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2005年02月18日

新首都圏ネット、国立大学協会臨時理事会(2月16日)に対する要請

新首都圏ネットワーク
 ∟●国立大学協会臨時理事会(2月16日)に対する要請

2005年2月16日

国立大学協会理事各位殿

国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

国立大学協会臨時理事会(2月16日)に対する要請

 授業料値上げ問題を議題として本日開催される国立大学協会臨時理事会に対して、以下のことを要請する。

1 貴協会臨時総会が昨年12月8日に採択した「国立大学関連予算の充実について」で書かれている3つの「要請」-(1)運営費交付金の確保・充実、(2)学生納付金標準額の据え置き、および(3)施設整備費の大幅増-を、来年度予算審議を行なっている国会に対して直ちに実行すること。
2 先の「国立大学関連予算の充実」において「留保」した「国立大学法人制度の運用及び財政措置等についての改めての精査やこれに基づく国大協としての必要な行動」の検討が、貴協会の緊急かつ最優先課題となっていることを確認し、かつ、貴協会の次期執行部選出に当たって考慮されるべき最重要事項であることを確認すること。


説明

1 昨年12月24日の閣議において決定された平成17年度予算において、国立大学授業料の値上げを含む国立大学関連予算が決定された。この予算案が、授業料値上げを、効率化係数、経営改善係数の続く第3の運営費交付金減額の仕組みとして位置付けているために、国立大学法人は、授業料の値上げか、それとも、値上げをしないでその分少ない予算で大学を運営するか、という“苦渋の選択”を迫られることになった。現段階では、少なくない国立大学法人が、国会による予算の決議および省令改正を条件として、標準額にあわせての授業料値上げを決定している。標準額に基づく授業料値上げを見送った法人も、値上げを2ヵ年にわたって行なう、前期については値上げをしないなど、値上げを遅延させることが精一杯となっている。そして、京都大学を含む10以上の法人が、“苦渋の選択”を見合わせている状態にある。

 以上のような事態は、すでに指摘されているように、国民の教育を受ける権利の実現をさらに困難とし、また、国立大学の財政的基盤を不安定化させるものである。これは明らかに、法人法案審議過程で示された文科大臣、副大臣の答弁と、それに基づく衆参両文部(教)科学委員会の付帯決議に反している。

 そして、手続的に見ても、次のような異常な事態を引き起こしている。第1に、法人化以前であれば、授業料値上げは、それがなされる前々年度(例えば、平成17年度値上げであれば平成15年度)に予算審議が行われた後、前年度の11月には省令改正がなされ、受験生および在学生に対する周知徹底がなされていた。これに比して、今回にあっては周知徹底を行なうことは事実上不可能となっている。第2に、それでもなお不十分であれ周知徹底を行なおうとすれば、国会による予算の審議、それに基づく予算案の組み替え、そして予算案の決議が終了していないにもかかわらず、政府予算案原案通りの成立を条件として値上げを決定、公表しなければならず、国権の最高機関である国会の役割を無視ないしは軽視する結果となっている。例えば、東京大学は、1月28日付で、来年度授業料に関わる規則の一部を「改正」し、その「理由」として、「国立大学の授業料標準額の改定を含む、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令-括弧内省略-の一部を改正する省令が改定された場合における、本学の授業料の額の改定について定めたものである。」との記述を添えている。しかし、これでは、東京大学が、国会を、政府予算案を追認する機関としか見なしていないとの批判を免れないのである。

2 本日開催される臨時理事会の役割は極めて重要である。

 貴協会は、すべての国立大学法人から構成される組織として、国立大学の「学術の中心」としての機能を強化し、研究者個人とその集団が「学問の自由」をよりよく行使するために必要な財政的基礎を強化し、かつ、市民の高等教育を受ける権利の発展に寄与すべきである。そのために、貴協会は、それから「学問の自由」を付託されている国民の代表から構成される国会に対して、「学問の自由」が市民にもたらす恵沢をより大きくし、かつ、市民の高等教育を受ける機会を拡大するために必要な財政的および立法的諸条件を積極的に提案する責任を有しているはずである。貴協会が対話を行なうべき第1義的な相手は、行政府ではなく、国民代表から構成されている国会、そして市民それ自体なのである。ましてや、行政府への隷属はあってはならない。

 本日の臨時理事会において、貴協会臨時総会が昨年12月8日に決定した「国立大学関連予算の充実」に従い、そこにおいて明示されている(1)運営費交付金の確保・充実、(2)学生納付金標準額の据え置き、および(3)施設整備費の大幅増という3つの要請を、予算審議を現在行なっている国会に対して行なうのに必要な具体的な活動を決定し、臨時理事会終了直後からその活動を開始するとの決定を行なうべきことを、強く、要請する。このような決定は、貴協会の最高意思決定機関である総会の意思を尊重し、かつ、国会の役割を正当に重視するためにも、不可避である。

 仮に、“授業料値上げやむなし”といった確認を行えば、貴協会の最高意思決定機関である総会において「要請」を行なうとした決定を、執行機関に過ぎない理事会が覆すことになる。さらには、国会の持っている予算審議議決権を軽視ないしは無視することにならざるを得ない。貴協会総会は諸々の不満をガス抜きする場ではないし、国会は政府予算原案を自動的に通過させる儀式の場ではないはずである。

3 国立大学法人の政府に対する圧倒的な隷属性をもたらし、国立大学が果たすべき役割の遂行を阻害しているのは、今回の予算案策定を可能とした諸制度-総額削減の方法としての効率化係数、経営改善係数、そして、授業料値上げを組み込む「総額管理逓減方式」、予算決定に対して貴協会を含む国立大学関係諸団体の意見を適切に反映するための仕組みの欠如など-に他ならない。先の「国立大学関連予算の充実について」において付された留保を撤回して、「国立大学法人制度の運用及び財政措置等についての改めての精査やこれに基づく国大協としての必要な行動」の検討が、貴協会にとっての緊急かつ最優先の課題となっていることは疑いようもない。

 すでに複数の国立大学法人が赤字必至であることが知られている。さらには、少なくない数の大学において、人件費削減を目的とする、常勤教員数の削減や定期昇給の見送り、非常勤職員の給与削減が決定され、あるいはそれが現在検討されている。法人化後1年を経ない段階で、「学術の中心」である大学の縮小再生産が現実のものとなっているのである。貴協会は、この事態を打開する活動の先頭に立ち、大学人に「学問の自由」を付託している国民、そして、その代表から構成される国会に対して、この危機的な事態を知らせ、かつ、それを克服するために必要とされる具体的な措置を、直ちに、提案しなければならないはずである。

 近々に予定されている貴協会次期執行部の選出に当たって、この緊急かつ最優先課題に取り組む意思と能力を有する体制をつくらなければ、貴協会の存在意義は消滅しよう。本日の臨時理事会において、先の緊急かつ最優先の課題を確認するともに、次期執行部選出に対して責務を負っている総会に提起することを決定するよう、強く、要請する。


投稿者 管理者 : 2005年02月18日 01:25

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