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2004年12月01日

広がる大学の授業評価制度

産経新聞(11/29)

 ■岡山大では「改善論」の講義も
 ■学生の声で特色づくり

 米国の大学のように、国内でも学生が教授を“採点”する「授業評価システム」が導入されつつあるが、岡山大学(岡山市)ではさらに踏み込んで、授業の問題点を学生らが討論して解決策を探る授業がこの秋から始まった。大学では全国初の試みという。少子化時代にあって、各大学は学生にどのようにして魅力ある授業を提供していくのか。岡山大を中心に各大学の授業評価の取り組みを検証した。
 ≪「やりがいある」≫
 「これから始まるのは『授業を変えよう』という授業です。大学内や社会にも大きな影響を及ぼす可能性もあります」
 新授業「大学授業改善論」(後期日程)の初回の講義(十月七日)で、担当する橋本勝教授(49)はこのように切り出した。
 学生数約一万一千人、十一の学部を擁する岡山大は中国地方の中核大学を目指し、世界水準での研究を目指す文部科学省の「21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラム」の対象校にも選ばれている。この授業は国立大学の独立法人化を受けた特色づくりの一環である。
 「改善論」で対象とする授業は、学生がまず話し合った後、教授が意見に偏りがないか、学生の共感を得ることができるかなどをチェックして選考。選抜されたグループは対象授業の問題や改善点、評価すべき点を調べ、プレゼンテーションに臨んでいる。
 「単位を楽に取れる科目は必要悪か」という討論などがすでに行われたが、経済学部一回生、孫海波君(18)は「大学を変えるチャンスにかかわれるのは画期的」。法学部二回生の渡辺知佳君(20)も「大学の活性化に参加できるのはやりがいがある」と前向きだ。
 ≪今後の展開に期待≫
 橋本教授らが中心となって平成十三年に、授業を含む教育環境の改善点などを話し合う「FD(ファカルティ・ディベロップメント)検討会」を立ち上げた。これに「主役」である学生を参加させたところ、「授業の改善に向けた内容を盛り込んだ授業ができないか」との声が上がり、「改善論」誕生への契機となった。実際に学内では「板書中心の講義。学生にも私語が多い」「入門段階なのに教授が専門的な話を進めるのでついていけない」などと、学生が授業を真面目に評価している実態が浮かび上がっていた。
 「改善論」では対象授業の担当教員に改善点などを提案、学生に報告書をまとめてもらう予定にしている。岡山大の教育学生担当理事、松畑煕一(きいち)副学長(64)は「学生と教職員が協力して作り上げた大学授業改善論は、未来の大学教育のあり方を語るうえで望ましい」と期待を寄せる。
 ≪東大、慶大でも≫
 岡山大のような授業の中ではないにせよ、学生が授業を評価してその声を授業に反映させる動きは東京大学教養学部(東京都目黒区)をはじめ各大学に広がっている。
 平成二年の開校以来、学生による授業評価を実施している慶応大学湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)でも、「この授業を履修してよかったか」「教え方が分かりやすかったか」と学生の満足度を聞き、結果は学内限定でホームページ(HP)で公開され、教員が必ずコメントを記入するようにしている。「問題を指摘されても改善が見られない教員は恥ずかしい思いをするし、あまりにひどい教員がいれば、学部長が確認に乗り出す」(事務室)という。
 「授業はすべて英語」などの特色を打ち出している国際教養大学(秋田県雄和町)の中嶋嶺雄学長は「岡山大のように、大学の主人公である学生が授業改善に参加するのは大いに結構なこと。私の大学でも教員が他の授業を見学するほか、学生も授業評価アンケートに参加しているが、学生のコメントは非常に有益」と話す。
 授業評価の流れは、学生数が減少し「大学全入」の時代が目前といわれる中で、各大学がいかに危機感を抱いているかを表すものだ。岡山大の例だけでなく、こうした取り組みは大学教育の活性化に一石を投じる試みだけに今後の成果に注目したい。(岡山総局 藤崎真生、特集部 草下健夫)
                  ◇
 【プラスα】
 ≪米では教員の人事考課に反映 竹中経済財政相≫
 慶大教授とハーバード大客員准教授を務めた竹中平蔵経済財政・郵政民営化担当相は日米の授業評価の違いについて次のように述べた。
 「米国ではハーバードをはじめ、つまらない授業があれば、大学そのものの人気がなくなるので学生による授業評価が当たり前のように行われてきている。学生の評価が悪ければ教員の人事考課に即はねかえるシステムだ。給与にも反映し、最悪の場合、くびになるかもしれない。単位を落とされた学生は腹いせに悪い評価を出すこともあるが、全体としてはうまく機能している。慶大の授業評価は人事考課に影響せず、『来年の参考に』と教員たちに調査結果が与えられていた。米国の大学は競争原理が働いている。日本の大学も競争を意識して変わっていくところが生き残れるのではないだろうか」


投稿者 管理者 : 2004年12月01日 00:39

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