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2004年04月06日

福岡教育大教員有志、提言「法人化後の福岡教育大学の運営について」(3/30)

「福岡教育大学発 国立大学法人化関連情報第1号」が教員有志の方から送られてきましたので掲載致します。

2004年3月30日

提  言「法人化後の福岡教育大学の運営について」

福岡教育大学教員有志 


 福岡教育大学は法人化準備にあたって過去1年間余り混迷をきわめてきました。その原因はひとえに、松尾学長が適正に学内合意を形成する努力を怠り、学内規程や慣行を無視した独断的な運営をしたことにあると言わざるをえません。

 昨年5月学長は、意見聴取の段階で異論の多かった中期目標・計画案を教授会に提案しましたが合意を得られず、修正案が可決されました。しかしその後もその決定の具体化を図るどころか、9月には、5月決定に重大な変更を施した中期目標・中期計画(素案)の学長案を教授会に提案しました。これが否決されて浮上した学長の退任要求に対しては、副学長に責任を転嫁して2名とも解任し、自らは続投を表明しました。

 本年1月8日松尾学長は、法人化後の本学の運営組織を皮切りにその後の法人化準備に関わる重要事項をいっさい教授会に諮らないことを突如一方的に宣言しました。学長にとってこれが過去二回の失敗から学んだ教訓であり、法人化後の運営姿勢を示すものであると言うことができます。運営組織について諮らないことに対して教員の間から抗議の声があがり、正規の手続きを踏んで二度にわたる教授会の開催要求が出されましたが、学長はこれを無視し続けました。あげくは構成員の過半数による「教授会の長としての信を問う」新たな教授会開催要求も拒否しました。

 この間学長は、法人化後の16年度人件費予算が不足するという事務当局の説明を鵜呑みにし、予算委員会にも諮らず非常勤講師の半減を企図する「学長裁定」なるものを下しました。非常勤講師の人権を無視したこの措置は、教員の猛反発と新聞報道を受けて直ちに撤回されたものの、学長はなおも不足の根拠は明らかにしないまま、研究費削減による補填の可能性を示唆しました。このことは、大学の根幹である教育と研究に対する学長の考え方を如実に示すものです。

 「学長の指導力と予算使用の自由度が増す」という法人化の意味を曲解し、自らの想定する法人化後の体制を先取りして専決的な運営を続ける松尾学長に対して不信感を募らせた教員の有志が、辞任を求める声明を発表するに至りました。4割に及ぶ教員が賛同しましたが、学長はこの声も黙殺し、教授会のみならずついには組織・業務について検討するワーキング・グループや、執行部の大半のメンバーまでも蚊帳の外に置き、密室での法人化準備を進めてきました。

 そしてもはや審議の時間も残されていない3月26日に至ってようやく、教授会規程だけが提案されましたが、反対多数で否決され廃案となりました。学則をはじめとするその他の重要規程は審議にすらかけられませんでした。その結果本学は教授会規程を定めないまま、また多くの重要事項について構成員の十分な理解と了解のないまま法人化を迎えるという、いっそう異常な状況に陥ったのです。

 同じ日、予算問題について全学説明会が開催されましたが、そこで実は16年度人件費予算は、当初言われていた4400万円の不足どころか、逆に2000万円もの余裕があることが明らかにされました。このことは学長裁定の不当性を改めて実証するもので、教職員の多くは驚き呆れるとともに、執行部に対する不信をいっそう募らせましたが、松尾学長や辻事務局長に謝罪の姿勢は微塵もみられませんでした。

 以上、1年間に及ぶ大学運営を振り返れば、松尾学長が現在の教授会の長としてふさわしくないことは明らかです。また、法人化5日前の教授会で教授会規程案が大差で否決されたことは、学長への痛烈な不信任表明に他なりません。深い不信感を抱いた大学構成員と社会の監視の目は、きわめて厳しいものです。松尾学長が時間切れに救われた形で法人化後の学長に就任するとしても、指導力の意味を取り違え、学内の合意形成を怠るこれまでのような運営を続けるなら、その体制は構成員の批判を浴びて早晩崩壊するでしょう。
私たち教員有志は、福岡教育大学が今後、真の意味での全学的協働態勢を築いて、中期目標・中期計画の達成に向かって歩むために、いまここに以下の三つの提言をする次第です。


提言1:法人の執行部は、本学の中期目標・中期計画前文の精神を遵守すること。

[説明]9月の教授会において決定され社会に公表された中期目標・中期計画の前文において、本学の基本目標は「学校教育や生涯学習社会を担う資質能力をもった教育者養成を目指す『教育の総合的研究教育機関』である」と規定されています。中期6年間にあっては、本学の憲章ともいえるこの前文の精神を守り、目標・計画の実現に努めるべきです。

