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2004年06月07日

発進大学ビジネス(2)金沢大――技術売り込み、県外も、事業化準備の基金検討

日本経済新聞地方版(6/03)より

 富山市の北陸銀行本店三階に五月十二日、二十社以上の製薬会社の関係者が集まった。技術売り込みを目指す大学のセミナーに参加するためだが、開いたのは地元の富山大学や富山医科薬科大学ではない。金沢大学の技術移転機関(TLO)、金沢大学ティ・エル・オー(KUTLO)だ。
 金沢大は骨粗しょう症治療薬、腫瘍(しゅよう)抗原ペプチドなど八つの技術を企業に紹介した。平野武嗣・産学連携コーディネーターは「富山には今後も定期的に来ますのでよろしく」と締めくくった。
 大学が産学連携に力を入れるにつれて、「企業にすぐ売れる大学の技術は意外に少ない」(金沢大関係者)ことも分かってきた。民間企業の研究が大学をリードしている場合も多いが、企業が大学の取り組んでいる研究内容を十分知らないケースが目立つ。
 このためKUTLOは企業からの接触を待つだけでなく、自ら「営業」へ走る。富山市のセミナーもその一環。平野氏は「医学・薬学分野の発明を売るなら、『薬売り』の伝統を持つ富山へ行くのは当然」と話す。
 二〇〇四年度からはほぼ毎月、国内の展示会やセミナーへ参加する。六日から米サンフランシスコで始まるバイオ見本市では、DNA(デオキシリボ核酸)を動画撮影できる高速原子間力顕微鏡の資料を展示し、欧米企業へも売り込みを狙う。
 地方大学の東京事務所が集まる「キャンパス・イノベーションセンター」内にもオフィスを確保。首都圏で企業訪問の拠点として活用する。外部の組織も巻き込んだ。富山市のセミナーは、法人化に伴い金沢大の指定金融機関となった北陸銀行がおぜん立てした。KUTLOは日本政策投資銀行とも提携した。
 大学発の技術移転やベンチャー起業を増やすには、研究水準の向上と営業強化ではまだ不十分。利益を重視する企業は、成果を生む確証がない研究への投資に慎重になっている。金沢大は大学発技術がビジネスになるかどうかを見極めるための「ギャップファンド」設立の検討を始めた。
 米では複数の大学がこのファンドを設置している。例えばファンドの援助で試作品を製作した結果、論文どまりだった研究が初めて実用化が可能と分かる場合もある。五億円程度の基金から目利き役が選んだ多数の案件を少額ずつ支援し、一部が成功して数倍の「成功報酬」が得られれば、失敗分を埋め合わせて基金の規模が維持できる――という仕組みだ。運用益を狙うファンドとは一線を画する。
 KUTLOの平野氏は「ニワトリを探す企業に無精卵を見せてもダメ。ヒヨコか、せめて有精卵にすれば、買い手は欲しがるはず」と話す。
【表】金沢大学の産学連携への取り組み    
2002年7月   金沢大がTLO設立方針を決定
   10月    有限会社「金沢大学ティ・エル・オー」(KUTLO)発足
   12月    KUTLOが28番目の国による承認TLOとなる
2003年1月   KUTLOが業務開始
   7月     金沢大がTLOと連携一体型の知的財産本部を設立
2004年4月   金沢大とKUTLOが東京事務所設置


投稿者 管理者 : 2004年06月07日 00:12

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