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2004年05月26日

都立大統合−現場の声をよく聞いて

朝日新聞社説(5月25)より

 東京都立大や東京都立保健科学大など都立の4校をまとめて新しい大学をつくる構想が、都の申請を受けた文部科学省から大学設置審議会に諮問された。新大学の開設は、昨年4月に再選された石原都知事の選挙公約のひとつだった。

 大学の再編や統合そのものは、国立大学でも広がっており、大きな流れといえる。問題はその進め方である。都側と各大学がよく話し合い、練り上げたとはとても思えないからだ。

 4校の中では東京都立大の規模が一番大きい。新大学づくりにあたっては、その教職員の意見を十分聞くのが当然だろう。しかし、どんな教育コースを新設するかなどを検討する部会にはだれも入らず、単位認定の仕組みを検討する部会への参加も1人だけだった。

 新大学の目玉となる都市教養学部の「都市教養コース」「国際文化コース」などにいたっては、理念づくりや授業科目を予備校の河合塾に外注した。

 こうしたやり方に抗議して、東京都立大の法学部では教員4人が辞職した。経済学部でも12人が移行を拒否した。

 申請を急いだためか、大学院は再編案が間に合わず、ほぼ今のままの形で申請された。新しい大学院の姿がはっきりしないのでは、勉学を深めようとする学生は不安になるだろう。

 教育現場の不安や不信を引きずっていては統合もうまくいくまい。大学設置審議会は、大学側の意見をじっくり聞くなど腰を据えて論議してほしい。

 国立大学が法人に移行するのと併せて、公立大学も法人化が可能になった。都立の新大学も法人化をめざしているという。ならば、都と大学側の意思疎通はその面からも大事だろう。

 東京都立大にも注文をつけたい。

 77校でつくる公立大学協会は昨年秋に「地域のかかえる今日的課題を常に念頭に置いて」研究・教育に取り組まねばならないという見解を出した。大学が競争時代に入る法人化を意識したものだが、自治体が設立しているのだから、当然といえば当然のことだ。

 しかし、その点で、東京都立大の努力は十分だったとは言い難い。都市科学研究科や都市研究所をつくったのは、ほんの10年前だ。他大学で盛んな地元高校への出張授業などもわずか。大学の研究を起業に結びつけた「大学発ベンチャー」も、まだもっていない。

 大学の原型は、中世の教会で聖職者をめざす若者がワラ束を持って集まり、回廊のあたりに腰を下ろして教師の話を聞いたことだという。「学生と教師がいれば、それが大学だった」と、歴史家の阿部謹也さんは書いている。

 研究や教育の主役は、いつの時代も教員と学生なのである。

 東京都は設置者の権限を振り回さず、現場の声に耳を傾ける。大学側も地域に何ができるか真剣に考える。そうあってこそ、よりよい大学ができる。


投稿者 管理者 : 2004年05月26日 00:06

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