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2004年11月10日

都立大・短大教職員組合、「首都大学東京」法人の「定款(たたき台)」と法人組織の骨格に対する見解

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 ∟●「首都大学東京」法人の「定款(たたき台)」と法人組織の骨格に対する見解 (「手から手へ」第2310号 2004年11月8日)

「首都大学東京」法人の「定款(たたき台)」と法人組織の骨格に対する見解

2004年11月8日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 はじめに

 新たに設立される都の公立大学法人に関し、「定款(たたき台)」が大学管理本部より示され、さらに法人組織の骨格に関する案が去る10月8日の経営準備室運営会議などにおいて提案されていた。「定款」および法人組織の骨格は、新法人のもとに設置・運営される新大学および現四大学の教育・研究と大学の自治的運営にとってもっとも基本となる事項であるとともに、これまでに提案されているそれらには、諸法規の理解の点での明らかな誤りをはじめ、重大な問題が含まれている。教職員組合は、「定款」および法人の基本骨格は憲法・教育基本法をはじめとした諸法規の理念と定めにしたがい、新大学および現四大学の教育・研究活動を大学の特性に照らして自律的で自治的なものとして保障できるものでなくてはならないという立場から、以下にこれらについての問題点を指摘し、最低限修正すべき点についての現時点での見解を表明する。

目   次

1.法人と大学との区別という大前提・・・・・・・・・・・・・・1
2.外部の圧力に対して脆弱な新大学―定款案23条の問題・・・・2
3.理事の構成―法人に大学の意思を反映できるか・・・・・・・・4
4.理事会(役員会)を設け合議で行うこと・・・・・・・・・・・5
5.教員人事を行う人事委員会(法人組織)は憲法・学校教育法違反・6
6.狭隘な法人の「目的」条項・・・・・・・・・・・・・・・・・7
7.理事長と学長の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
8.業務方法書にかかわる事項について・・・・・・・・・・・・・8


1.法人と大学との区別という大前提

〈法人と大学とは本来別個のもの〉
 なによりもはじめに指摘しておかなければならないことは、法人と大学との間の基本的な関係である。現在提案されている法人の基本骨格では、あたかも法人と大学とは一体または同一であるように扱われている。しかし、新たに設立される公立大学法人は、あくまで新大学および現四大学の設置主体であり、大学そのものではない。このことは公立大学法人の場合だけでなく、国立大学法人においても(私立)学校法人においても、何らの変わりはない。法人の設立はそれぞれ国立大学法人法、地方独立行政法人法、私立学校法にもとづく(ちなみに地独法は第21条で「地方独立行政法人は、次に掲げる業務のうち定款で定めるものを行う」と規定し、その第2項に「大学の設置および管理を行うこと」とあり、これが公立大学を法人化する根拠となる)。これに対して、それらの法人が設置する大学および学校(学校教育法の規定によるもの)が設置者の如何に関わらず学校教育法に根拠を持つものである。法的根拠の違うこのことを見れば、両者が別個の組織であることは明らかである。ちなみに法令に定められた諸認可申請・届出などは、その事項によって届け出者は、法人に関するものは理事長、大学および学校に関するものは学長または校長と区別もなされている。したがって、法人組織と大学組織との間を区別することは、「定款」および法人組織の骨格にとって大前提の事柄である。

〈東京都は意図的に経営と教学との分離を選択した〉
 さらに東京都は、学長が理事長を兼ねることを原則とした地方独立行政法人法第71条の但し書き部分を用いて、あえて学長とは別に理事長をたて、教学と経営との明確な分離という形態をとった。そうであればなおさら法人組織と大学との間の区別は明確にならなければならない。国立大学の場合、法人と大学との間は区別されるとはいえ、大学の自主性自律性という観点から、学長が理事長を兼ね(理事長が学長を兼ねるのではないことに注意)、法人の運営を教学にできるだけ近づける形態がとられている。
  公立大学法人に関しては、法案段階では基本的に国立大学法人と同じまたはきわめて近い形態をとることが想定されていた。しかし、東京都はあえて学長・理事長分離の形態を採り、さらに現大学の廃止と新大学の設立ということによって1法人5大学という国立大学とは全く異なる形態を選んだ。その結果、形態は国立大学よりもむしろ私立学校法人に近いものとなったといえる。これは東京都が意図的に行った政策選択である。そうであるならば、法人の基本骨格および「定款」(私立学校においては「寄付行為」)もまた、私立学校法人がそのモデルとしてその整合性が検討されなければならないはずである。
  以下ここでは、私立学校法人および私立大学の例に照らしながら、「定款(たたき台)」および法人の基本骨格における問題点を指摘し、我々の見解を明らかにしたい。

