはあるわけでございます」(2003年5月29日参議院文教科学委員会)と答弁している。
 明らかに、役員会や教育研究評議会は、国立大学法人法上、学長の独断専行や暴走をチェックする仕組みであるととらえられている。前記学長見解のように、「学長は、教育研究評議会での教員評議員の意見に拘束されずに、その国立大学の教育研究に関する方針を決定する権限を有している」という乱暴な解釈をとると、学長の独断専行や暴走を制度的にチェックすることがなくなるのである。「教育研究評議会での教員評議員の意見に拘束されず」と断言するような乱暴な解釈は許されない。

(2)埼玉大学諸規則の無視
 組合は、前記要求書において、国立大学法人法第11条第1項は、「学長は、学校教育法第58条第3項に規定する職務(校務を掌り、所属職員を統督する)を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理する」としているが、これは学長の所掌業務の範囲を定めたものであり、具体的な権限行使を定めた規定ではなく、この規定をもって、学長に何でもできる権限が与えられていると解釈するのは問題があると指摘した。
 埼玉大学は、国立法人法の施行に合わせて、適正な手続を経て、国立大学法人法を踏まえた埼玉大学としての大学運営の諸規則を定めたのである。これら諸規則は、国立大学法人法を根拠法規として引用していることからも明らかなように、同法上適法なものであることを当然の前提としている。学長がこうした諸規則を根拠のないものとして無視することは許されないのであり、組合は、学長がこれら諸規則を厳守することを前記要求書において要求している。 ところが、学長は、学長見解で、これら諸規則を厳守するとは一言も言わないのみならず、これら諸規則を無視してもよいと受け取られても仕方がないようなことを述べている。学長見解は、前記の「学長は、教育研究評議会での教員評議員の意見に拘束されずに、その国立大学の教育研究に関する方針を決定する権限を有している」としているが、この点からすれば、一体、国立大学法人埼玉大学教育研究評議会規則第5条で「教育研究評議会の議事は、出席評議員の過半数で決し」と定めていることはどのような意味を持つというのであろうか。この規定は、法人化前の埼玉大学評議員会規程の規定と同じ文言を用いており、その点だけからしても、教育研究評議会の決定は大変重大な決定であることが分かる。そのような決定について、「拘束されず」と軽々しく言えるものではない。憲法で保障されている学問の自由、それと密接な関係にある大学の自治、また、それを踏まえた国立大学法人法第3条などからして、このような乱暴な見解は問題である。
 また、学長見解は、「本学の利益になりこそすれ、本学構成員に特段の不利益を巻き起こすことはないと考えられるものについては、いちいち教育研究評議会に諮らずに、学長決裁ですすめることにしている」とし、「放置すれば本学にとって有害となる事態が起きるので、それについて何らかの緊急処置を行うことが必要不可欠と私が判断した場合には、学長権限で処置することがある」とする。しかし、国立大学法人埼玉大学教育研究評議会規則は、大学構成員に特段の不利益を起こすことはない場合や緊急事態であっても、その審議を免除するとは定めていない。同規則第3条は、「次に掲げる事項について審議する」とし、教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項」、「教員人事に関する事項」、「その他大学の教育研究に関する重要事項」といった教育研究に関する事項を審議事項として掲げているのであり、大学構成員に特段の不利益を起こすことはない場合や緊急事態であれば、そうした審議事項に該当しても審議を免除するとは定めていないのである。こうした規則を無視した見解は許されない。
 学長見解は、埼玉大学諸規則の法的効力を否定するかのような論理を展開しており、これら諸規則を無視することがあるのであれば、他の法令を根拠とする規則すら一体どうなるのかということになる。実際、労働基準法に基づく就業規則とそれと一体の諸規程もどうなるのであろうか。この規程として、例えば、「埼玉大学教員の採用・懲戒等に関する規程」があるが、この規程第3条は、「大学教員の採用…の選考は、教育研究評議会の議に基づき学長が定める基準により、教授会等が行う」としており、教員の採用の選考については、教育研究評議会が基準を決め、教授会がそれにより行うことになっている。この規程第3条は、教育研究協議会や教授会の権限について規定しているが、この権限についても学長は前記のとおり「拘束されず」として無視できるというのであろうか。組合は、前記要求書において、現在、教授会は、学長の了承がないと教員採用の募集(つまり選考行為)ができない状況があることを指摘している。

(3)21世紀総合研究機構の短期プロジェクトの取消し
 学長は、上記緊急事態の例として、21世紀総合研究機構短期プロジェクトの取消しを挙げている。しかし、この取消しは、不正常なものといわざるを得ない。組合が前記要求書でも指摘しているとおり、当然求められるべき適正な手続も経ない一方的なとり潰しといえる。学長は、いかなる理由で「緊急処置」が必要不可欠と判断し、教育研究評議会や21世紀総合研究機構の審議もなしに取消すことができると考えたのか明らかにすべきである。
 ある名誉教授については、このプロジェクト取消しのみならず、大学当局は、「科学研究費補助金の申請資格の申合せ」を極めて短時間で作成し、当該名誉教授に対して申請有資格者の研究者番号を付与しないという措置をとった。また、大学当局は、当該名誉教授の名誉教授称号の剥脱を可能とするよう、無理矢理に「埼玉大学名誉教授称号授与規則」を改正しようとした。こうした行為は、異様な行為と言わざるを得ない。

 組合は、前述のとおり、昨年12月10日に田隅学長及び教育研究評議会に対して大学運営の要求書を提出しました。その中で、組合は、「この大学の運営については、学内で諸規則が定められているのであり、まず、この諸規則を学長や役員会は遵守する義務を負います。この諸規則を遵守しなければ、学長あるいは役員自身がこの大学を運営する資質・能力に欠く者として解任の対象となります」と指摘しました。ところが、学長見解は、以上述べたとおり、これまで生じた大学運営に関する問題を正当化し、埼玉大学の大学運営のルールを無視するものです。組合は、田隅学長が学長見解を直ちに撤回し、また、教育研究評議会が学長の暴走を許さないようしかるべき対応を図っていただくことを要求します。


投稿者 管理者 : 2005年03月24日 00:59

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