個別エントリー別

« 京産大2004年度入試で採点ミス 110人を追加合格 | メイン | 山梨大大学院女性助教授、 「部下への嫌がらせ」理由に退職強要 医学部長らを損賠提訴 »

2004年06月28日

滋賀県内の大学事情 地域との連携促進がカギ[現場から記者リポート]

毎日新聞(6/26)より

 ◇自治体の積極的な誘致、成功したが…
 ◇少子化進み厳しくなる環境−−ビジョンなければ撤退も
 県内の大学が“サバイバルの時代”を迎えている。平安女学院大(守山市)が来春に県内からの撤退を決めた一方、立命館大では今年、びわこ・くさつキャンパス(草津市)に情報理工学部を新設した。少子化が進む中にもかかわらず、広い土地や豊かな環境を求める大学側と、誘致でまちの活性化を狙う自治体の思惑が一致し、10大学がひしめくまでになった県内。それぞれの生き残りをかけて、地域との連携や明確なビジョンが求められ始めている。県内の大学事情を報告する。【阿部雄介】
 「(高槻キャンパスへの)移転は決定事項です」。5月16日、平安女学院大びわ湖守山キャンパス(守山市三宅町)で行われたキャンパス統合についての保護者向け説明会。4時間余り続いた中で、「はっきりしてほしい」との声に応える形で、大学側が切り出した。
 同大学は「大学を核としたまちづくり」を目指した市が誘致し、00年4月に開学。現代文化学部内に現代福祉、国際コミュニケーションの2学科を設置した。しかし、約1000人の定員に対し、現在の学生は半数以下の約470人。今春の入学者は100人に満たなかった。大学側では、02年に開設した高槻キャンパス(大阪府高槻市)への統合案が浮上。今年4月の理事会で、学部、学科を05年4月に再編した上で、キャンパスを高槻に一本化することを正式決定し、守山からの撤退が決まった。
 決定を伝えられた市側は猛反発。山田亘宏市長は、同大学を運営する学校法人平安女学院(本部・京都市)の山岡景一郎理事長に再考を求め、協議の場を模索しているが、話し合いは進んでいないという。
 誘致にあたり市は、用地取得費用などとして25億6000万円の補助金を支出。開学前には、今年から4年間で大学側が8億円を市に提供し、担保として同キャンパスの同額分の土地の権利書を市に預託する念書を交わしていた。補助金の“投資”が無駄になり、約束もほごにされかねない事態に、市は「今後の状況によっては、大学側に補助金返還の法的措置を取ることも辞さない」と話している。
 学生や保護者からも不安や不満の声が上がり、市内在住者を中心に統合撤回を求める要望が相次いでいるという。山田市長は「体の不自由な生徒もおり、通学を考えると切実な問題」と話す。ある学生は「学生向けの説明会では、『報道のとおりです』としか言わず、説明になっていない。守山では学園祭にも地域の人がたくさん来てくれたが、高槻では期待出来ない」と訴える。
 市の幹部は「全てが一方的。信頼関係が崩れてしまっており、今後の話し合いも難しい」と弱音を吐く。一方で「やはり一番大事な学生が納得するまで、話し合いは続けたい」としている。
 一方、立命館大びわこ・くさつキャンパス(BKC)は、情報理工学部の開設により4学部体制となった。学生数は衣笠キャンパス(京都市)を上回る1万8000人近くに達した。
 「BKC開設は決して生き残り策ではない」。BKC事務局の三木逸郎副局長は断言する。理工学部の拡大移転として94年に開設されたBKCは、今年で10年目を迎えるが、「ここにいることが当たり前になってきた」と話す。誘致を受けた当時から、草津市と密接な関係を持ち、常に地域連携を意識してきたという。「多くの大学がある京都なら、行政にとっても何十分の一の存在だが、草津となら1対1の関係が作れた」と話す。

    ◆
 県内では、新設された私立大を中心に、地元自治体や県が用地取得費などとして数十億円単位で補助金を支出している。しかし、03年開学の長浜バイオ大を誘致し、18億7000万円を補助した長浜市では「地域連携は今後の課題」。滋賀大など3大学を抱える彦根市でも「一貫した連携は進んでいない」という課題を抱えている。
 一方、龍谷大などに約40億円を補助し、県内最多の4大学を抱える大津市では今年3月、成安造形大(同市仰木の里東4)とまちづくりに関する協力協定を結び、今後も他大学と同様の協定を模索していきたいとしている。ある自治体関係者は「大学にとって魅力あるまちづくりを行わないと平安女学院のように逃げられる可能性は否定出来ない」と危機感を募らせる。
 県は大学側の要望などをもとに昨年3月、「環びわ湖大学連携推進会議」を設立。市民講座の開講やホームページの立ち上げなどを目指し、大学同士や地域との連携を始めた。県企画調整課は「京都市のように大学が集中してしておらず、滋賀独自の連携のあり方を模索する必要があるのでは」としている。
 全国有数の大学立地県となった環境を生かせるかどうかは、大学の努力はもちろんだが、行政や市民の意識の高まりが必要となっているのではないだろうか。

 ◇環びわ湖大学連携推進会議
 大学同士をはじめ、企業や行政、地域とのネットワーク形成を目指し、県内の13大学・短大と県で構成された組織。昨年12月には同会議が共催して県内の学生による「びわ湖学生Festival2003」が開催された。

投稿者 管理者 : 2004年06月28日 00:29

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/1305

コメント