2.外部の圧力に対して脆弱な新大学――定款案23条の問題

〈私立学校法人の寄付行為は業務を簡潔明快に規定している〉
 第一に重要な点は、設置された大学が外部に対して独自性や自律性を保てるのかどうかである。たとえば早稲田大学の「寄附行為」には
  第3条 この法人は、大学、高等学校、専修学校その他研究施設を設置し、真理の探究と学理の応用につとめ、学芸を教授し、その普及をはかり、有能な人材を育成することを目的とする
  第4条 この法人は、前条に規定する目的を達成するため、次に掲げる学校を設置する
とされ、以下大学(学部学科等)および附属学校が具体的に掲げられている。法政大学の「寄附行為」では、
  第3条 この法人は,教育基本法,学校教育法及び私立学校法に従い,学校その他の教育事業を経営することを目的とする
  第4条 この法人は,前条に規定する目的を達成するために,次の学校を設置する
と早稲田大学と同様の規定が示されている。
  これに対して新法人の「定款(たたき台)」では、第3条で「法人は、第1条の目的を達成するため、首都大学東京を設置する」としているばかりでなく、23条に「業務の範囲」という独立の規定が存在する。
私立大学の寄附行為では法人の業務として大学等を設置するという以上のことを独立に規定していない。すなわち、学校法人を律する法律と、大学を律する法律(学校教育法)は独立なので、2つの概念を明瞭に区別して、すなわち寄附行為では法人が直接かかわるものについてのみ規定しているのである。

〈区分の不明瞭な業務範囲の規定〉
  一方、新法人の「定款(たたき台)」第23条は、地方独立法人法第8条にいう「業務の範囲」を以下のように定めている。
  第23条 法人は次に掲げる業務を行う。
  (1)大学を設置し、これを運営すること。
  (2)学生に対して、修学、進路選択及び心身の健康等に関する相談その他の援助を行うこと。
  (3)法人以外の者からの委託を受け、又はこれと共同して行う研究の実施その他の法人以外の者との連携による教育研究活動を行うこと。
  (4)公開講座の開設その他の学生以外の者に対する学修の機会を提供すること。
  (5)教育研究の成果を普及し、及びその活用を促進すること。
  (6)前各号の業務に付帯する業務を行うこと。
  しかし、この第1項は明らかに第3条と重複している。もし都立の旧大学を暫定的に設置したいのなら、第3条に記述すべきであるしそのほうが私立大学の「寄附行為」の規定に近い。また第2項から5項までは、これまで大学が行ってきた業務である。たとえば学生の進路指導をとってみても、教育をふくむ様々な教学的事項と切り離すわけにはいかないことは、経験則として自明である。
  では、第2項以下の項目を大学の業務からはずして、法人の直轄業務と定義することによりどんな問題が生ずるか。まず第一に、事務機構や業務の分担がきわめて複雑になる。教学・研究にかかわる事項は大学が主体的に行うが、第2項以下の項目は教育上の判断が含まれる以上、教職員がかかわらないわけにはいかない。そうすると、教員が大学に所属するとして発令されている場合、その職務(たとえば公開講座の準備など)は大学の業務として行っているのか法人の直接業務として行っているのか区別がつかない、あるいは兼業として扱われなければならないなど、複雑な問題が生ずる。これは明らかに法人のめざす「簡素化・効率化」の原則にすら反する。
  第二の問題は、大学の意思を外部に向かって発信する場合に生ずる。大学の意思は研究・教育にかかわる様々なテーマを含むと考えられるが、それらの意思を発信する前に、法人が直接管轄する第2項以下の業務との調整が必要になる。この調整は時間がかかるだけでなく、本来大学が考えている意思の内容を歪曲する可能性がある。そうすると、大学がその意思を自立的に決定して外部に発信する過程での実効性が脆弱になると考えられる。
  これらの懸念を払拭するには、定款案23条の第2項以下第5項までを削除すべきである。実際、法理的にも「業務の範囲」とは地方独立行政法人法第21条(業務の範囲)から選択すべき他ないのであり、妥当なものとしては同条第2項の「大学の設置及び管理を行うこと」しかあり得ないのである。
  もしあえて、他の業務(地独法21条第6項「前各号に掲げる業務に付帯する業務をおこなうこと」に相当するもの)、たとえば、授業料(学生納付金)の徴収業務等の財務を大学からはなれて法人が管轄するとすれば、業務方法書に記述すべきである。
  以上を考慮して、当面23条の第2項から第5項までを削除するか、または、23条全体を削除した上で、第3条を「業務の範囲」として5つの大学を設置することを明記すべきである。

