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2004年10月27日

第2部迫るバブル崩壊(3)外資・株式会社参入(大学激動)

日本経済新聞(2004/10/26)

「質の確保」せめぎ合い
 「経営不振の大学を引き受けてほしい」。今年初め、テンプル大学ジャパン(東京・南麻布)のカーク・パタソン学長に、ある地方私大の代理人から打診があった。
 二十二年前に開校した時には考えもしなかった誘い。今回は結局見送ったが、「米国大学が、救済のために日本の私大を買収する時代がいずれ来る」と同学長は確信した。
 同校の学生数は三年間で二五%も増え、計約二千百人。日本の大学に飽き足りない学生が着実に増えている。「米国の大学が、日本だけでなくアジア全体からの留学生を視野に独自の教育を行えば、経営再建できる。日産自動車や西友で起きたことと同じだ」
 “外資の息吹”を思わせる動きは、ほかにもある。
 大学設置認可を盾に、外国大学の日本校を「大学」とは認めず「各種学校」としてきた文部科学省。それが今月、国内大学との単位互換や、卒業生の国内大学院への入学資格を認めることに踏み切った。世界貿易機関(WTO)などからの市場開放要求に応え、日本校を大学に準ずる位置付けとした瞬間だった。
 だが同学長は文科省にさらなる一手を期待する。「大学か否かを国が決めるのはおかしい。学生や社会の評価に委ねるべきだ。米国で実績がある大学の日本校は、そのまま大学と認めてほしい」。願いは設置認可の抜本的な見直しだ。
■  ■
 大学市場への新規参入の動きは国内勢からも出ている。構造改革特区を利用した株式会社の大学設立。ここでも焦点は設置認可のあり方だ。
 今春、情報技術(IT)系人材を養成する初の株式会社立大学院を、東京・お茶の水に開校したデジタルハリウッド。来春の四年制大学開校を申請中だが、校舎面積や教員資格を巡り文科省、大学設置・学校法人審議会との攻防が続く。
 もともと藤本真佐社長には、「設置審委員を務める大学の先生は、ITを理解していない。審査基準も不適切」との不満が強い。例えば教員の適格性審査では、発表論文など研究業績が重視されるが、「最先端の現場を教える実務家教員は、論文など書いていない」。
 一方、設置審では委員から申請内容に疑問が噴出した。その一例が、売り物の英語教育。卒業単位の約四分の一を英語としながら、学生百九十人に対し英語の専任教員はわずか二人。「これで構想は実現できるのか」「認可したら受験生を欺くことになりかねない」。厳しい声が相次いだ。
 設置審は九月初め、教育課程や教員組織、施設・設備で多くの注文を付けた意見書を伝達、デジハリは一カ月後に回答を提出した。「国に不満はあるが、できるだけの対応はした」と藤本社長は行方を見守る。
■  ■
 双方の攻防は、突き詰めれば、大学とは何か、質をどう保証するかを巡る論争だ。
 「最近問題になるのは、申請者がこれは大学だととらえているものが、今までの定義からすれば違うこと」。設置審の相沢益男会長(東京工業大学長)は指摘する。背景には「設置認可の規制緩和は来るところまで来た。問題が起これば、文科省・設置審がなぜ認めたのだという流れになりかねない」との危機感がある。
 全入時代を前に、大学も学生も急速に多様化が進む。他方で新たな可能性を求めた参入が相次ぐ。もはや伝統的なアカデミック重視の大学観だけでは対応が難しい。
 では、時代に適した設置認可のあり方とはどんなものか――。議論は混とんとしたままだ。

投稿者 管理者 : 2004年10月27日 01:25

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