個別エントリー別

« 京都自由大学、市民のための「自由大学」 来月、京都・中京区で開校 | メイン | 日本学術会議、第3期科学技術基本計画の提言まとめる »

2005年02月22日

文科省、18年度予算で新制度創設へ ハイリスク目的志向型 基礎技術研究を長期支援

科学新聞(平成17年2月11日号)
 ∟●くハイリスク目的志向型 基礎技術研究を長期支援

文科省第3期基本計画見据え
18年度予算で新制度創設へ

 文部科学省は、新たな研究支援制度を平成18年度予算で創設することを決めた。第3期科学技術基本計画の主眼の一つとなる出口を見据えた連続的なイノベーションシステムを構築することが目的。萌芽的な研究から新たな芽を見いだし、社会的・公共的・経済的価値につなげていくためには、連続的にテクノロジーの芽を育てていかなければならないが、既存の制度では十分な支援ができていない。そこで、ハイリスクな目的志向の基礎技術研究を長期間支援する制度を創設するとともに、産学官や異分野の研究者が集まって研究開発するための拠点を整備する。

 日本の研究支援制度を大きく分けると、研究者の自由な発想に基づく萌芽段階からの多様な研究は、科学研究費補助金、国立大学法人の運営費交付金、私立大学補助金が支援。そこで研究の幅を広げた上で、世界最高水準の科学研究を目指すために、大型の科研費や特別教育研究経費によるスーパーカミオカンデやすばる望遠鏡等への支援を行い、21世紀COEで多様な分野の芽を育てている。
 実用化や社会に役立つという出口を目指した研究は、萌芽段階の研究成果をもとにして、戦略的創造研究推進事業や科学技術振興調整費、厚生労働科学研究費、産業技術研究助成事業などが支援している。しかし、研究期間が2~5年と短く、次のファンディングがないため研究の芽を十分に育てられないことや、結果的に科学研究が行われていて出口に向かっていないことなど、様々な問題があった。
 一方、産業界側は毎年、約2,000億円を海外の大学に、約700億円を国内の大学に投資していたが、最近になって国内大学への投資を増やす傾向にある。理由の一つはイノベーション・システムが時代とともに変化したためだ。これまでは、各社の自主技術に海外大学で開発した技術を導入すれば良かったが、それでは数年で陳腐化してしまう。独自のコア技術と周辺技術を持った上で、世界最高水準の独自技術を生み出さなければ、世界市場では勝負にならない。そのためには、多様な基礎研究と強固な研究基盤が必要になる。国内の大学を中心とする基盤が重要だ。
 また、米国では政府主導でEUでは企業中心に技術の囲い込みが進められており、産業界内にも「せっかく投資しても国際情勢の変化で無駄になるのではないか」という危機感が生まれている。隣国の中国政府は、早くから海外にいる自国研究者を呼び戻すウミガメ政策を進めると同時に、国内技術の育成を国家目標に掲げている。
 こうしたことから文科省は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業を見直し、萌芽段階の研究で生まれた基礎研究の成果のうち、技術開発につながるものを10年程度かけて育てる基礎技術研究支援制度を創設する。大学の研究基盤を向上させるとともに、学術研究の支援機関である日本学術振興会とJSTが棲み分けを行うことで、研究者にとっての位置づけを明確にする。
 さらに、産業界側のニーズを基礎技術研究に結びつけたり、研究成果を産業に活用するための共同研究や情報交換の場として、先端技術融合型COEを創設する。科学技術振興調整費の戦略的研究拠点育成プログラムが17年度で終了するため、18年度から先端技術融合型COE育成プログラムに改変する。
 大学や研究機関を核として、10年先をにらんだ先端的な重要技術領域を選定した上で、年間10億円程度を5年間支援する。参加企業にも相応の支援を求める。特に既存の学問分野だけでなく、将来を見通した融合分野から領域を選定する。
 有本建男・科学技術・学術政策局長は「5年前、第2期基本計画の議論の時は、学術研究側と産業研究側で対立してゼロサムの議論を行っていたが、ここに来て企業側の意識も随分変わった。大学は幅広く基礎的な研究を行い、国はSPring-8等のトップレベルの共同研究施設を整備し、そうした基盤の上に企業の発展があることが分かってきた。イノベーションを支える連続的なシステムを構築するのが我々の使命」と話す。


投稿者 管理者 : 2005年02月22日 00:58

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/708

コメント