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2004年10月29日

第2部迫るバブル崩壊(4)新たな需要をつかめ―都市進出か地域密着か(大学激動)

日本経済新聞(2004/10/28)

 東京・市谷のオフィスビルの一角にある「wakhok東京サテライト」に週末、中年男性やキャリアウーマンが集まる。看板を見ただけでは分かりにくいが、日本最北端の大学、稚内北星学園大の東京校だ。
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 「最北端は最先端」をキャッチフレーズに同大は四年前、短大から四年制に転換。コンピューター言語Javaなど最新技術を学べるのが売りで、北海道から全国に通用する情報技術(IT)のプロ輩出を目指した。
 しかし定員割れが続き、今春は定員百四十人に新入生は五十六人。「稚内だけではやっていけない」。丸山不二夫学長が打ち出した起死回生策は東京進出だった。
 今度は「東京で働きながら新しいITを学ぶ」をうたい文句にした。講義は週末のみ。三年生に編入、二年間で卒業とし、社会人が通いやすくした。「二十人来てくれれば」との予想を上回り、四十一人が入学した。
 神奈川県から通う宮下真樹さん(38)は「めまぐるしく変化する最新技術は本を読んでも分からない。自己投資と考えれば年五十万円の授業料は高くない」と話す。静岡から新幹線通学する五十七歳の学生もいる。
 「就職活動は東京が有利。稚内の三、四年生も東京で学べれば」(丸山学長)。建学の地・稚内と東京の学生数はいずれ逆転するかもしれない。
 全く逆に、地元密着を強めることで生き残りを目指す大学もある。
 開設三年目の松本大(長野県)は今春、住民向けの特別聴講制度を始めた。学費は年十二万円と格安。単位や卒業資格はとれないものの、講義をいくつでも自由に受けられる。従来の聴講生と合わせ、地元から約二十人が通う。
 地元の行事にも積極的に参加する。今月あった祭りでは大学のブースを設け、中野和朗学長自らそばを打ち、学生が客のテーブルへ運んだ。
 まだ定員割れはないが学長の危機感は強い。「講義の体験やイベント交流を通じ『うちの子をぜひこの大学に』という人が増えてくれれば」。学生確保へ思惑がにじむ。
 メディア教育開発センターの調査では、人文系学部の六四%、社会科学系学部の六六%がカリキュラム編成は「学生の学力に合わせる」と回答。実態無視では生き残れないとの意識が広がる。
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 極め付きともいえる組織を金沢工業大が昨年、本部につくった。その名も「CS(顧客満足)室」。講義に満足ですか、資格取得の支援態勢は十分ですか……。学生にアンケートしてカリキュラムを改定する。
 これまでも様々な“顧客サービス”を打ち出してきた。就職活動中の学生のために観光バスを借り切り、東京や大阪へと年約七十便走らせる。
 TVアニメが題材の特別講座「ガンダム創出学」も開いた。原作者やプラモデル専門家が毎週登場。経済効果の分析や商品の開発秘話を語った。
 「球体のようなバランスの取れた大学もあるだろうが、うちはコンペイトウのような特色ある大学を目指す」。石川憲一学長に迷いはない。
 金太郎あめのような大学ばかりでは共倒れになる――中央教育審議会は先月「個性に乏しい数多くの大学が十八―二十一歳を巡って競争するのは効率性に欠ける」と指摘。各校が特色を明確にするよう提言した。
 筑波大の山本真一教授(高等教育システム論)は「職業教育、社会人再教育など大学に求められる役割は広がっている。新たな需要にうまく対応できるかどうかが、生き残りへの分かれ道だ」と大学に奮起を求める。

投稿者 管理者 : 2004年10月29日 01:05

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