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2004年10月01日

「都立の大学を考える都民の会」ニュース8号(全文)

「意見広告の会」ニュース196より転載

1***都立の大学を考える都民の会ニュース***
**入会など返信はganbare_toritudai@yahoo.co.jpまでお願いします。***
都立の大学を考える都民の会ニュース8号(2004年9月23日)

−−目次−−
1.首都大学東京の設置認可について
2.都民の会11月14日集会のご案内と呼びかけ
3.最近の動向と主な資料(前回ニュース以降)
4.「都民の会」リーフレットの配布お願い(再掲)
5.関係論文・書籍紹介


■1■ 首都大学東京の設置認可について

 9月21日、国の大学設置・学校法人審議会は、都立の4大学を統合し、来年4月の開設をめざす「首都大学東京」の設置を認めるよう文部科学大臣あてに答申しました。これにより、「首都大学東京」が9月末に認可される見通しとなりました。
答申に当たって、審議会が付けた留意事項は以下の5点です。なお、このほかに公表されていない「その他意見」が3点ある模様です。
1.既設大学の教育研究資源を有効に活用し、統合の趣旨・目的等が活かされるよう、設置者及び各大学間の連携を十分図りつつ、開学に向け、設置計画(教員組織、教育課程の整備等)を確実かつ円滑に進めること。
2.名称に「都市」を冠する「都市教養学部」の教育理念を一層明確にし、これにふさわしい特色を持つ体系的な教育課程の編成に一層の配慮をすること。特に分野横断型の「都市政策コース」や「都市教養プログラム」等、要となる科目群の教育内容について独自性が十分発揮されるよう、その充実を図ること。
3.関係組織間の適切な連携の下、単位バンクシステムや学位設計委員会等の新たな試みが円滑かつ有効に機能するよう努めること。
4.学生の選択の幅を拡大するコース制等を導入するに当たっては、大学設置基準第19条に掲げる教育課程の体系的な編成に十分留意すること。また、学生が科目等の選択を円滑に行えるよう、きめ細やかな履修指導体制の一層の充実を図ること。
5.平成18年度開設に向けて構想されている新たな大学院については、新大学の趣旨・目的等にふさわしいものとなるよう十分に配慮した上で、その構想を可及的速やかに検討し、示すこと。

■2■ 都民の会総会ならびに11月14日集会のご案内と呼びかけ

 私たち「都立の大学を考える都民の会」も、昨年11月1日の結成以来、早いもので一年が経とうとしています。皆さん、本当にお世話になりました。つきまして、この間諸状況の様子をみるために、当初予定の3月から延期しておりました総会を、この1年の節目を期に、来る11月14日(日)に開催することにしました。 また、同日、総会にあわせて、「このままでいいのか?都立の大学」というテーマの集会も開催します。この集会では、12月都議会での新大学定款論議を前に、「本当にこんな大学の設置を認めていいのか?」という点での一致を求めて、学内の各諸団体から発言を求め、あわせて、学外の都内・都政の各領域で起こっている諸問題についても短い報告をいただきながら、学内の取り組みを学外から応援していくことを考えています。それに加えて、この間学内諸団体・個人間で、意見表明や取り組みについて若干の「不協和」や「齟齬」が生まれているかにみえる状況に対して、都民の立場から改めて、「立場や意見は異にしていても都立の大学の良質な蓄積を守り、また学生・院生の権利を守るという点で一致を」との声を届ける会にもしたいと考えています。
 みなさん、どうぞふるってご参加ください。

総会+「このままでいいのか? 都立の大学」集会
日時
11月14日(日)
 午後1:00〜4:00 集会
 午後5:00〜6:30 総会
場所
三省堂ホール(東京都新宿区西新宿4-15-3 三省堂新宿ビル内)
(新宿駅西口から徒歩15分。都営地下鉄大江戸線都庁前駅から徒歩5分)
(新宿駅から見て、都庁を過ぎて新宿中央公園を通り抜けた向こう側です。)
*追って、チラシも準備します。まとまった部数をご入り用の方は、事務所までファックスもしくは、会あてにEメイルにてご連絡ください。

■3■ 最近の動向と主な資料(前回ニュース以降)

