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2004年07月16日

広島大教職員組合、労基署への駆け込み−それは法人化のゆがみをただす有力な方法である

Academia e-Network Letter No 138 (2004.07.16 Fri)より転載

労基署への駆け込み−それは法人化のゆがみをただす有力な方法である

2004年7月14日 
広島大学教職員組合執行委員長 佐藤清隆

1.労基署における対応

既報のように、広島大学教職員組合は7月13日に、法人化後の国立大学法人広島大学・東広島事業場で行われている労使協定違反、および不払い労働を根絶するために、広島労働基準監督署(労基署)に立ち入り調査を求める告発を行いました.報道各社が文科省に確認したところによれば、そのような告発は初めてであります。

労基署(労働基準監督官など4名)は、組合代表者および、不払い労働分の支払いを求める当事者から、約1時間のヒアリングを行い、職場の労働実態の調査と、必要であれば改善指導を行うことを約束しました.また、出勤・退勤時間の記録がない場合には、自己申告だけでは時間外労働の不払い請求は難しいとの示唆がありました。

従いまして、正確な出勤・退勤時間の管理は極めて重要となり、その方向での改善指導が行われるかどうかを監視する必要があります。なお早速、16日に立ち入り調査が行われるということです。

2.マスコミの関心

労基署のヒアリング後の記者会見には、朝日・毎日・読売・産経・中国・山陽の各新聞社、共同通信社、在広島のテレビ局が出席し、約1時間のブリーフィングが行われました.記者からの質問が相次ぎましたが、そのポイントは法人化後の業務増加の実態、実質の時間外労働の実態と残業代支給の実績の間の齟齬、法人化前との比較などに集中しました.満場を驚かせたのは、「ある女性事務職員の4月の実残業時間が190時間・支払い分は24時間、同じ職場の男性職員はそれ以上の残業」、「ある女性非常勤職員の4月の残業が36時間・支払い分が10時間」という事実でした。そして、当日の夕方には、NHK、広島テレビ、テレビ新広島、中国放送のローカルニュースにおいて、私たちが労基署に入る様子や記者会見の映像とともに、組合の主張の大部分が正確に報道されました.また新聞報道は、当方の確認したものでは、朝日・毎日・読売・産経・中国で行われました.新聞では不払い労働の請求のみに限った朝日新聞を除いて、ほぼ当
方の主張が記述されました.

3.教訓とこれからの対策

以上の経験を通して、私たちは3つの印象を持っています.

第1は、労基署への駆け込みは労働者によって支持されるということです。本学で起きているとてつもない時間外労働と不払い労働は、おそらくほとんどの国立大学法人で横行しているものと思います.それを教職員組合が黙視せずに労基署に訴えることについて、本学のほとんどの職員には抵抗がなく、むしろ歓迎されていることです.もちろん駆け込みにあたっては、十分な調査と公表できる具体的な事実と証人を整える必要があることはいうまでもありません.

第2は社会的な関心や驚きが、私たちの予想を超えることでした.これは、新聞・テレビ報道の多さに現れています.それは記者会見の雰囲気にも明瞭に見て取れましたが、とりもなおさず、「私どもの告発した事態が国立大学法人で恒常化されていることは、社会的に見て許されるべきでない」と断じているのです.

第3は、運営費交付金が圧倒的に不足している中で、それを減額させず、できれば増額させるには、労基法違反の労働実態の告発が必要ではないかということです.国立大学を非公務員型の法人形態に無理矢理引き込んでおいて、労基法に違反して労働者を働かせざるを得ないような財政保証しかしない政府の施策は、社会に対して説明ができません.従いまして全国のすべての国立大学法人の組合等において、法人当局に対して労基法に則った勤務を保証させる運動を起こすことができれば、国立大学法人の脆弱な財政基盤を社会に対して告発することができると思います.


投稿者 管理者 : 2004年07月16日 01:13

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