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2005年03月30日

大学管理本部、言論の自由が奪われ息苦しい大学に変えてしまう就業規則案

東京都立大学・短期大学教職員組合
 ∟●「大学に新しい風を」編集委員会「大学に新しい風を」(2005年3月29日)

言論の自由が奪われ息苦しい大学に変えてしまう就業規則案

就業規則検討グループ  2005.3.25

大学管理本部が、3月15日に発表し、23日に若干の修正を加えた就業規則、旧制度教員給与規則などの案(注1,2)は、以下に述べるように多くの点で重大な問題点を含んでいます。
1.勤勉に働いても昇給・昇任なし(旧3条2項)という公序良俗に反し、地方独立行政法人法57条に明白に反する違法な「旧制度教員給与規則」が出されました。これはあまりにも露骨であることから、すぐに23日の案で削除されました。しかし管理本部は、「3条2項を削除したとしても、昇任・昇給規定が旧制度教員給与規則にはないので、昇任・昇給は行われない」と主張しております。
2.また就業規則案には、学内での集会・演説・放送や文書等の配布の許可制に関する条項(38条)は、言論・出版・表現の自由を奪う危険性があり、学問の自由、大学の自治、信条・表現の自由など基本的人権を侵す条項であり、重大です。労働組合活動や学生の自治会活動すら抑圧することができます。また、任命権者の許可なくして発表を不可能とする守秘義務の条項(31条)により、大学や都政の問題点を指摘できなくし、企業でも行われている「内部告発」を押さえ込むことが危惧されます。しかも、対象となる行為に関しては、「法人の名誉若しくは信用を失墜させる行為」「法人の秩序及び規律を乱す行為」(30条)となっています。修正前の条項では、「そのおそれのあるもの」(38条2項3)、という非常に曖昧な定義となっていましたが、それは撤回されました。
3.さらに懲戒処分の条項は、不服の受付や対処手続きが規定されておらず、すべて理事長の裁量に任されるという、使用者の暴走に対する歯止めや人権尊重のない欠陥条項を含む治安維持法的な「就業規則」の提案です。これは、教育公務員特例法(注3)9条で、教員の人権を尊重した慎重な懲戒処分の手続きを規定していることを参考とすべきです。
4.給与や業績評価、大学運営のやり方に対して、問題点の指摘や不満を述べた文書や意見の表明が、理事長の許可制(38条)であることから考えて、それに反した場合には、解雇(46条4項)等の懲戒処分となりえます(45条)。
5.解雇の条件として、「業務上又は経営上やむを得ないとき」、「その他職務を遂行するために必要な資格又は適格性を欠くとき」(24条1項)という、非常に恣意的に首にしやすい条件が規定されています。たとえば、オープンユニバーシティーの場合には、早大や昭和女子大の例でも非常に赤字経営が問題とされていますが、この条項を使って整理解雇や配置替えが危惧されます。教特法6条や5条に規定されているような、教員の人権を尊重した慎重な手続きが必要です。
6.さらに、解雇の条件として「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入したとき」(新24条2項3)という条項について、「破防法」に基づいた規程は公務員に特有な条項ですが、非公務員に対しては破防法などに連なるだけでなく、思想信条の自由に抵触する条項となっている点から、東大等どの国立大学でも削除しております。職員についてのみこの条項を削除しましたが、教員についても削除すべきです。
7.そのような思想を改めさせるための研修を命ずる業務命令(43条)さえ発することが可能です。本来、教員の研修とは、「本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる」ものであるはずです。教特法20条や19条では、自主的な自己研鑽のために研修の権利が認められているのであり、首大の就業規則とは雲泥の差です。
8.また管理者は、「配置替等を命ぜられた教職員は、すみやかに着任しなければならない」、「着任できないときは、任命権者の承認を得なければならない」(37条)、「配置換等を命じられた教職員は、正当な理由なくこれを拒むことができない」(11条)と教職員の同意なしに自由に異動させることも可能であり、現在異動に関して教特法5条で行われている教員の人権を尊重した慎重な手続きの条項が欠落しています。

これらの条項は、懲戒・異動等の決定に際して行われて生きた教育公務員特例法で規定されている教員組織(教授会・評議会)の議に基づいて行うという諸手続や不服の受付や対処手続き(5,9条)が規定されていません。従って、上記に述べた条項を利用すれば、管理者は恣意的な懲戒・業務命令・異動・圧力が可能となります。このように教員の人権を保護する規定が、まったく欠落しており、すべて理事長の裁量に任される危険性があります。
そもそも、慎重な手続きや不服の手続き規定は、「学問の自由の保障」(憲法23条)や「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない」(教育基本法6条2項)という法律に基盤を置き、「教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基き、教育公務員の任免、分限、懲戒、服務及び研修について規定する」(教特法1条)という教員の人類的社会的倫理的責務の遂行のために教員の身分を保障する上で必要不可欠なものです。

……後略


投稿者 管理者 : 2005年03月30日 09:45

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