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2004年09月01日

沖縄米軍ヘリ墜落事故に「言いたい」

毎日新聞(8/30)より部分抜粋

作家・伊佐千尋氏

 ◇政府の対応は復帰前と変わらない。基地の75%を沖縄に押し付け、知らん顔の国民は無責任というほかない
 私が「沖縄の怒り」(文春文庫)に書いたコザ事件は70年12月に起きた。米軍の毒ガスの即時撤去を要求した県民の抗議大会の参加者が夜に入って、コザ市(現沖縄市)のメーンストリートで米軍の車75台を焼いてしまったのだ。事件の背景には、その年5月に起きた女子高校生刺傷事件があった。女子高生に乱暴して騒がれ腹部などをメッタ刺しした米兵を米軍当局は逮捕したが、地元警察には氏名も年齢も明かさずに釈放。「懲役3年、2等兵に降等、すべての恩典剥奪(はくだつ)のうえ不名誉除隊」となったが、高等弁務官布令によって琉球(りゅうきゅう)政府には捜査権も裁判権もなかった。コザ事件について、当時の佐藤栄作(さとうえいさく)首相は「沖縄住民の気持ちは分かるが、戦後25年にして国政参加も達成し、あと一息で返還という大事な時期だから、相手に悪い印象を与えても困る」と語った。
 これらはすべて、72年の沖縄の本土復帰前に起きたことだ。しかし、今回のヘリ墜落事故での米軍や日本政府の対応を見ていると、復帰前と基本的には何も変わっていない。弁務官布令と日米地位協定はほぼ同じで、協定17条5項(c)は、日本が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員らの被疑者の拘禁は公訴までの間は合衆国が行うと定め、刑事事件で日本側が起訴するまで被疑者の身柄引き渡しをしないという根拠になっている。米国が地位協定改正の要求に応じないのは、日本の起訴前の捜査手続きや被疑者の扱いについて人権面で問題があるからだが、それならば日本の起訴前刑事手続きを国際レベルに上げれば、米国もむげに拒否できなくなる。ところが今回の事件についても、小泉首相には協定改正に前向きな姿勢は見られず、ある外交族国会議員は「北朝鮮や尖閣(せんかく)列島の問題があるから米軍の支援は不可欠。ヘリ墜落事故のプライオリティー(優先順位)は低い」と発言した。その対米従属姿勢は理解に苦しむ。
 米軍基地に犯罪と事故はつきものだ。問題の根源はそもそも基地の存在にあり、地位協定の一方的かつ不合理な規定にあるが、さらに問題なのは日本政府の弱腰だ。米軍基地の75%を沖縄に押し付けておいて、国民も知らん顔しているのは無責任というほかはない。沖縄の基地を大幅に縮小するのが急務だが、米国はすぐに代替地を求めてくるし、本土移転に地元が反対となれば、残された道は日米関係の見直ししかない。日米安保を必要と考える人々も、公益性を理由にいつまでも基地を沖縄へ押しつけておくわけにはいかない。悲惨な沖縄戦の体験から、県民は戦争にかかわりあることは理屈抜きに一切反対なのだ。

投稿者 管理者 : 2004年09月01日 01:02

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