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2004年08月18日

国立大学長選挙、揺れる大学の自治

第1部2007年ショック走る(3)揺れる国立大学長選(大学激動)

日本経済新聞(2004/08/05)

学内論理か学外の声か
 「大学の将来像をどう考えるのか?」。鹿屋体育大(鹿児島県)では六月半ば、「学長選考会議」の委員十三人が、四人の次期学長候補に質問を浴びせた。
 国立大として初めて、学内外を問わず誰でも立候補できる「学長公募制」を採用した。
 学外から名乗りを上げたのは、同校とは無縁の企業人二人だ。現職の学長、教授を加えた計四人が書類審査を通過。この日の面接で、学長候補を包装資材メーカー元社長と、芝山秀太郎学長の二人に絞り込んだ。
 二人を学内選挙にかけた結果、芝山学長の再選が決まったが、同学長は「これからの大学トップは行政・経営手腕が必要。企業経営者二人が立候補した意味は大きい」と公募制の意義を強調する。
■  ■
 民間のような経営手法ができるよう、国立大学法人法は学長に強力な権限を与えた。学長選びは、経営協議会の学外委員と学内代表者で構成する「学長選考会議」が担当する。学内人気を気にせず、存分に指導力を発揮してもらうためだ。
 だが、学長は学内選挙で選ぶのが従来の大学の常識。大学自治や学問の自由の問題が絡むだけに、選考会議主導の学長選びは学内の異論が多い。各校は学内選挙を残したが、今度は選挙の結果と選考会議のどちらを優先するかという問題が生じた。
 お茶の水女子大は、選挙で選んだ三人を選考会議が一人に絞る方式だが、選挙の得票順位は公表しない。「選考会議を縛らない工夫」(本田和子学長)というわけだ。
 学内事情を優先しがちな大学側に、企業出身の選考委員からは注文が相次ぐ。
 「学内投票は必要なのか」。北海道大では学外委員の発言が波紋を呼んだ。「今後は選挙なしで選考会議が選ぶ時代が来るかもしれない」と中村睦男学長は複雑だ。
 元日本郵船会長の根本二郎氏は、議長を務める東京海洋大の学長選考会で、委員の顔ぶれを見ていぶかった。「企業で後継者育成は社長の最大の仕事。次の学長を決める会議に学長がいないのはおかしい」。急きょ学長が会議に加わったが、大学と産業界の発想の違いがはっきりした。
 日本経済新聞社のアンケートでも学外委員の評価は揺れる。七九・六%が「学内選挙は必要」と回答しながら、「選考会議は選挙結果に従うべきだ」というのは三五・八%にすぎない。
 外部の意見を反映させようと鳴り物入りで誕生した「経営協議会」も事情は同じ。学外の声をどう扱うかは、大学によって温度差がある。
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 例えば香川大の木村好次学長は「実務的な問題も含め、大学経営について熱い議論を交わしてほしい」と言い切る。
 これに対し京都大の尾池和夫学長は「学外委員の意見は重視するが、実務的事項を話し合っても仕方がない。大学の将来像について大所高所から意見を頂く。協議会は年に二回程度開けば十分」とのスタンスだ。
 「大学運営は企業経営と違う面があることも理解してほしい」(田原博人・宇都宮大学長)との思いが、多くの学長にあるのも間違いない。
 学内の論理か、学外の知恵か――。法人化は国立大の行動原理を鋭く問い始めた。「学内だけの発想ではだめ。学外者の意見を生かせるかどうかが大学の発展を左右する」。河村建夫文科相は国立大に迫る。答えを出すのは大学自身だ。


投稿者 管理者 : 2004年08月18日 00:33

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