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2005年05月25日

日本労働弁護団、労働契約法制立法提言

日本労働弁護団
 ∟●労働契約法制立法提言(2005年5月19日)
 ∟●労働契約法制立法提言にあたって(2005年5月19日)

労働契約法制立法提言にあたって

2005年5月19日    
日本労働弁護団      
会長 宮里 邦雄

1 日本労働弁護団は、94年4月に「労働契約法制立法提言」(第1次案)、95年6月に「労働契約法制立法提言」(緊急5大項目)、02年5月に「解雇等労働契約終了に関する立法提言」を、それぞれ発表し、民事法としての労働契約法制定の必要性とそのあるべき内容について提言を重ねてきた。
 2003年の労基法改正の際になされた「労働条件の変更、出向、転籍など労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること」との衆参両院の厚生労働委員会付帯決議に基づき、厚生労働省が設置した「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が04年4月に発足し、以降20回の研究会を重ね、去る4月13日「中間取りまとめ」を発表した。(パブリックコメント募集期間5/20~6/20)
 日本労働弁護団では、「在り方」研究会の発足をうけ、労働契約をめぐるその後の判例動向やいっそう増大する労働契約をめぐる紛争の実情をふまえ前記提言の見直し作業を進めてきたが、今回提言をまとめた。
 われわれの提言は、93年から毎年6月と12月の2回行ってきた全国ホットラインによる労働相談活動や定期的に行っている面接相談、全国の弁護団会員の労働契約をめぐる事件への取り組みなどから今日労働契約をめぐって生じている紛争の実情とその原因を検討し、その適正かつ公正な法的解決は如何にあるべきかを、紛争予防の視点もいれつつまとめあげたものである。

2 労働契約をめぐる実情や紛争から今日明らかになっている問題状況は、使用者がその圧倒的に優位な地位に基づいて労働契約の成立、展開、終了にかかわるあらゆる場面において、実質上労働条件を一方的に決定している点に集約される。
 労働契約をめぐる問題の本質は労使の対等性の欠如にあり、そこから多くの問題が生じていることからすれば、労働条件決定を契約当事者の労使自治に委ねることは妥当ではなく、労使が対等性を欠いているという基本認識に立って労働契約法制定の必要とその立法内容を検討する必要がある。
 われわれの提言内容は、判例法理の到達点を基本としつつ、立法化にあたってはこれを要件と効果という視点から整理するとともに、判例法理で不十分と思われる点を立法的に明確化するという立場からこれを補強するものとなっている。
 また、これまでの判例法理のみでは解決しえない重要な労働契約上の問題点についても、立法化によって解決を図るという立場から新しい制度の導入も提言している。
 提言内容は、労働契約の成立、展開、終了のすべての場面において現に生じこれからさらに問題が拡大することが予想される点について、適正・妥当な判断基準の設定(裁判規範の定立)およびそのことによる労使とりわけ使用者の行為規範を設定するものとして検討されたものである。
 また、提言は「在り方」研究会が検討対象としている論点をほぼカバーしており、研究会の「中間取りまとめ」さらには今後予定されている「最終報告」への対案でもある。

3 われわれはこの提言については、小企業への適用、手続規定の実効性確保方法などなお検討を深めるべき点や不十分な点、さらには各項目間の不統一などにより調整すべき点などもあると考えているが、問題の重要性や「在り方」研究会の今後の進行予定などからすれば労働契約法の在り方について広く議論を喚起するのが妥当であると考え、この段階で公表することとした。なお、今回の提言では、従業員代表制度及び労働時間法制(労基法)については触れていないが、前者については、95年に提言したが、改めて提言をなす予定であり、後者については、今般「今後の労働時間制度に関する研究会」が発足したところであり、同研究会の動向と本年5月に当弁護団が実施した欧米調査の結果をふまえ、今後、提言をなす予定である。
 来年4月に施行される労働審判制度の適切な運行のためにも労働契約法の制定は不可欠であり、本提言がより良い労働契約法制定に向けて充分に生かされることを希望する次第である。


投稿者 管理者 : 2005年05月25日 00:25

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