3.理事の構成――法人に大学の意思を反映できるか

〈多くの私立大学は学内教職員が多数を占める〉
  第二に重要な点は、大学の意思がどのように法人の意思決定に反映するかである。法人と大学とは別個であるとはいえ、公立大学法人は大学を設置・運営することを主たる目的としている以上、大学の特性に照らし、その意思が法人の意思決定に十分正確に反映することは必須の条件といえる。大学の意思はいうまでもなく学校教育法59条1項「大学には重要事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という教授会規定にのっとって形成される。複数学部からなる大学の場合、国公立大学においては評議会において各学部の意思が集約され、全学的意思決定が行われるが、私立大学の場合も学部長会議など教授会の議を踏まえて全学的意思決定を行う機関が通常設置されている。そして私立大学の場合、このようにして決定された意思は、通常は法人の理事会においてもそのまま承認され、対外的に提示されるのである。
  大学の意思を法人の意思に正確に反映させることを担保するため、理事会の構成も学内教職員から選出された者が多数を占めるような配慮がされている例が多い。たとえば早稲田大学では、総長を含めた14-17人の理事のうち、10-12人は教職員から選出され過半数を占める。
  以上と対比すると、新法人の理事は(旧大学が存在する過渡期を除くと)定数が6名以内であり、また理事はすべて理事長が任命すること(定款案第12条)になっている。理事長による理事の任命権は地方独立行政法人法第14条に基づいているので変更できないにしても、少なくとも定款案第8条に規定される3名以内の理事については明瞭に3名と規定し、大学の教職員でなければならないと規定すべきである。

4.理事会(役員会)を設け合議で行うこと

〈私立学校法人では理事会は必置義務〉
本年6月に改正された「私立学校法」では、合議機関としての理事会が必置義務化され、さらに理事会の招集方法、議長、定数及び議決要件について定めることが義務づけられることとなった。今回の「私立学校法」改正は、帝京大学医学部不正入試疑惑などをきっかけに、私立大学等の公共性を担保する仕組みを強化することが一つの目的とされていたものである。実際、この改正を待つまでもなく多くの私立大学の寄附行為では、理事会を合議機関として位置づけている。たとえば法政大学の寄附行為では以下のように規定されている。

 (理事会の招集)
第7条 理事会は,毎月1回理事長がこれを招集する。
2 理事長は,必要と認めたときは,前項の規定にかかわらず,随時理事会を招集することができる。
3 理事長は,理事総数の過半数から会議に附議すべき事項を示して理事会の招集を請求されたときは,その請求のあった日から7日以内にこれを招集しなければならない。
4 理事会の議長は,理事長とする。

 (理事会成立の定足数)
第8条 理事会は,理事の過半数の出席がなければその議事を開き,議決をすることができない。

 (理事会の議事)
第9条 理事会の議事は,第27条の2及び第32条に規定する場合を除いては,理事の過半数で決する。可否同数のときは,議長がこれを決する。この場合において議長は理事として議決に加わることができない。
2 理事会の議事については,議事録を作り,これに議事の経過の要領及びその結果を記載し,議長及び出席理事1名がこれに署名又は捺印しなければならない。

 以上より明らかなように、理事会は合議機関であり、定期的な開催が義務づけられている。ちなみに国立大学法人法第11条2項において「学長は、次の事項について決定をしようとするときは、学長及び理事で構成する会議の議を経なければならない」として、員会(理事会)の必置及び審議事項(中期目標への大学法人の意見や、予算・決算、重要な組織の設置または廃止など)が明記されている。公立大学法人として、その透明性を高め公共性を私学以上に十分に担保する上で、新法人の定款も理事会(役員会)を設けるとともに、審議すべき事項など合議機関としての規定を加えることは不可欠である。

