個別エントリー別

« 国立大学、トップダウンを旨とする法人役員会の管理意識の擦り込み現象 | メイン | 「大学改革は最悪のスタートに−急務はピアレビューを可能にする研究者の守備範囲拡大−」 »

2004年05月20日

東京都立の4大学で何がおこっているのか 石原慎太郎東京都知事による"大学破壊"

京滋私大教連、機関誌No89(2004.5.15号 PDFファイル)より転載

東京都立の4大学で何がおこっているのか 石原慎太郎東京都知事による"大学破壊"

東京私大教連 山賀 徹

 東京都立の四大学(都立大学、都立科学技術大学、都立短期大学、都立保健科学大学)では、大学改革案について東京都(大学管理本部)と協議のうえで検討がすすめられてきました。詳細設計もほぼ完成する段階まで計画が具体化していた矢先、二〇〇三年八月一日、石原都知事は突如として「都立の新しい大学の構想について」を発表し、それまで都と大学が協議してすすめてきた計画を一方的に白紙撤回するという暴挙を行なったことが、現在の都立大学問題の発端です。
 この都側の「新構想」は、四大学をすべて廃止し新大学を設置(〇五年四月開校)することや全教員への任期制・年俸制の導入などそれまでの改革案とはまったく異なる内容のものです。しかも都側は、「設置者権限」があるとして、大学との協議は行わずトップダウンで改革をすすめるとの方針を打ち出しました。じっさいにその後、人員配置案を一方的に提示して「同意したうえで、詳細設計に参加し、その内容は口外しない」という同意書の提出を強要したり、大学が行なうのが当然である新学部のコンセプトづくりを河合塾に三千万円で委託したり、また全教員に対して任期制・年俸制か昇給・昇任なしの現状維持かの二者択一を迫り、さらには新大学への就任意思を確認するためとして「意思確認書」の提出を強要するなど、強権的に「改革」をおしすすめています。
 こうした都の独断専行に対して大学側は、都立大学総長や大学の最高意思決定機関である評議会も抗議声明を発表し、じっさいには文科省の設置認可手続きは廃止・新設ではなく改組・転換ですすめており、その改組・転換を現大学との協議を経ずにすすめていることを批判し、「大学との協議を行なう新たな体制を再構築すること」を求めています。また、運動は学内にとどまらず、〇三年二月には「都立の大学を考える都民の会」という市民団体が結成され、〇四年二月二八日に日比谷公会堂で行なわれた反対集会には一八○○名が駆けつけました。
 反対運動の盛り上がりに対して都側は、「改革である以上、現大学との対話、協議に基づく妥協はありえない」として、「意思確認書」を提出せず「批判を繰り返す教員は……新大学に参加すべきでない」という通知書を送りつけるという桐喝を行うなど、その専横ぶりは一層エスカレートしています。その後、文科省への設置認可申請を四月下旬に控えるなか、批判の高まりもあって協議体制をつくるという姿勢を一時的に見せ意思確認書の提出を求め、それが果たされると再び強硬姿勢に戻り「新大学への参加意思を示した人たちは……(今後)反対運動を展開することは許されない」という文書を教員に送達しています。
 これらは都立大学固有の問題ではありません。設置者権限をふりかざし、設置者が大学側の意思を無視して一方的に大学を廃止する、といったことがもしも可能となるならば、それは私大にとっても否定的影響を及ぼすことになりかねません。学問の自由、大学の自治への攻撃にたいして、都立大・短大教職組と連帯してたたかうことが重要です。


投稿者 管理者 : 2004年05月20日 00:04

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/995

コメント