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2005年05月25日

平安女学院大学守山キャンパス就学権訴訟、原告川戸佳代さん 即日 大阪高裁に控訴

平安女学院大学 守山キャンパスの存続を守ろうの会
 ∟●裁判
  ∟●「就学する権利等の確認を求める訴訟」の判決について」(2005年5月23日)

 以下は,5月23日の判決後に,大津地裁近くの滋賀弁護士会館で開かれた記者会見に際にして,原告学生の川戸佳代さんが発表した声明文である。この記者会見場には,30名を超える報道陣が駆けつけ,テレビカメラ5台(YTV、BBC、NHK、ABC、MBS)が撮影したという。

平成17年5月23日

「就学する権利等の確認を求める訴訟」の判決について

原告  川戸 佳代

 はじめに、平安女学院大学びわ湖守山キャンパス(現代文化学部)の存続を求める署名活動にご協力いただいた方々に、この場をお借りしまして心よりお礼申し上げます。およそ2万人という多くの方々からのご署名を頂きました。このうち、びわ湖守山キャンパスの所在地である守山市の方々の署名数は、市の全人口の13パーセントを超えました。現在でも署名へのご協力を申し出て下さる方がいらっしゃいます。皆様のご支援が私たちの活動の大きな支えとなってきました。ご支援本当にありがとうございました。

 本日、大津地方裁判所において「就学する権利等の確認を求める訴訟」に対する判決の言い渡しが行われました。私たち学生の学ぶ権利が認められず、非常に残念です。

 私は、この判決に納得ができません。なぜならば、私たち学生は、大学を核としたまちづくりを掲げる守山市に設置された大学に入学しました。私たち学生にとっては、全国に数多くある大学の中から大学を選ぶ際に、キャンパスがどこにあるのかという事が、重要な点となります。私たちが通っていたびわ湖守山キャンパスには、家から大学までが近く自転車やバイクで通えるからといって入学した学生だけでなく、遠くても守山という静かな環境の中で学びたいという思いを持って入学した学生もいます。私自身、守山市という環境に建つ新しい校舎が気に入って入学しました。大学案内のパンフレットには「Lake Side Campus Lake Biwaの風を感じて」というフレーズがありました。私は、このパンフレットを見てオープンキャンパスに行きました。そして、施設を案内され、新しくきれいなキャンパスにおいて少人数制クラスで学べるという説明を受けたのち、入試の申し込みを勧められたので親同席の下に申し込みをしました。

 大学が、学生や保護者に対し十分な説明もしないで一方的にキャンパス統合を行ってしまうこのような事態が起こるなかにおいて、学生は自分が入学する学校を「見る目」を今後養っていかなければならないことになるでしょう。しかしながら、このような「見る目」を養うと言っても私たちの場合、入学前に学校の経営状況に関するデータは一切公開されていませんでした。文部科学省は昨年、私立学校法を一部改正しました。その中には17年度からの財務諸表の情報公開を義務付けました。これは、私が提訴した後に改正されたものだと思います。

 昨年の7月、文部科学省の中央教育審議会は、入学志願者と入学者が同数になり志願者全員が入学できる“大学全入時代”が、以前の見込みより2年早まり2007年にやってくると試算しました。国公立大学よりも、より良い教育サービス(教育環境)を学生や社会に提供しなければ、私立大学は消えていくでしょう。近年、文部科学省は、18歳人口が減少しているにも関わらず大学設置基準を緩和しました。そのため、私立大学の中には潰れる大学が出てきても、おかしくない状況になっていると思います。日本私立学校振興・共済事業団の調べでは、私立大学の定員割れは3分の1にも及んでいるとされています。このような大学の一番の被害者は当然ながら学生だと思います。今回の判決では、授業料などを払う側の学生は救済されないことになります。

 私は在学生が卒業するまでは、入学前に学院側から示されたような、びわ湖守山キャンパスでの教育環境(学校環境)が守られるべきであると強く思います。今回の判決で示されたように学院側の経営困難が認められるとするならば、学校の経営者は、財政難を理由にすれば何をしても良い、また、そのやり方がどんなに一方的であっても良いということになってしまいます。

 大学全入時代を前に、私たちのように被害を受ける学生がこれからも続発することと思われます。私は、これ以上学生が同じ被害に遭ってほしくない、という思いでいっぱいです。びわ湖守山キャンパスは開校後、わずか5年で閉鎖されましたので、たった2度しか卒業生を送り出していません。このような経営の失敗をなぜ学生が被らなければいけないのか、私はこの裁判において学院の社会的責任が問われるべきであると考えました。今でも、その考えは変わりません。
 
 私は、学院の社会的責任を問うために控訴したいと思います。どうぞ、私たちの活動を引き続きご支援下さい。

 本日は、どうもありがとうございました。

平安女学院大移転訴訟:学校の都合でどこにでも-学生側敗訴、即日控訴

毎日新聞(5/24)