 9月初旬の世話人会で、会の賛同団体でもある教職員組合の方々から、この間の動向について少しまとまった報告をいただきました。すでにそれ以降で、設置認可の答申などの新たな状況も生まれていますが、今号の「最近の動向」は、その際の報告記録をもとに編集しました。
(なお設置認可に関する教職員組合の見解については以下のリンクを参照ください)
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0924.htm

1)7月以降の動向について
 7月13日に文部科学省から「新大学」の早期認可見送りとの内示があった。その直後に大学管理本部幹部の人事異動があった(山口一久本部長、大村参事などが異動)こともあり、「早期認可見送り」という事態への対応に混乱が生まれた。その中で、本来何の関係もない、昨年の賃金確定闘争での組合役員への処分軽減を理由にした、研究費の懲罰的「執行停止」などの問題も起きた。
 文部科学省から提示された認可見送りの正式な理由は、4月提出書類と7月時点での教員配置計画とのズレが大きく、審査の前提が崩れている(から審査はしない)ということ。既に学部での教員配置が25名不足していたとの情報は公になっているが、「不備」はそれだけではない。公表されていないが、大学院担当教員でも数十名、非常勤講師では百数十名の「ズレ」があったようだ。そこで文科省としては7月提出書類(実態)に即して4月提出書類を書き直せ、という指導になった。
 教職員組合の観測では、「経済財政諮問会議」や経済産業省、総務省などからの「規制緩和」圧力のもとで、文科省、設置審は、理念や制度上の問題点を十分認識はしていたが、「書類上の不備」として処理したのではないか。
 8月26日、27日には「大学説明会」が開催された。26日は南大沢で開催され参加者は1500名、27日は日野でも行われ参加者は1200名だった。合計で2700名で多く見えるが、例年のオープンキャンパスには都立大学だけで大体5000名の参加者があるので、事実上例年の半分の参加者ということになる。「新大学」の都市教養学部の文系の説明には前田法学部長が立った。「人文、法のコースでやることは基本的にはいままでと変わらない」「経済はより実践的なことが学べる」というような説明をしていた。「経済学」が学べなくなってしまったことについてはほおかむり。全国36万人が受験したベネッセの模擬試験では、「新大学」の経営学コースを志望とした人は全体の中でたった2人しかいなかったという。これも受験生からの「新大学」への評価だろう。
 研究費の半分近くをカットした上での、「傾斜配分」の先行的試行の問題では、結局ほぼ申請通りの執行が認められることとなったので、結果としては当初想定されていたよりは「実害」は少なくなった。しかし、これを「試行」させてしまったことは重大な問題。来年度以降、より露骨な研究誘導や懲罰的予算配分が行われるのではないかと懸念している。

 2)9月以降の状況・見通しについて
 「新大学」を運営することになる「公立大学法人」の定款の問題が、9月以降一つの焦点になる。現在これを総合的に批判する文書を準備しているところ。都議会に提案されるのは12月になるだろう。
 現時点の案では「新大学」の法人役員はほとんど新宿にいることになる。だから実際にそれぞれの大学のキャンパスで見かけることはほとんどない、という状況になると思う。
 設置認可については、9月13日からの週に内示があるだろうと言われている。ただ9月に認可が下りなかった場合、理工系の大学院入試は大きな打撃を受ける。ただ、教員のほうで「首都大学東京」の大学院への進学を薦めても、学生のほうが「いや、行きたくありません」と答える例も出てきている。

