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2005年02月04日

国立大学法人、運営費交付金削減の仕組みについて

国立大学法人法・意見広告の会

今回の運営費交付金削減の仕組みについて

 新聞掲載の「意見広告」の補足です。 「意見広告」紙面では、交付金削減の仕組みを分かりやすく説明しようと考え、その様子を図式化してみましたが、まだ分かりにくいところが残っているかも知れません。そこでこの補足を加えました。 国の予算からは「運営費交付金」が国立大学法人に支給され、授業料は各法人の自己収入です。この「交付金」を削減するため、政府は授業料の「標準額」を引き上げ、「標準額どおりに授業料を値上げしなさい。そうすれば収入が増えますよ。値上げしなくても、交付金を減らすことに変わりはありませんよ」と言っているのです。

<運営費交付金削減の仕組み>
 国立大学法人法第3条では、「国は、この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなくてはならない」とあります。また、国会の法案審議のさいの政府答弁や衆参両院の附帯決議にも、国立大学が国民に付託された教育と研究を行う機関であることが、十分配慮されなければならないことが確認されています。

 しかし、国や文部科学省は、国立大学を単なる行政機関と考え、ひたすら財政削減の対象にしようとしています。国立大学は国から運営費交付金を受け取っていますが、それを削減しようというのです。削減の仕組みは三つあります。

(1) 効率化係数:
 国立大学法人の予算には、一般管理費(事務)と教育研究費に毎年1%の効率化係数がかけられています。10年後には現在の約10%減になるということです。「効率化」というのはそのような名前が付いているだけで、財務省も文科省も本当に「効率化」がなされるとは考えていません。そう考えていないから、「授業料の標準額」を引き上げて、「足りなくなった分はこれで補いなさい」としているのです。

(2) 経営改善係数:
 附属病院を持つ国立大学では、毎年2%の経営改善係数がかけられています。これは、病院の診療報酬等が毎年かならず2%増えることを前提に、その分の運営費交付金を減らすというものです。10年後には20%減になります。どんな企業でも「増収」の実現のためには、それなりの投下資本が必要です。政府はそれについては全く配慮なしに「経営改善」を号令しています。

(3)授業料値上げ:
 今回の授業料値上げは、学生納付金を増やす分、運営費交付金を減らすという仕組みから来ています。今後とも国が入学金や授業料を値上げすると決めれば、その分国立大学への運営費交付金は減り続けていきます。従来の仕組みだと、入学金と授業料が毎年交互に値上げされ続けます。

 この結果、何が起きているでしょうか。

(1)効率化係数によって、大学の基礎研究や教育が危機に瀕しています。基盤的な部門の費用が真っ先に減らされているからです。繰り返しますが、「効率化」というのは、ただの「名前」です。

(2)経営改善係数によって、病院は収入第一の診療を行うことになります。診療点数の高い患者が優先され、国立大学病院が美容外科や人間ドックによってお金稼ぎに走っています。

(3)授業料値上げによって、運営費交付金をこの先も減らし続けていくことになります。これは国立大学に対する、国の責任を放棄するということに他なりません。すでに文系の大学院では、私立大学よりも高い学費となっています。

 こうして国からの運営費交付金を削減し続けていけば、もはや「国立」大学ではなくなります。皆さんは、国立大学がこのように変貌していくことに賛成でしょうか。

 更に詳しくは、東京大学ホームページに神野経済学研究科長の解説も掲載されています。
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_170125_02_j.html

 また次のホームページも参考になります。
http://www.shutoken-net.jp/050131_1jimukyoku.html


投稿者 管理者 : 2005年02月04日 01:22

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