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2004年05月22日

攻める大学経営(上)技術の出前で産学連携――知財部門強化、研究費稼ぐ国大法人に

日経新聞地方(5/19)より

 「大学法人」の看板で四月から再出発した国立大学。中部三県の六大学は産学連携や財務改革を急ぎ、独り立ちの模索を始めた。大学生き残り時代にどこまで攻めの経営に舵(かじ)を切れるか。走り出した大学改革の現場を訪ねた。
 「富山の薬売りと同様、技術の行商を始めました。『効く薬』もあるのでよろしくお願いします」。名古屋工業大学(名古屋市)の松井信行学長は今月十二日、愛知県豊田市内で開いた技術講演会でセールスマン役を買って出た。
 講演会では超硬セラミックスの加工技術など、同大の助教授らが先端技術の研究成果を紹介。自動車関連や機械メーカーなど約三十社の参加者がメモをとりながら興味深そうに聴き入った。
 今年から始まった「技術の出前」は同大の産学連携やベンチャー育成部門などを束ねるテクノイノベーションセンター(TIS)が主催。品田知章センター長は言う。「法人化で大学は厳しい評価の目にさらされる。実績を上げるには積極的な営業活動は不可欠。他大学には負けたくない」
 三重大学(津市)は昨年十月、四日市市に地域連携推進拠点「四日市フロント」を開設。企業との連携を強化し、共同研究や技術協力の発掘に乗り出した。今月下旬には工学部の教授らと四日市市内の企業十社が研究会を開く。事前に調査した教授ら百三十人の研究内容を示し、企業のニーズと突き合わせて共同研究が可能な案件を探る。
 四日市フロントの相可友規・地域連携コーディネーターは「産学交流が増えることで研究開発費など企業からの収入増が見込めるほか、学内の研究水準の向上も期待できる」と意気込む。
 各大学が産学連携を急ぐのは外部資金の獲得はもちろん、共同研究が画期的な発明を生めば、将来的に特許料収入などが見込めるからだ。法人化で発明の帰属が個人から大学に移り、特許料の一定割合が大学の収入になる。このため競争力の源泉となるおカネを生む知的財産部門強化の動きも活発になってきた。
 豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)は今年四月、教員有志が出資して株式会社「豊橋キャンパスイノベーション(TCI)」を設立した。特許の出願・技術移転に関する大学の費用・手続きを支援。知的財産部門に専門特化することで大学の競争力強化を狙う。
 TCIは技術情報の優先提供などの特典をアピールし、年会費五万円で企業に参加も呼び掛ける。百―百二十社程度の会員獲得を目指し「すでに数社から申し込みの相談がきている」(TCI)。
 特許出願の迅速化を図るのは名古屋大学(名古屋市)。これまで委員会形式で一カ月以上かかっていた出願の可否決定を知的財産部長権限にし、最短二週間で評価する。
 各大学で産学連携や知的財産活用のキーマンが民間出身者であることも特徴的だ。
特許のプロ招く
 名工大TISの品田センター長は前テクノ中部社長で、中部電力では常務・技術開発本部長を務めた。三重大四日市フロント・地域連携コーディネーターの相可氏は三重銀行で取締役本店営業部長などを歴任した同行OB。名古屋大の渡辺久士知的財産部長はトヨタ自動車の知的財産部から迎え入れられた特許のプロだ。
 民間の手法を取り込みながら富を生むサイクルをどう確立するか。国立大学法人の挑戦は始まったばかりだ。

投稿者 管理者 : 2004年05月22日 00:01

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