個別エントリー別

« 労働訴訟における弁護士報酬の敗訴者負担制度についての意見 日本労働弁護団 | メイン | 学長主導の運営目指す! 国立89大学 »

2003年10月17日

(資料:判例) 日本大学(定年・本訴)事件

東京地裁判決(2002年12月25日) 一部認容 一部却下[控訴]

「労働判例」No.845, 2003.6.1,33〜34頁より。
(事件の概要)
 本件は,大学教授である原告が,満70歳まで定年が延長されるとの慣例が事実たる慣習として労働契約の内容となっていると主張して,被告大学に対し,労働契約上の権利を有することの確認を求めるとともに,賃金および賞与の支払請求したものである。
 原告は,昭和○○年○月○日に出生し,法学部専任講師として雇用され,平成13年1月当時,大学院法学研究科および法学部教授の地位にあった。大学法学部教職員に適用される就業規則には,「教員は,満65歳に達した日をもって定年とする」(第26条)が,「特段の事由により必要と認めるとき」などの場合には,「理事会の議を経て,これを延長することができる」(同27条)と規定されていた。
 平成12年10月19日に開催された法学部教授会は,原告の定年を2年間延長する内申手続を採ることを議決し,大学に対しその旨を内申した。理事会は,平成13年2月2日,原告の定年延長を審議し,これを認めないとの議決をした。
 本件の仮処分決定は,本件定年延長扱いが事実たる慣習として成立していたとして理事会の議決を無効とし,1年間の貸金仮払いを認容した(仮処分 東京地裁平成2001年7月25日決定)。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本大学(定年・本訴)事件
(東京地裁 平成14年12月25日判決)
平13(ワ)17071号 地位確認等請求

主文

1 原告と被告は,原告が,被告の設置する日本大学法学部の教授である地位を有することを確認する。
2 被告は,原告に対し,○○万○○円及びこれに対する平成14年12月10日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告に対し,平成14年12月から本判決確定日まで毎月23日限り○○万○○円ずつを支払え。
4 被告は,原告に対し,平成15年1月から本判決確定日まで毎年3月15日に○○万○○円ずつ,毎年6月15日に○○万○○円ずつ,毎年12月5日に○○万○○円ずつをそれぞれ支払え。
5 原告のその余の請求に係る訴えをいずれも却下する。
6 訴訟費用は,全体を5分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
7 この判決は,第2項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(参考判例)
 大学数負の定年制については,定年後の再雇用に関する明治大学事件(東京地判平元.3.31労判539号49頁),工学院大学事件(東京地判平元.7.10労判43号40頁),愛知医科大学事件(名古屋地決平4.11.10労判627号60頁)などがある(いずれも,定年延長の効力が否定されている)。
 また,本件のように,65歳定年を教授会議決により定年延長を認めるとの運用が事実たる慣習として認めた法政大学事件(東京地決昭62.8.19労判508号73頁〔要旨〕)があるが,同事件では,定年延長に自ら手続きをとらなかったことを理由として,定年延長が否定されている。これに対し,長崎総合科学大学事件(長崎地決平5.7.28労判637号11頁)では,定年後の再採用人事につき,常務理事会が教授会の決定を尊重して,再採用を決定するとの慣行が確立されていないと判断されている。

同事件東京地裁の判決文全文は,「労働判例」No.845, 2003.6.1,34〜43頁を参照のこと。

投稿者 管理者 : 2003年10月17日 11:37

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/23