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2004年10月04日

不当労働行為(不当解雇)に対する経営者責任を追及する上で画期的な判決

 下記のニュースは,不当解雇に対する経営者責任を追及する上である意味画期的な判決だと思います。これは間接的な形ではありますが,「就労請求権」にも関わる問題です。

渡島信金・会員代表訴訟控訴審 理事2人に3000万円賠償命令

東京読売新聞(2004/09/30)

◆復職させず支払った賃金は損害

 不当解雇が無効とされた労組幹部を復職させずに賃金を支払っていたのは不当として、信用金庫の出資会員が代表理事二人に対し賃金総額約3000万円を信金へ賠償するよう求めた会員代表訴訟の控訴審判決が二十九日、札幌高裁であり、末永進裁判長は「賃金相当分の損害が生じていると解される」としてほぼ請求通り約3000万円の支払いを命じた。労働法の専門家は「不当労働行為に対する経営者責任を追及する上で画期的な判決。株主代表訴訟にも影響を与えるのではないか」と評価している。

 訴えていたのは北海道森町の渡島信金の出資会員四人で、伊藤新吉理事長、相馬正明常務理事に信金への賠償を求めていた。

 判決によると、伊藤理事長らは一九九八年、同信金労組副委員長の加藤隆さん(61)=今年九月に定年退職=を就業規則違反などを理由として懲戒解雇した。救済申し立てを受けた北海道地方労働委員会(道地労委)は翌九九年、不当労働行為を認定し、現職復帰や賃金相当額の支払いを命じ、これを不服とした同信金の訴訟も函館地裁で棄却され、二〇〇二年、最高裁で確定した。

 この間、同信金は加藤さんに月給や賞与など総額約3000万円を仮払いする一方、職場復帰させなかったため、出資会員四人が賃金相当の損害を信金が被ったとして同年四月、代表訴訟を起こした。

 一審・函館地裁は昨年九月、「賃金相当額がそのまま同信金の損害であるとは言えない」として、同信金が支払った遅延損害金相当の約7万4000円のみの支払いを命じ、双方が控訴していた。

 信用金庫法で定められる会員代表訴訟は、商法の株主代表訴訟の規定が準用されている。

 相馬正明・渡島信金常務理事は「予想していなかった判決で不服だ。上告することになると思う」としている。

 株主オンブズマン代表を務める森岡孝二・関西大経済学部教授(企業社会論)の話「不当労働問題の責任を経営者に負わせるもので、株主代表訴訟の領域を広げる注目すべき判決だ。今後、同種の訴訟が起こされるのではないか」

 前田達男・金沢大法学部長(労働法)の話「労組活動を巡る不当解雇は、労組幹部を職場から遠ざけて弱体化するのが主目的。今回の判決は間接的だが、不当解雇を実質的に救済する方法として大きな前進であり、画期的」

渡島信金代表訴訟 元労組役員への賃金支払いは違法 理事に損賠命令−札幌高裁(毎日新聞9/30)
 ……
 日本大の牧野富夫教授(労使関係論)は「労組の組合員も出資者になれば同種の訴訟を起こせる。賃金だけ支払って仕事を与えないリストラに対抗できる新たな方法を示した画期的な判決だ」と述べた。 (毎日新聞北海道朝刊9/30)

渡島信金、「不就労給与は損害」 札幌高裁、理事長らに賠償命令

北海道新聞(9/30)

 渡島信金(渡島管内森町)が不当解雇した元労組副委員長を職場復帰させずに給与だけを払い続けて信金に損害を与えたとして、信金の出資会員四人が、伊藤新吉理事長と相馬正明常務理事を相手取り、信金に計約三千百万円を支払うよう求めた会員代表訴訟の控訴審判決が二十九日、札幌高裁であった。末永進裁判長は、原告の請求を実質的に退けた一審函館地裁判決を一部変更し、理事長らに約三千百万円の賠償を命じた。

 一審判決は信金側の不当労働行為を認定したが、給与支払いを損害と認めていなかった。末永裁判長は「賃金相当分を支払い続けた正当な事情が認められず、信金の損害にあたる」と判断した。

 判決によると、伊藤理事長らは一九九八年二月、入金ミスを理由に当時労組副委員長の加藤隆さん(61)を懲戒解雇。労組が不当労働行為の救済を申し立て、九九年に地労委が解雇取り消しを命じた。信金は命令取り消し請求訴訟を起こして最高裁まで争ったが、二○○二年に最終的に敗訴が確定。しかし、信金は不当解雇翌月から○二年四月までの約四年間、加藤さんを職場に戻さないまま給与だけを支払った。

 原告代理人の長野順一弁護士は「理事長らの賠償責任を認めた画期的な判決」と評価。被告の相馬常務は「予想外の判決で不服。上告することになると思う」とのコメントを発表した。

渡島信金訴訟で原告側逆転勝訴 「請求認められ満足」

北海道新聞(2004/09/30)

 渡島信金(本店・森町)が不当に解雇した元労組副委員長を職場復帰させないまま給与を払い続け信金に損害を与えたとして、出資会員四人が伊藤新吉理事長と相馬正明常務に損害賠償を求めた会員代表訴訟で、札幌高裁が二十九日、一審判決を破棄して理事長らに約三千百万円の賠償を命じたことで、主張を認められた原告側に喜びが広がっている。
 原告の一人である森町在住の男性(83)は「当然の判決。請求が全面的に認められ満足している」とした上で「労働者の声に耳を傾けない経営陣は辞めるべきだ」と信金の対応を厳しく批判した。
 また、不当に解雇された元労組副委員長の加藤隆さん(61)は、理事長らの逆転敗訴の報に「信金に損害を与えても不当解雇を貫こうとしたのだろう」と感想を述べた。
 一方、判決を聞いた町内の六十代の会社役員は「地元の金融機関が司法の場で争わなければならないのは森町民として残念」と複雑な表情。三十代の男性は「中小企業に融資してくれるのは信金だけ。波風を立てないでと思っている人もいるはず」と話した。

2審は信金側が逆転敗訴 就労なき賃金は「損害」(共同通信9/29)
また,同ニュースは以下の新聞でも報道された(リンクはできない)。
■渡島信金会員代表訴訟―札幌高裁、不就労給与を損害と認定(日本経済新聞北海道2004/09/30)
■復職認めぬ賃金仮払いは損害 渡島信金訴訟控訴審判決/北海道(朝日新聞2004/09/30)

投稿者 管理者 : 2004年10月04日 02:12

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