 3)学内状況について
 今年の春くらいから4大学の教員の中で、「新大学」への対応をめぐって「違い」がはっきりしてきた。転機となったのは2、3月の「意思確認書」をめぐる攻防。ここで都立大執行部や人文学部では、新大学で人文学部を専攻としていかにして存続させるか、また、オープンユニバーシティ所属も含めて全教員をいかにして大学院所属にするか、を中心課題として追求した。管理本部の側もこの時期「強硬姿勢」を強めるとともに、一方で「人文の要求を飲むよ」という形で様々な揺さぶりをかけてきた。部分的譲歩を得た一方で、大学全体の運動が分かりにくくなり、現状評価を巡る教員たちの認識の「一種のずれ」が生まれてきた。紆余曲折があったが、経済COEグループの新大学からの「排除」や、法学部での相次ぐ「非就任」の意思表明などが一つの流れとなり、現在それらの教員が中心となって「首大非就任者の会」として活動を活発化させている。あるいは、現状を管理本部に対する大学側の一方的な妥協ととらえて批判する声もある。
 実際は7月には認可されなかった。認可が下りなかったこと自体は大学内外の批判、運動の反映ではあるが、一方で、そのために学内の教員の意識のずれ状況がそのまま続いていくことになってしまった。
 現時点で「新大学」への対応をめぐって、教員は大きく3つくらいのグループに分かれている。
 ひとつは先ほど触れた「首大非就任者の会」で、よい「首大」などあり得ないとする立場。「新大学をよりましなものにする」というスタンス自身を批判している。
 次に「開かれた大学改革を求める会」の有志グループ。ここは新大学開設の「1年延期」を明確な方針として掲げている。
 これらのグループは数としては少数ではあるが、その主張は共感する教員は多いと思う。また、次の「四大学教員声明の会」とも重なっているメンバーが多い。
 これまで一番多くの教員をカバーしてきた「四大学教員声明の会」は、基本スタンスとしては「新大学」をよりよいものにしていこうというもの。その中で一つの選択肢として「開設の1年延期」もあり得るとしている。ただ先に見た状況の中で、四大学教員声明の会は具体的な行動が取りにくくなっている。特にこの会を中心的に支えてきた理工系の教員の中で、「嫌だな」「納得できない」と思いつつも、様々な理由で入試も含めた新大学発足のための準備を進めて行かざるを得ないということがその背景としてある。
 大多数の教員は、この「四大学教員声明の会」の立場に近いと言えるだろう。大事なことは、主張の違いはあっても、相互に非難や中傷がなされるわけではなく、少なくとも現時点では、互いに協力、協同しようという姿勢を誰もが持っていることだと思う。
 このような状況の中で教授会は非常に機能しづらい状態になっている。新大学の準備作業は実務段階に入っているので教授会の議論をパスして行われる状況になっている。現大学に関わること以外の、新大学に関して何かスタンスや立場・意見を明確にしなければならないような議題は扱いにくい状況である。

■4■ 「都民の会」リーフレットの配布ご協力お願い(再掲)

 前号でもお知らせしました「都民の会」による都立の大学改革に関するリーフレットは、まだいくらか残部があります。皆さんの周囲でおおいに配布拡大してください。カラー刷りで大変綺麗な出来です。ご一報いただければ早急に手配しますので、下記の要領でご連絡下さい。

◇配布拡大方法:
 都民の会事務所・事務局あて、FAXかE-mailにて、「送付あて先」と「送付枚数」をお知らせ下さい。1週間程度でお送りします。後日、送料分程度のカンパを振り込んでいただけると幸いです。(毎週木曜日が事務作業日ですので、その直前に連絡いただけると速やかにご送付できます)

■5■ 関係論文・書籍紹介
・ 大串 隆吉(東京都立大学人文学部教授)「法人と大学との一体化は、学校教育法の否定ではないのか?」(東京都立大学・短期大学教職員組合『大学に新しい風を』第3号)
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/newwave3.doc

・ 人見 剛(東京都立大学法学部教授・図書館長)「地方独立行政法人法と公立大学法人化──東京都の大学「改革」を中心に──」(『労働法律旬報』1582号4〜10頁)
http://www.kubidai.com/modules/xfsection/article.php?articleid=14

・ 人見 剛「東京都による大学「改革」の法的問題点」(『法律時報』76巻3号74頁〜79頁)
http://www.kubidai.com/modules/xfsection/article.php?articleid=13

<以下、再掲>
 東京都立大学・短期大学教職員組合・新首都圏ネットワーク編『都立大学はどうなる』(発行・花伝社 定価: 税込840円)のご案内 都民の会賛同者限定のお得な購入方法 → 発行元の「花伝社」に電話・FAX・Eメイルにて購入希望をご連絡下さい。その際、「都民の会賛同者」である旨明示されれば、送料無料で発送されます。代金は、書籍に同封されている振替用紙でお支払い下さい。請求は、振込手数料分があらかじめ差し引かれた額となっています。これは教職員組合の取り計らいによる「都民の会」賛同者限定割引です。
花伝社連絡先 → TEL 03-3263-3813 FAX 03-3239-8272
E-mail kadensha@muf.biglobe.ne.jp
以上

「都立の大学を考える都民の会」
ganbare_toritudai@yahoo.co.jp
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Lounge/3113/index.html

投稿者 管理者 : 2004年10月01日 00:41

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