5.教員人事を行う人事委員会(法人組織)は憲法・学校教育法違反

〈教員人事は「学問の自由」の要〉
 現在提案されている法人組織の骨格では、教員人事は法人組織である人事委員会にその権限がおかれている。それによれば、この委員会は教員身分ではない事務局長が主宰し、事務局幹部職員・外部委員など学内教員以外が多数加わり、人事計画ばかりか個別教員人事についてもこの委員会及びその下部組織である教員選考委員会が行うこととされている。重要な教員人事はすべて大学機関ではなく法人組織が行うという仕組みである。しかしこの仕組みは、憲法・教育基本法や学校教育法に真っ向から違反するものである。
新規採用や昇任など教員人事は、大学の自主性自律性、憲法が定める「学問の自由」を現実のものとする上で、最も重要な問題である。例えばポポロ事件最高裁判決(昭和38年5月22日)は、
  「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的な判断に基づいて選任される」
  と明確に判示している。この理は、教育公務員特例法に基づく教授会人事権が明文では適用されない私立大学についても妥当する。名城大学事件に関する名古屋地裁判決(昭和34年12月18日)では次のように判示されている。やや長文にわたるが以下に引用する。
  「学問の自由は本来学問的研究活動の自由を言うものであるが、その自由はその任命権者又は外部勢力による圧迫干渉を排除し、研究者の地位を保障するに非ざればその全きを得ない。従って大学においては教員は研究活動の自由を保障されると共にその任免等の人事についても大学の自主性を尊重してその自治が認められているのである。それによって学問の自由と教授の自由とが高度に維持されるのである。かくの如く大学自治の原理に基づき名城大学においても学則十条において同大学の教授等の教員の任免等については教授会の審議決定・・・・を要するものと規定したのである。従って右学則第十条は経営上の都合等の理由により教授を免職する場合を除外しないことは自明の理であり、かかる理事会の恣意を排斥し教授の地位惹いて学問の自由を護るためにこそ本条の存在理由があるのである」。
  学校教育法59条第1項が示す教授会の審議すべき重要事項には、上述の判例などからも教員人事が含まれることは明らかである。したがって、法人の組織(大学の外部の組織)である教育研究審議会といえども個別人事を行うのではなく、人事にかかわる方針・計画のみを議論すべきである。教育研究審議会の権限としての「教員の採用、選考等に関する事項」(定款案第22条第3項)を「人事に係わる計画に関する事項」と変更すべきである。また学則において、教員人事における教授会の役割を明瞭にすべきである。

6.狭隘な法人の「目的」条項

 私立大学の寄附行為の場合、多くの場合目的は簡潔に書かれている。早稲田大学では「この法人は、大学、高等学校、専修学校その他研究施設を設置し、真理の探究と学理の応用につとめ、学芸を教授し、その普及をはかり、有能な人材を育成することを目的とする」とあり、法政大学では「この法人は,教育基本法,学校教育法及び私立学校法に従い,学校その他の教育事業を経営することを目的とする」と書かれているに過ぎない。首都大学東京の定款案第1条のように、個別の規定を羅列的にならべるのでは、重要な事項が抜け落ちる可能性がある。もし具体的に規定するならば、学校教育法第52条にある「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」という観点と同等の表現が不可欠である。

7.理事長と学長の関係

 大学を設置運営する法人は、いうまでもなく教育・研究という大学の役割の特性に鑑み、その自主性自律性が十分に確保できるものであるべきである。国立大学において学長が理事長を兼務することとしたことはそのためであり、また同様に私立大学においても学長が理事長を兼ねる総長制度をとっているところは少なくない。このことを見れば本来は、都の設置する法人においても国立大学法人と同様に理事長と学長は同一人格が兼ねるのが望ましいと考える。「定款たたき台」ではそれらが別人格であることを規定するのではなく、同一人格であることを許容する規定に11条を変更すべきである。
  また、副理事長については理事長が別におかれる場合についてのみ学長を副理事長とすべきで、「定款(たたき台)」第8条の副理事長の定数は「2名以内」ではなく、「理事長が別におかれる場合学長1名」とすべきである。事務局長が副理事長となるという管理本部の考えは、法人が圧倒的優位に立つことで大学の自主性自律性を著しく侵しかねないもので、容認できない。

8.業務方法書にかかわる事項について

 定款案24条には「法人の業務の執行に関し必要な事項は、この定款の定めるもののほか、業務方法書の定めるところによる。」と記述されている。一方、業務方法書に規定すべきもっとも重要な事項は、財務に関するものである。現在示されている案では、運営資金について全く触れられていないのは問題である。運営費交付金の交付は自明であるとしても、特に授業料(学生納付金)について触れられていないと無用な混乱を生む可能性がある。原案では、授業料は都に納付するのであって、法人に納付するのではないとも解される。
  しかし一般的に言えば、授業料はその減免や学生の休学措置とも日常的に関連しており、教学事項との関連も大きい。したがって国立大学法人の場合と同様に、授業料は法人に納付するのが妥当と考えられるので、定款23条に規定しない場合は、業務方法書に記述すべきである。


投稿者 管理者 : 2004年11月10日 00:47

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