提言2:法人の執行部は、重要な事項を審議する教授会を、運営組織の中に適切に位置付けること。

[説明]中期目標・中期計画は「自主的・自律的な教育研究の発展のために、トップマネジメントとボトムアップの調和がとれた、機動的かつ民主的な大学運営体制の確立を図る」ことを目標として掲げています。また、その目標を達成するための措置として、「学長がリーダーシップを発揮しつつ、大学構成員の意見をくみ上げ、本学の基本的理念に沿った経営戦略の策定を行う」こと、及び「重要事項を審議する教授会の役割をふまえた意思決定システムと運営体制を整備・充実する」ことを挙げています。3月26日提案の教授会規程は、これらに背く内容であったために否決されました。先の予算問題で明らかになったように、教員人事と教育研究予算に関しては、法人化後の教授会に決定権はないものの、教育研究に携わる教員を構成員とする教授会のチェックと了解なしには適切な運用はありえません。3月26日に否決された理由を十分にくみ取り、中期目標・中期計画に即した教授会規程を早急に策定すべきです。

提言3:法人の執行部は、本学の諸規程と運営組織について、法人発足直後からその充実・改善のために柔軟な検討を開始すること。

[説明]これまで述べてきたように、学則をはじめとする本学の諸規程は正規の審議決定手続きを踏んでいません。法人化後の大学運営組織についても全学の合意を経ていません。いずれもさまざまな問題点を含みながら法人化に踏み切らざるをえない状況です。だからこそ全学の英知を結集して、中期目標・中期計画の達成に向かうためには、走りながら適宜不備を点検・改善する柔軟性が求められます。特に、教員と事務職員は、お互いの役割と特性を生かして、良好な協働態勢を築かなければならなりません。そのためには教授会で教員の意見がくみ上げられるのと同じく、事務職員の職務遂行に際しても、トップマネジメントとボトムアップの調和が必要です。職場全体に民主的な空気が保障されてはじめて、全職員の協働態勢が実現するのです。


以下,届けられたメールの内容も掲載しておきます。

転送・転載を大いに歓迎します。
HEADLINE
【1】 情報発信局開設のことば
【2】 学長への提言「法人化後の福岡教育大学の運営について」(3月30日)

【1】 情報発信局開設のことば

 私たちは、福岡教育大学教員有志です。

 去る4月1日、全国に89ある国立の大学・短期大学が法人化されました。国立大学の法人化は、十分な国民的論議を経ることなく、また、法人移行に必要な準備期間も絶対的に不足したまま、見切り発車的に行われました。このような状況のなかで、多くの国立大学は、大学としての理念やあるべき姿について熟考する間もなく法人移行作業に忙殺されるあまり、およそ学問の府にふさわしくない「知的空白」の状態に陥り、様々な歪みを抱えています。これは、日本の学問や高等教育にとっては、極めて不幸な事態です。

 しかしながら、世論は、法人化にともなう国立大学の危機的状況については、ほとんど関心がないようです。国立大学法人化のニュースそれ自体、マスコミでの扱いは概して小さく、せいぜい、「法人化は49年の新制国立大学の発足以来の改革。文部科学省による護送船団方式での大学運営から脱し、大学同士の競争を促して教育や研究の活性化を図る狙いだ」(朝日新聞4月2日付朝刊)といった紋切り型のコメント付きで報道されるにとどまっています。
 
 むろん、これまで国立大学で働いてきた私たち大学人の姿勢にも、問題がなかったわけではありません。大学医学部を舞台にした民放ドラマ「白い巨塔」が高視聴率をマークしたことは、記憶に新しいところです。私たち大学人は、ともすれば「象牙の塔」のなかに安住し、自らの学問や研究室という「たこつぼ」のなかに引きこもり、その中だけで通用する規範や論理に基づいて行動し、社会や市民とは没交渉の姿勢をとり続けてきた嫌いがあります。そのため、これまで大学が抱えてきた様々な問題について、大学人が社会に対して積極的に問題提起をしたり、大学人以外の市民と意見交換することは、これまでほとんどなかったといってよいでしょう。今回の国立大学法人化の問題についても同様です。確かに、大学人からは、「国立大学の法人化により、学問の自由が侵害される」といったアピールが社会に対してなされたこともあります。大学人の一般的な感覚としては、「学問の自由」の重要性は、自明のことです。しかし、「学問の自由」を主張することがどれだけ市民感覚に訴え、市民の共感を得られたのか、はなはだ疑問です。市民のなかには、「国立大学の教官という特権階級の人間たちが自らの既得権益を守ることに汲々としているのではないか」といった批判的な見方もあったようです。

 国立大学で働く大学人は、これまで無意識のうちに「官」としての意識に絡め取られてきたところがありますが、国立大学法人化により身分が非公務員化されたことをむしろ好機として、もっと市民としての感覚を大切にしていくべきであると思います。国立大学法人化問題についても、市民感覚に訴えかけるようなメッセージを社会や市民に発信していくことが必要です。例えば、国立大学の今後の授業料のあり方は、市民にとって重大な関心事であるはずです。法人化により国立大学の経済基盤が不安定化すれば、授業料値上げへの圧力が否応なく高まります。従来、国立大学の比較的低廉な授業料により高等教育を受ける機会を保障されてきた人たちにとっては、授業料の値上げは、そうした保障を奪われることを意味します。そうなれば、教育をめぐる社会格差が拡大・固定化し、ひていは日本の教育環境全体の悪化にもつながりかねません。

