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2004年07月30日

札幌市立大の5年任期制、まさに全教員もれなく適用する任期制です!(続報)

 7月29日付本サイト記事「札幌市立大、人事・給与制度 全教員5年の任期制」について,横浜市立大の永岑先生がHPで下記のようなコメントを掲載されておられます。任期制の法律とその運用の趣旨に照らしてもっともな主張です。
 私は,「札幌市立大学ホームページ」にある情報と新聞情報しか持ち合わせていなかったため,本日「札幌市企画調整局大学設置準備室」に電話をかけ,「当該任期制が文字通り教員全員に適用する任期制なのか,あるいは特定の教員のみに適用する任期制なのか」を担当職員に聞きました。その結果,当該任期制は,昨日のサイト記事見出しに書いたように,文字通り「全教員」であることがわかりました。
 札幌市立大は,札幌市立高専と札幌市立高等看護学院の教員が母体になり,さらに新規に外部から教員を採用して設立されます。設置準備委員会で決定した当該任期制は,高専・高看から移動する教員も,また新規採用の教員も「分け隔てることなく」全員が5年の任期制に適用されるということです。そして,「大学の教員等の任期に関する法律」との関係で言えば,当該任期制は,同法第4条の「一 先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性にかんがみ、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」に適用させて運用するとのことでした。
 北海道内では,すでに北見工業大学も全教員任期制を決めていますが,法律との関係で言えば,同様の取り扱いであろうと思われます。同法第4条1が全教員適用の任期制を認めるものであるか否かは,永岑先生が述べるように,大いに問題があるところです。その意味で,下記の永岑先生の指摘は非常に重要な指摘であると同時に,この点,これまでも懸念されてきた問題であろうと思います。ただし,設置準備委員会内部でも,また高専・高看の教員サイドのところでも問題点を指摘されてこなかったことが,こうした解釈と結果を許すことにつながっているものと推測されます(ホームページ管理人)。

大学改革日誌(永岑三千輝教授)−最新日誌(2004年7月29日)

 「全国国公私立大学の事件情報」(本日付)によれば、高等専門学校と高等看護学校から新たに新設される札幌市立大学において、「5年の任期制」が導入されるという。新設だということ、高専・高看から大学への格上げだという二つの基本的な制度上の違いから、行政当局主導の「5年任期制」が打ち出されたようである。

 しかし、すくなくとも、「全員」という文句は、市当局が発表している「基本的枠組」の文書にはない。

 全階層(すなわち、助手から教授にいたるまで)において、任期制が導入されるということ、そしてどの場合も5年だということは明確になっている。それが、教員全員に適用されるものであるかどうかは、明文的な規定とはなっていないように思われるがどうであろうか。

 商学部教授会などが任期制導入に反対した決議において明確にしたように、大学教員への任期制導入を「任期法」にもとづいて行おうとする場合、立法の趣旨からして、問答無用のはじめからの全員ではありえない。任期法の前文とそれにもとづく限定的な条項に従い、合法的に任期が付されるのはいくつかの特例的な条件に基づくものである。そうした条件が、札幌市の「基本的枠組」には提示されていない。法のどの条項なのかが明らかでない。法のどの条項で、どのようなポストに適用されるのかは明らかになっていないと思われる。検討抜き問答無用の全員任期、というのは任期法の想定外であろう。法の審議段階における文部省高官の答弁も、一つ一つのポストについて任期を付することが妥当かどうか検討し、その結果として任期を導入することが可能となる場合もありうるという抽象的一般的な可能性だけをのべていたが、法文の限定からすれば、そうした検討を踏まえても全員というのはあまりにも極端で、詭弁に近いものであることはいうまでもない。

 商学部教授会などが任期制導入に反対した決議において明確にしたように、大学教員への任期制導入を「任期法」にもとづいて行おうとする場合、立法の趣旨からして、問答無用のはじめからの全員ではありえない。任期法の前文とそれにもとづく限定的な条項に従い、合法的に任期が付されるのはいくつかの特例的な条件に基づくものである。そうした条件が、札幌市の「基本的枠組」には提示されていない。法のどの条項なのかが明らかでない。法のどの条項で、どのようなポストに適用されるのかは明らかになっていないと思われる。検討抜き問答無用の全員任期、というのは任期法の想定外であろう。法の審議段階における文部省高官の答弁も、一つ一つのポストについて任期を付することが妥当かどうか検討し、その結果として任期を導入することが可能となる場合もありうるという抽象的一般的な可能性だけをのべていたが、法文の限定からすれば、そうした検討を踏まえても全員というのはあまりにも極端で、詭弁に近いものであることはいうまでもない。

 本学に関しては、市当局(大学改革推進本部)は、そうした「任期法」の立法の趣旨などから、「全員任期制」の違法論や反対が強いため(「中間案」説明会の意味合いに関する教員組合見解(04-06-21):「教育・研究評価検討プロジェクト部会(中間案)」に対する教員組合委員長の見解04-06-18)、また大学の研究教育の中核的部分の安定的確保というもっともな理由から、さらには国立大学やアメリカの大学などに関する制度調査も踏まえて(と思われるが)、先ごろの「中間案」においてテニュア制度(定年までの終身在職権)を明確に打ち出した。この点は、当然のこととはいえ、中間案に携わった人びとの英断であり、その柔軟性には敬意を表している。

 しかし、中間案作成者たちは、他方で、任期制の導入という「あり方懇」、「大学像」の文言を完全に捨て去ることはできず、そこで10月末の「大学像」のときには制定されていなかった労働基準法改正(今年一月)条項に基づいて何とか「全員」に適用しようとしているのである。これが果たして適用可能なのかに関しては、これまた大問題であるが、ともあれ、以上のような経過から考えても、「任期法」と任期制の「全員」への杓子定規な適用とは、合致しないものであろう。

投稿者 管理者 : 2004年07月30日 02:09

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