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2004年07月04日

首都大、就任承諾書「確保」し文科省に提出した旨伝える新聞報道−ポーカス博士の分析と批判

都立大の危機--やさしいFAQ より転載

T-10 2004年7月3日の毎日新聞に就任承諾書を「4大学に在籍する対象者510人のうち、485人が提出」したとなっていましたが,ちょっと変じゃないですか?

ポーカス博士

そうだ,よく気がついたな。大学管理本部の恣意的な数字の出し方が,これまでどれだけゆがめられたものだったかを思い出せば,疑い深くなるのは当然じゃ。7月3日に朝日新聞や産経新聞でも,ほぼ同様の記事が掲載されている。いつもながら,マスコミを巧みに利用した情報操作だと感じる。まずは,毎日新聞の記事を見ておこう。
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 「首都大学東京」の設立準備問題で、都は2日、新大学教員への「就任承諾書」を文部科学省の大学設置室に提出した。都大学管理本部によると、現在の都立4大学に在籍する対象者510人のうち、485人が提出に応じた。この結果、4月末に認可申請した通りの学部・コースを開設するための教員数が確保されたという。
 一方、都立大学人文学部教授会は「現時点での就任承諾書提出の可否は、重大事項が未確定な段階での暫定的判断であり、今後明確にされる身分・雇用に関する条件次第で異なる最終的判断を行う権利を留保する」とする見解をとりまとめ、場合によっては就任を拒否する構えをみせている。
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 まず,この記事の内容が間違ったものではないことを,記者さんの名誉にかけてことわっておこう。「4大学に在籍する対象者510人」というところに,裏がある。まずは,4大学教員の数を確認してみると, 教職員組合弁護団の2003年の報告時点では,都立大が420人,科学技術大学が56人,保健科学大学が66人,都立短大が59人で, 合計601人となる。そして,この601名を,「首大」では何がなんでも 教員数を合計530人に減らそうとしている(69人減)。そうすると「4大学に在籍する対象者510人」というのは, すでに4大学に在籍する対象者が人員削減の目標数より下回っている ではないか。

 ここに挙げた数字で計算すると,510-485=25となり,就任承諾書を提出しなかった教員数があたかも25人(たったの5%)のように感じる。朝日新聞は,「95%提出」として実際に報道している。しかし,本当は,都立大人文学部だけで22人提出していないのだから,それ以外からは,たった3人しか非提出者はいなかったことになるが,そうではない。人文以外でも,経済,法学,理学から就任承諾書非提出者がでていると聞いている。

 この数字の差は,(1) 今年度すでに流出することが決まっている教員を除いてあること,さらに(2) 「あんなにひどい大学には行けない」と辞職する決断を下した教員も入っていないのだ。組合弁護団の数字は,2003年度に使われたので,おそらくその前年度,すなわち8・1事件前の数字だ。 601-510=91,つまり4大学教員合計は, 2年前の数字と比べると91人減,だ。2年間で,およそ100人の教員が都立4大学から出ていったことになる。定年退職した教員ももちろんこの数には入っているが,それにしても驚くべき数字だ。これからも,まだ就任拒否をする場面が出てくることは,さっきT-9でも言ったばかりだが, 強引な任期制・年俸制の導入,教授会からの人事権剥奪は,この先も教員流出を止めることができない事態を引き起こすだろう。 この2つのポイントは,教員公募を徹底的に魅力のないものにしているのは明らかで,「ごく僅かな応募」と「あまり学会でも評判のよくない」教員を引きつけるのが関の山だろう。先日も,「えっ,あの人が首大に決まったの?」という驚きの声を耳にした。まあ,管理本部は,教員の研究や教育の本当の能力なんて興味がないから,人がとにかく集まって「新大学」が知事の公約通り発足すればいいのだろう。ひどい話だ。


投稿者 管理者 : 2004年07月04日 16:24

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