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2003年11月03日

京大教授再任拒否事件をめぐる裁判について 

AcNet Letter 22より

京都大学で「再任拒否事件」がおき、裁判が続いています。この件についての支援運動をされている阿部氏(行政法)から、裁判の状況についてのお便りがありましたので紹介します。この件については、国公私立大学通信で関連記事を掲載したことがあります:

2003.2.20
(0) http://ac-net.org/kd/03/220.html
(asahi.com 2/18)任期制採用の京大教授、再任拒否の無効求め仮処分申請へ

2003.6.2
(1) http://ac-net.org/kd/03/602.html#[4]
編集人:1997年5月16日の衆議院文教委員会(任期制法案)

(a) http://ac-net.org/kd/03/602b.html#[8]
阿部泰隆氏(神戸大学法学研究科教授)からの便り

(b) http://ac-net.org/kd/03/602b.html#[9]
阿部泰隆「大学教員任期制法への疑問と再任審査における公正な評価の不可欠性」

2003.6.5
(c) http://ac-net.org/kd/03/605.html#[6]
京都大学再生医科学研究所所長 中辻憲夫氏からのお便り

(d) http://ac-net.org/kd/03/605.html#[6-1]
編集人から中辻氏へ

(1)では、1997年5月16日の衆議院文教委員会での雨宮高等教育局長の「任期制とは、任期満了により当該任期を付されたポストに係る身分を失うことを前提とした制度」という考えを紹介しました。それに対し阿部氏は(a)で、同年5月21日の雨宮氏の陳述
「もちろん、極めて不合理な扱いがなされたという場合に、不服申し立てというようないわゆる行政部内での手続というものは無理がとは思うわけでございますけれども、非常に不合理な扱いがなされたということであれば、当然それは司法上の救済という道が閉ざされているわけではないというように考えているわけでございます。」
に注意を喚起しています。しかし、裁判の経緯を見ると「司法上の救済の道」などというものは任期制という制度については、ほとんどないような印象を受けました。
  今回の「再任不可」の経緯には、任期制が拡大する流れの中で、当事者と無関係な大学関係者にとっても看過できない不透明さがあります。阿部氏の報告にあるように、裁判でも京大が再任不可の理由を述べる必要がなかったとすれば、雨宮高等教育局長が当時説明したとおり「任期制とは、任期満了により当該任期を付されたポストに係る身分を失うことを前提とした制度」であると司法も判断していることになります。「再任不可」という選択肢は任期制本来の機能であって、雇用者側にその理由を提示する必要はないと司法が考えていることが今回の裁判で明確になったように思います。

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阿部泰隆氏(神戸大学)からの便り紹介 2003.11.9
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「・・・京都大学再生医科学研究所教授井上一知先生が、昨年一二月再任拒否され、この五月一日、五年の任期切れで、失職扱いされて、裁判で争っています。

 再任審査において、高名な学者七名の外部評価委員が、「国際的に平均」であり、今後の活躍に期待するとして、全員、再任に賛成したのに、教授会では、無記名投票の結果、再任賛成者が過半数になりませんでした。新規採用と同じつもりでしょうが、外部評価に「基づく」というルールを無視していると思います。この外部評価の過程では、前所長が、「国際的に平均」を単に「平均」に書き換えさせようとしたことなど、権力の濫用が明らかになっています。
 そこで、再任拒否の理由を説明せよと、われわれは主張しています。法人化法の成立前に、前記の研究所の中辻現所長が、小生の意見は、一方的として、法廷で説明すると言っていたのに、法廷では、任期切れと言うだけで、外部評価では高く評価されているのに、なぜ再任拒否をしたのか、説明しません。大学人としてあるべき態度でしょうか。
 そこで、京都地裁と大阪高裁で執行停止(仮の救済)の申請をしましたが、裁判所は、任期切れで失職したのだから、争う道がないという態度です。今、京都地裁で、本案訴訟である、取消訴訟を行っています。先の執行停止を却下(門前払い)した同じ八木良一裁判長・判事が担当していて、次回一二月上旬には門前払いするという方向に見えます。
 まず最初の争点は、任期満了による失職なのか、再任拒否という違法な行政処分により任期満了に追い込んだのか、あるいはもともと任期をつけることができない場合に1号任期制にしたものであるとか、公募時には任期制とは書いていなかったのに、あとから任期 への同意を求めたという点での違法=瑕疵などを理由に、任期が適法についていなかったから、瑕疵があるという、法律論です。後者の説を採用されないと、この任期切れがいかに無茶苦茶であろうと、審理されません。ということで、権力濫用の実態が裁判で明らかになりません。
 このままで行けば、任期制法を悪用して、気に入らない同僚を追い出すことが可能です。これでは、同僚との平和外交以外には、何もしない教授が増えます。学問の活性化を目指す任期制法が逆に学問を殺すことになります。戦前文部省が大学人事に介入した滝川事件がありましたが、その七〇周年に当たる本年、京大が教授の学問の自由を抹殺するとはなんという歴史の皮肉でしょう。
 そして、京大内部でなぜこの問題を告発する動きが見えないのでしょうか。 
 井上教授は自分の問題もさることながら、今後の日本社会に悪例を残さないように頑張っています。 なんとかご支援いただければ幸いです。」

投稿者 管理者 : 2003年11月03日 18:16

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