 福岡教育大学は、専任教員数200余名、学部1学年の学生定員600余名の小規模な大学です。予算規模も、いわゆる基幹的な諸大学と比較すると、15分の1〜40分の1です。国立大学法人化の荒波のなかで、福岡教育大学は、小舟のように大きく揺れています。それだけに、福岡教育大学は、法人化の問題点が極めて尖鋭的に現れてくる最前線の現場であるといえます。そのような現場にあっても、私たち教員は、それぞれの専攻する学問分野において研究に取り組むと同時に、学生の教育に力を注いでいます。その気概は、基幹大学に勝るとも劣りません。とりわけ、教育実践を通じて学生ひとりひとりの成長を目の当たりにすることは、私たち教員にとって無上の喜びです。このように大学教育の現場で働く私たち教員からみると、国立大学法人化に対する文科省や大手マスコミの姿勢には、強い違和感を感じます。私たち福岡教育大学教員有志は、法人化問題の最前線で日々学生と向き合う立場から、国立大学のよりより発展を願い、このたび「福岡教育大学発 国立大学法人化関連情報」と銘打って情報発信局を開設しました。大学教育の現場にいる教員の立場や感覚、視点に根ざして、国公私立大学に働く教員や事務職員のみなさんはもとより、なによりも広く市民のみなさんに対して、法人化に関連する福岡教育大学の情報を発信していきたいと思います。

 福岡教育大学の置かれた状況については、一地方国立大学の「コップの中のさざなみ」にすぎないとの見方をされる方もおられるかもしれません。しかし、法人化後もなお「横並び意識」が抜けないであろう国立大学のなかにあって、福岡教育大学が法人化の好ましからざる先例として他大学に悪影響を与え、ひいては日本の高等教育に対してマイナスの波及効果を及ぼすことを懸念しています。このような思いから、福岡教育大学発の情報を発信していきます。

 なお、情報発信局を開設する以上は、情報発信人やその連絡先に関する情報を公開するのが本来のあり方ですが、今回は、公開を見合わせていただきます。法人化に伴い制定された福岡教育大学就業規則では、大学の名誉を傷つける行為が禁止され、懲戒処分の対象となっています。また、教員に対する懲戒処分については、教育公務員特例法のもとでは教授会の議を経て行うこととされていましたが、今回制定された就業規則では、そうした手続が省略されています。こうした就業規則の運用次第では、教員が大学の利益を図る目的から大学執行部に不利となる情報を公開したり、執行部を公然と批判する行為についても、恣意的に規制の網がかけられる危険さえあります。このように表現や言論に対する規制を危惧しなければならないこと自体、大学においては極めて異常なことです。大学において自由にものが言えなくなれば、もはや大学の名に値しません。情報発信人やその連絡先に関する情報については、就業規則やその運用を視野に入れて必要な防御策を講じた後にしかるべき方法で公開させていただきますので、ご理解を賜りますよう、よろしくお願いします。また、情報の配信を不要とされる方は、お手数ですがその旨ご返信ください。

【2】学長への提言「法人化後の福岡教育大学の運営について」(3月30日)

 松尾祐作学長は、本年1月8日に突如として法人移行後の大学運営組織案を教授会に諮らないことを宣言して以来、大学構成員への十分な説明もないまま、法人移行準備の大半を専決的に進めてきました。これに対して、学内規程に則り教員側から過半数の署名による全学教授会開催要求がありましたが、松尾学長が不当にもこれを無視し続けたため、2月20日に教員有志から学長辞職を求める声明が出されました。その後も、学長の姿勢は、一向に変わりませんでした。松尾学長は、4月1日になり国立大学が法人化されれば本学の体制の全てが「リセット」されると発言してはばからず、法人化後は恣意的にリーダーシップを発揮することが出来ると曲解しているようです。このような学長の姿勢をめぐり、マスコミの取材に応じた文部科学省も、「法人化の趣旨は学長が何でもできるということではない。学内のコンセンサスを得る努力は常に求められる」とコメントし、当惑をあらわにしています(朝日新聞西部本社2月21日付朝刊)。

 こうした松尾学長の下で成立した法人化後の大学執行部体制には、当然のことながら正統性を認めることが出来ません。松尾学長は、学内コンセンサスをえることもなく専決的に法人移行準備を進めましたが、そのことの付けとして、4月からの大学運営体制は、多くの問題や矛盾を抱え、機能不全に陥るおそれがあります。松尾学長の発言にも関わらず、その責任問題が法人化により「リセット」されることはありません。

 しかしながら、現実問題として、4月からの大学運営に支障が出れば、教育や研究に滞りが生じます。なにより、新入生をはじめとする学生たちに迷惑がかかることは、絶対に避けなければなりません。そこで、教員有志は、3月30日、学長の責任問題を一時的に脇に置き、4月からの大学の建て直しのため、「法人化後の福岡教育大学の運営について」と題して以下のような提言を学長に宛てて行いました。

投稿者 管理者 : 2004年04月06日 00:03

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