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2004年05月21日

[ここに注目] 来春開学目指す「首都大学東京」 7月末認可、予断許さず

毎日新聞東京版(5/20)

 ◇教員側との溝深く
 一人ひとりの個性と才能を伸ばす「楽しい学舎」、社会が求める能力の育成「入りやすく出にくい大学」、大都市東京全体がキャンパス――。都が来春開学を目指す新大学のうたい文句だ。石原慎太郎知事の「これまで日本になかった全く新しい大学をつくる」との選挙公約に基づいて設立準備が進められている「首都大学東京」だが、改革の進め方に疑問を持つ教員との溝は埋まっていない。【奥村隆】
 ■大都市教育
 新大学は、教育の主眼を「都市の文明」に置く。現在ある都立大、科学技術大、保健科学大、都立短大を統廃合し4学部に再編するが、基本理念は「大都市における人間社会の理想像の追求」。学生には一般教養段階で「都市文化」「都市経済」「都市工学」などを学ばせる。
 大学改革の出発点に「都が大学を持つ意味があるのか」との問題意識があったことから、都は「東京でしかできない教育・研究」の特色を打ち出そうと、「都市」に着眼した。人文系の学問分野は大幅にカットし、基礎研究よりも「役に立つ」実学を重視する姿勢を鮮明にした。都立大人文学部の教員の多くは、新大学では学部に属さない「基礎教育センター」や、公開講座などを担当する「オープンユニバーシティ」に配属される見込みだ。これに対し、学内からは「東京でしかできない学問が本当にあるのか」「これまで水準の高い研究が続けられてきたことによる都立大の文化的蓄積が散逸させられる」と危惧(きぐ)する声が上がっている。
 ■スケジュール
 都は4月28日、大学設置認可の申請書を文部科学省に提出した。今後、新大学に移行する教員から「就任承諾書」を取りまとめ、同省の大学設置・学校法人審議会の審査を受ける。委員から特別の意見が出なかった場合は7月末に認可される。都は8月から新大学の説明会を開き、来年4月に第1期生を迎えて開学したい考えだ。
 しかし、申請に先立って教職員組合の代表者らが文科省の担当者と懇談し、「設立準備は大学側との協議もなく一方的に進められ、教育課程にも問題がある」として「厳正な設置審査」を要求した。河村建夫文科相あての要望書では「必要な修正・変更を都に求め、不十分な場合は不認可とすることも含め、必要な措置をとる」ことを求めた。教員側が自らの職場の不認可に言及するのは異例。文科省関係者によると「設置審の中にも、都の準備過程に問題があると認識している委員がいる」ことから、7月末認可という最短コースが実現するかどうかは予断を許さない。
 ■教員人事
 新大学は開学と同時に公立大学法人となり、理事長には高橋宏・郵船航空サービス相談役、学長には西澤潤一・岩手県立大学長が就任する予定。学部長予定者もすでに決まっている。教員人事は、これまでのように教授会が審査・選考するのでなく、経営陣主導で行われる。
 新大学は、現大学の教員を母体として構成されることを理由に、設置認可申請では個別の教員審査を省略できることになった。この手続きについて、都立大の茂木俊彦総長は「新大学の教員人事が、現大学教授会の関与なしに行われているのと矛盾しないか」と疑問を呈していたが、都の管理本部は今月13日、教員らに「旧大学と新大学は別の大学だから、旧大学の人間が新大学の人事にかかわるのはおかしい」と説明した。
 また、都立大教員らでつくる「開かれた大学改革を求める会」や学生自治会などは18日、「学部長の選出経緯が教職員に一切知らされていない」として、予定者に経緯の説明を求める公開質問状を提出した。
 都の「教学準備委員会」の外部専門委員だった川勝平太・国際日本文化研究センター教授は今年3月、毎日新聞のコラム「時代の風」で、西澤氏が「批判には堂々と反論し、筋を通す。その態度は見ていて清々(すがすが)しい」と書いた。しかし、都立大教員の一人は、「西澤氏の名前で『改革である以上、現大学との対話、協議に基づく妥協はありえない』との文書が出ており、教員の意見を聴こうとはしていない」と指摘している。

■関連資料■
「質問状」
開かれた大学改革を求める会,東京都立大学学生自治会執行委員会,東京都立大学人文科学研究科院生会,東京都立大学文系助手会有志から,「首都大学東京学部長予定者」へ (2004年5月18日 )

投稿者 管理者 : 2004年05月21日 01:49

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