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2004年08月03日

大学教員の任期制、「短い年限で実績を過大に評価するのは問題が大きい」

持論時論<斉藤秀幸(地方公務員)=36歳・名取市>/国公立大の独法化

河北新報(2004/07/29)

目先の業績評価に疑問

 4月に全国の国立大学が、独立行政法人に移行しました。公立大学も、多くが数年以内に移行するようです。この独立行政法人化(以下、独法化)の是非については、さまざまな考え方があるでしょう。しかし個人的には、問題の大きい制度ではないかと考えます。
 確かに、独法化によって研究費が増える分野はあると思います。逆に研究費が削られ、存続が難しくなってくる分野も出てくるでしょう。多くの識者が指摘しているように、学問全体の健全な発展を図るためには、独法化はあまりにも拙速だったのではないか、と思います。
 独法化に伴って、教員任期制が導入されます。これにも、大きな問題があります。5年から10年程度ごとに教員の研究業績を評価して、その教員を再任するかどうか判断しようというもので、一見すると非常に理にかなった制度のように見えます。ただ研究活動は、言うならば未知の分野への挑戦ですから、ハプニングや行き詰まりもあると思います。新発見や新たな理論を構築したとしても、学会などで認められるまでには、多くの困難が伴うことも予想されます。
 このような困難の克服に、5年から10年掛かってしまう、ということもあり得ます。その困難の性格や程度は、研究テーマによって、さまざまだからです。研究活動のこのような側面を軽視して、短い年限での実績を過大に評価するのは、問題が大きいと考えます。
 教員任期制がもたらす弊害として、教員の中には困難が少なく、業績の上がりやすい研究テーマに変更する者も出てくるのではないか、ということが考えられます。これは長期的に見ると、日本の大学のポテンシャル低下につながると思います。
 次に考えられるのは、大学の教員もいわば生身の人間、不運にして家族の介護の問題や自らの健康問題などで、数年間は研究業績が十分に上がらない場合もあり得るということです。しかし、こうした問題が解決した後で、優れた研究業績を上げた人も少なくないと思います。
 優れた研究業績とは一体どのようなものであるのか、あるいは優れた大学の教員像とはいかなるものであるのか、ということは大変難しいテーマです。
 ガリレオやメンデルが評価されたのは死後です。ノーベル賞を受賞した田中耕一氏の研究成果が、予想外のミスから生まれたものであることを考えると、教員任期制には、いささか弾力性のなさを感じます。研究費の合理的な配分や教員の待遇の格差については、独法化や教員任期制にまで踏み込まなくても、十分可能ではないかと考えます。(投稿)


投稿者 管理者 : 2004年08月03日 00:45

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