個別エントリー別

« 国立大法人化目前、「国立大ビジネス市場」に銀行が過熱 | メイン | 3月28日講演とシンポジウム「任期制・年俸制導入と評価制度は大学と教育をどう変えるか 」、「開催趣旨」 »

2004年03月26日

「規制改革・民間開放推進3か年計画」のうち雇用・労働分野について

「規制改革・民間開放推進3か年計画」(雇用・労働)

「規制改革・民間開放推進3か年計画」閣議決定における教育分野については,すでに取りあげたが,今度は労働分野における3か年規制緩和計画を紹介しコメントする。
 規制緩和によって労働者に深刻な影響が発生すると考えられるものは以下である。
1.職業紹介規制の抜本的緩和
 

このうち,求職者からの手数料規制の緩和が問題である。これまで,職業安定法は職業斡旋の際,仕事を求める労働者に対して手数料徴収することを原則禁止してきた。今回の計画ではこの求職者からの手数料徴収禁止を「現行1200万円超から700万円程度へ引き下げるとともに,対象職種も拡大する」という。これが実現されれば,職業紹介の無料原則は半ば崩壊する。職業紹介はまさに営利事業と化す。

2.労働者派遣法の更なる規制緩和
 
労働者派遣業は,法成立時,現存する三者間労働関係のうち,雇用関係と使用関係が明確に分離した労働関係のみを取り上げ,職業安定法で禁止する「労働者供給」と区別して合法化した。いわば,実質的に労働者供給を合法化したとも言える。したがって,これは労働者保護の観点からみて多大な影響を労働者に与えるとして,実施する場合も厳しい規制下にあった。しかし,この労働者派遣は,その後今日に至るまで数年おきに規制緩和が実施され,ほぼこれ以上緩和できないところまで達した。そして,今回の「3か年計画」では,さらに「事前面接の解禁」と「派遣業と紹介業の兼業」認可の恒久化を図るという。この派遣規制緩和は,今後,例えば学生の就職にも多大な影響を及ぼすだろう。雇用の安定と労働者保護の観点から極めて問題である。

3.裁量労働制の拡大
 
将来的に,裁量労働制の適用対象業務を職場の労使自治に委ねる方向での制度見直しを図ることが指摘されている。また,裁量性の高い業務については,労働基準法適用除外方式の採用を検討するとしている。
 ところで,「大学教員の業務」については専門業務型裁量労働制の対象となったが,今後はこれを「周知徹底する」という。
 現行における大学教員の裁量労働制適用については,私はしっかりとた労使関係が確立している大学では,ある意味組合側の武器にもなり得ると考えている。もともと大学教員は法形式的な側面は別にして,日常的には労働基準法の労働時間規定で適用除外の扱いを実質的にされてきたからである。労使協定によって,大学教員の通常業務の範囲を確定し,それに一定のみなし労働時間を適用した場合,これまで存在しなかった「残業」概念が発生する可能性もある。これから大学教員は研究や教育のみならず学生の面倒や学内業務の負担がますます高まっていく状態のなかで,こうした裁量労働制の有効利用も考えられるかもしれない。
 しかし,今後の3か年計画では,大学教員も含めて,裁量性の高い業務については,文字通り「労働時間規定の適用除外」を検討するというから,とんでもない計画である。

4.解雇法制について
 
今年の労働基準法の改定施行により解雇権濫用法理が明文化されたが,その際,法案段階で文言として取り除くことを余儀なくされた「金銭賠償方式」が,またしつこくも導入がもくろまれている。

5.退職について,長期勤続者を過度に優遇する現行制度の見直し
6.職安の指導・監督を自治体機関に移管
7.産業別最低賃金制度の在り方の検討
 
これは,要するに産別最賃を廃止するということである。この点,従来からも主張されてきたが,廃止を実現したい側は最後まで諦めない。

投稿者 管理者 : 2004年03月26日 00:03

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/651