 ◇原告の川戸さん、悔し涙「もっと学生に目を向けて」

 平安女学院大の学生が、3月末で高槻キャンパス(大阪府高槻市)に移転・統合したびわ湖守山キャンパス(守山市三宅町)で引き続き学ぶことなどを求め、大学を運営する学校法人平安女学院(京都市上京区)を相手に起こした訴訟は23日、大津地裁で学生側敗訴の判決が出された。判決後に記者会見した原告の同大学4年、川戸佳代さん(21)は「このままでは、学生は学校の都合でどこにでも行かされることになる」と悔し涙をにじませながら訴えた。原告側は同日、大阪高裁に控訴した。【蒔田備憲、深尾昭寛】

 判決前には川戸さんや同大学の学生らが、20人を超える学生らの寄せ書きの入った「大好きな守山キャンパスでいつまでも学びたい!」と書かれた横断幕を掲げて大津地裁に入った。原告敗訴の判決が言い渡されると、報道陣や関係者で埋まった法廷内は、一瞬静まりかえった。

 判決後、代理人の吉原稔弁護士と共に記者会見した川戸さんは「納得できない」と語気を強めた。「守山の校舎が気に入って入学したのに……。一番苦しんでいるのは学生。大学も市も、もっと学生に目を向けてまちづくりに取り組んでほしい」と涙ながらに訴えた。また吉原弁護士は「一番に訴えた第三者契約を裁判所が退けた理由が示されていない。非常に不満で、控訴審でも追及する」と話した。

 平安女学院の山岡景一郎理事長は「予想したとおりで喜んでいる。極めて妥当な判決」とコメント。守山市の山田亘宏市長は「判決内容を確認できないので、コメントを差し控える」としている。

 平安女学院は今月17日、守山キャンパスの土地と建物を守山市に返還すると申し出ている。市は申し出を受け入れた上で、立命館大付属高に移管する市立守山女子高を同キャンパス跡地に移転させる計画を立てている。

…………………………………………………………
 ■解説
 ◇免れない大学側の道義的責任

 23日に判決があった就学権確認訴訟で、原告の学生側が最大の争点としたのが、学生と大学、守山市の3者間での「第三者契約」だった。第三者契約とは生命保険を例にすると、契約者とは別の受取人(第三者)が、保険会社に契約者の保険金を請求する権利が与えられるように、民法にも規定された契約で、第三者に通常よりも強い権利が与えられている。

 原告側の主張は▽誘致時に守山市が大学側と補助金支出などを定めた「基本協定書」を締結▽大学が学生と在学契約を結ぶことから、第三者にあたる学生に強い権利が存在▽大学側には守山キャンパスで授業を行う義務がある--という考え方で構成されていた。

 判決では、基本協定について「守山市が大学に期待したのは自治体の発展や住民利益で、学生はその手段にすぎない」と指摘。学生の就学権まで意図した契約ではないとして、学生側の請求を退けた。

 原告側は即日控訴し、法的な判断は高裁に委ねられることになった。しかし、学生や保護者に知らせる前に一方的に移転を決めた平安女学院大側の道義的責任まで免れたわけではない。

 皮肉にも今度は、平安女学院大を誘致した守山市が、市立守山女子高の立命館大付属高への移管を一方的に決定し、同様に生徒や保護者に動揺を与えている。地裁判決は事前説明については言及しなかったが、今後の高裁審理では、これらの議論が尽くされることも求められる。


[控訴記事]
「控訴し学院の責任問う」(朝日新聞5/24)
原告が大阪高裁に控訴 守山の平安女学院大訴訟問題(京都新聞5/24)

なお,今回の訴訟判決について,新聞社がいかに全国的に注目すべきものとして捉えていたかは下記の掲載記事の一覧を見てもよくわかる(共闘通信が配信した記事を加盟各社は揃って報じていた)。

学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(東奥日報5/23)
大学移転反対の訴え認めず  大津地裁、学生敗訴の判決(岩手日報5/23)
キャンパス統合で学生敗訴  大津地裁(岩手日報5/23)
大学移転反対の訴え認めず/大津地裁、学生敗訴の判決(秋田魁新報5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(河北新報5/23)
キャンパス統合めぐり判決 就学権確認で大津地裁(河北新報5/23)
大学移転反対の訴え認めず(福島民友新聞5/23)
平女びわ湖学舎就学請求訴訟 原告の訴え棄却(読売新聞5/24)
大学移転反対の訴え認められず(日刊スポーツ5/23)
大学移転反対の訴え認めず(静岡新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(信濃毎日新聞5/23)
平安女学院大キャンパス統合 守山での就学権認めず 大津地裁判決(京都新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(神戸新聞5/23)
キャンパス統合で学生敗訴 大津地裁(神戸新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(山陽新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(山陰中央新報5/23)
■大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(中国新聞5/23)
■キャンパス統合で学生敗訴/大津地裁(四国新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず/大津地裁、学生敗訴の判決(四国新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(徳島新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(大分合同新聞5/23)
大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決(熊本日日新聞5/23)
キャンパス統合めぐり判決 就学権確認で大津地裁(熊本日日新聞5/23)

投稿者 管理者 : 2005年05月25日 00:44

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