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2004年09月03日

横浜市立大学教員組合、「普通にやっていれば再任される」任期制なんてあるのか?

横浜市立大学教員組合週報/組合ウィークリー(2004.9.2)
大学改革日誌(永岑三千輝教授)−最新日誌(2004年9月2日(2))より

「普通にやっていれば再任される」任期制なんてあるのか?

■任期付き教員に陥れるためのマヤカシ
 本学事務局は、本年6月の「教育・研究評価プロジェクト(中間案)----新たな教員人事制度の構築に向けた取り組み」で、全員任期制を強硬に実施しようとするプランをわれわれに一方的に提示しました。しかし、教員個々人は、任期制に同意しなければ決して任期付教員にさせられません。
 したがって、教員一人ひとりに対して任期制の同意を取り付けることは困難です。そこで、学部(医学部)、学科(看護学科)、コース(金沢八景キャンパスの場合)ごと、あるいは旧学部(理学部など)ごとに、所属教員に一括して同意書を集めようとする可能性があります。実際にそのような方法がとられようとした大学がいくつかあります。
 その際の決まり文句は、「普通にやっていれば再任されます」というものですが、法的にそれが保障されている訳では全くありません。任期制とは、例えば任期5年の場合、法的には「5年間は雇います。その後はそのときまた考えましょう」というものです。再任するか否かを決めるのは、労働者(=教員)ではなく使用者(=最終的には理事長)です。任期の終了時、使用者は何も理由を示すことなしに、自由に労働者を解雇することができるのです。「再任を妨げるものではない」という規定があるとしても、「原則として再任する」という意味では決してありません。「5年という任期をわざわざつけたけれども、場合によってはまた何年か続けて働いてもらうこともありうる」というものです。教員が任期中にノーベル賞をとった場合でも、再任しなくても法的には何ら問題は生じない[1]ということになってしまうのです。要するに、「普通にやっていれば再任されるのだから、あなたも同意して下さい」などと言われても、それはまやかしです。そんなことを言う人に対しては、「万が一再任されなかった場合は、私が他大学に再就職するまでの期間、私の市大での年間給与(ボーナスを含む)を12で割った額を、あなたから私に対して毎月支払います」といった内容の文書を作り、署名、捺印するよう要求しましょう。

■ポストがなくなれば再任されない
 すでに任期制をとっている大学はないわけではありません。ただし、それは新設ポストや新規採用の際に任期制であることを明示した上で公募等を行って新しく雇用した場合です。そのような大学では、やはり「普通にやっていれば再任される」という説明がなされているケースがあります。しかし、それらの大学の再任に関する規程等を見ると、再任について検討する委員会の委員は誰かとか、どのような手続で審査するかについて定めているだけで、一体どのような水準の研究・教育を行えば再任されるのかについて規定を置いているケースは例外中の例外です。しかもその水準も抽象的であいまいなものが珍しくありません。
 そもそも、優れた教育・研究をしていても、中期計画などで、その分野やコースあるいは担当科目が大学として不要だということにされてしまうと、再任されない可能性が大いにあります。むしろこちらの方が重大問題です。

■任期制は大学の運営もダメにする
 任期制には他にも重大な問題を引き起こします。本学のように教授会自治が剥奪されつつある大学の場合、任期制は教員の人事評価(考課)制度と結合することによって、きわめて恐ろしいシステムになります。再任を検討する委員会(新人事委員会?)のメンバーになる管理職やコース長[2]などが教員の生殺与奪の権を握る絶大な権力者になるからです。したがって任期制は、雇用の面だけの問題ではありません。大学の管理のあり方を根本的からゆがめるものです。また、教員間の人間関係も悪くするものです。このように、任期制が導入されれば、ますますとんでもない大学になってしまいます。
 3学部の統合等により、大学の教育・研究のいわばハード面がこわされてしまいました。「教育・研究評価プロジェクト(中間案)----新たな教員人事制度の構築に向けた取り組み」の示す改革案は、教育・研究を担う教員の活動、教員間の関係というソフト面を破壊するものです。教員のためだけでなく、卒業生や在学生、将来の入学生や市民のために、これ以上横浜市立大学がひどくされないようにしなければなりません。だまされてはいけません。


投稿者 管理者 : 2004年09月03日 00:28

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