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2004年06月16日

ある都立大教員に届いた入学辞退者の父親からメール

Academia e-Network Letter No 125 (2004.06.15 Tue)より転載

 今春、娘が貴学を受験し、幸い合格いたしましたが、入学は辞退いたしました。 この間の事情は、添付ファイルに簡単にまとめてあります。 この添付ファイルは、4月に貴学より郵送されて来た「入試に関するアンケート」の回答に同封したものです(このため、あて先が「教養部 入試課」になっています)。 娘の無念さを少しでもご理解頂ければ幸いです。

 このメールを差し上げましたのは、知事による貴学の混乱が余り知られていないのではないかと思ったためです。 娘が受験生であった昨年、娘の友人は誰も貴学の問題を知りませんでした。 大学に最も関心があるべき受験生ですら誰も知らなかったということは、一般の人ではなおさらだと思います。 貴学の問題だけではありません。 八王子の小児科病院の問題も余り話題にはなりません。 もっと一般の人に関心を持ってもらうことが大事ではないでしょうか。

 今の時代、「効率化」を求めることは必要であると思います。しかし、「教育・研究」、「小児医療」、「老人医療」等、「非効率」が認められる分野があると言うことも理解すべきだと思います(勿論、「無駄」を認めると言うことではありません)。 本来「効率化」を求めるべき行政事務等はそのままにして、学校や病院に手をつけると言うことは、弱い者いじめ以外の何ものでもありません。

 学校や病院の問題と言うのは、当事者以外は余り関心を持たないものだと思います。 それを良いことに、やりたい放題の事をやられてはたまったものではありません。 私は埼玉都民であるため、選挙で意思表示をすることはできませんが、事あるごとに話題に取り上げて、できるだけ多くの人のご理解を得たいと思っています。

 最後に、皆様方のご苦労が良い結果に結びつくことを、心よりお祈り申し上げます。

メールにて大変失礼致しました。


東京都立大学教養部入試課御中

前略

 アンケートを頂いた受験生の父です。貴学が、入試に関して細かいフォローをされていることに驚く一方、「さすがは都立大」と言う思いです。このような地道な努力の積み重ねが、貴学に対する高い評価につながっているのであろうと納得した次第です。

 さて、このたび合格通知を頂きながら入学を辞退いたしましたのは、最終的には、私の意向による処が大きかったことから、一言述べさせて頂きます。なお、貴学と新大学とが別大学であることは認識しておりますが、両大学が並存する間、具体的にどのように区分け運営されるのかが不明なため、両大学を一体の大学と捉えております。誤りがあれば、認識不足と失礼をお詫びいたします。

 娘は、大学・大学院で歴史を学び、研究したいと言う希望を持っております。まだ志望校を決めかねていた一昨年の夏に、貴学のオープンキャンパスに参加して、人文学部・史学科・**先生の模擬授業に感動し、また、学内の環境(特に小規模大学であること、先生の人数が多いこと、図書館が充実していること等)がひどく気に入ったようで、貴学を第一志望に決めました。ところが昨年8月、知事の突然の「改革案」を知って、志望校を変更すべきか迷うようになりました。「人文学部が廃止される」と言う情報があったことから、貴学において、自分が本当に納得いく勉強ができるかどうか不安になったためです。

 しかしながら、

1.2010 年までは都立大として存続する
2.新大学についての構想も未発表であり、事態も流動的である
3.志望校変更は受験科目の変更を伴う上、8月時点では既に高校での選択科目の変更もできない
4.センター試験の出願が迫っている

などから、志望校の変更はせず、事態の好転を望みつつ、貴学を受験することにしました。その後、新大学の構想が発表になり、貴学内の混乱等が報道されるなど、事態は悪い方向へ向かっていると言う印象を受けましたが、詳しい情報を得ることもできないままに時が過ぎてしまい、貴学について娘と話し合ったのは入試の後でした。
その結果、貴学に対して誠に失礼であることは重々承知の上で敢えて正直に申し上げますと

1. 卒業まで都立大生としての身分は保証されても、今の都立大の環境が保証されるわけではない
2.「改革」の問題がこじれると、最悪の場合、相当数の先生方が他大学へ転出されることが予想され、その結果、研究と教育のレベルが低下する恐れがある
3. 都立大と新大学院との連続性が不明確
4. 新大学は「学問の自由と独立」が認められない可能性があり、そのような 大学は、もはや大学たりえない
5. 新大学は大学というよりも各種専門学校に近い性質の学校である

等の結論に達しました。上記3の「新大学院」に関しては、その時の状況によって他大学の大学院へ進学することも考えられますが、れでは貴学に入学する意味がありません。大学院との一貫性が重要になります。また、「新大学」に関しての4 及び5 は、本来は直接貴学に関わることではないはずですが、東京都という同じ組織の管理下に新旧の両大学が並存する以上、少なからず影響を受けることは避けられないと判断いたしました。

 以上の理由により、貴学への入学を断念致しましたが、娘にとっても私にとっても苦渋の決断でした。せっかく第一志望の大学に合格できたにもかかわらず、入学を断念せざるを得なかった娘の気持ちを思うと非常に悔しく、残念でありますが、この混乱が入学前であったことは不幸中の幸いと自らに言い聞かせております。

 娘は他大学に進学致しましたが、なかなか気持ちの整理ができなかったようです。**先生のHP で、娘が進学した大学の史学科と合同で鎌倉を探索されたことを知って、「今の大学で都立大の先生の講義を聴講する機会ができないかな」等と言っていました。

今回の混乱で教職員・在学生の方々が大変な精神的苦痛を強いられていることは想像に難くありませんが、受験生にしても同様であったことをご理解頂きたく思います。最後になりましたが、貴学の教職員・在学生の皆様が、より良いご活躍の場を得られますよう心よりお祈り申し上げます。

草々


投稿者 管理者 : 2004年06月16日 00:19

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