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2005年02月14日

東北大の学長新選考方式 職員ら異論反論 “正解”は?

河北新報(2/13)

 東北大が、83年間続けてきた学長選挙を廃止し、新たな選考方式を決めたことが波紋を広げている。新設の「学長選考会議」が選ぶことに対し、職員組合は「選考過程が不透明になる」と反発。一部の教授も研究科の枠を超えて、大学に説明を求める署名活動に出た。昨年4月の法人化で権限が強まった学長をどう選ぶかは国立大共通の悩みだけに、全国の関係者が議論の行方を見守っている。

 国立大の学長は教員の投票で選ばれてきたが、法人化後は選考会議に委ねる方式に変わった。ただ、ほとんどの大学が全学的な意向投票を行う形で選挙を残す中、東北大は先駆けて廃止した。
 歴代学長19人の顔触れをみると、現学長を含む14人が教員(有権者)数の多い理工系で、文系出身は2人だけ。

 選考会議の議長を務める小田滋・元国際司法裁判所判事(東北大名誉教授)は「今の制度は民意を反映していない」と指摘。「これからの学長は碩学(せきがく)なだけでなく、経営能力があるなど、広く人材を求める方がいい」と語る。

 これに対し経済、工、農学研究科の教授3人は9日、廃止の理由や新方式の選考過程の透明性をどう保つかについて、説明を求める署名活動を始めた。今月末まで、教授や助教授、講師、助手ら教員約2000人に呼び掛けるという。

 「選考方式の変更は大学運営の要なのに、議論が尽くされていない」と呼び掛けた教授。情報科学研究科も研究科名で同様の意見書を提出した。

 問題視しているのは、選考会議がどんな基準や過程を踏んで審査するのかが不明なことだ。学長が任命した経営協議会委員が選考会議に加わることも可能で、学長の影響力を受け、偏った選考が行われる印象がぬぐえないというわけだ。

 同大幹部は「欧米の大学も選考機関が選ぶが、第三者的で学長と距離を置く。東北大の場合、チェック機能が働かない恐れはある」と認める。

 農学系の教授は、経営力を学長の資質とすることに危機感を抱く。「経営に力点を置くトップ選びは、研究第一主義の伝統に逆行し、営利追求でない基礎研究が切り捨てられる可能性がある」

 山形大は選挙で上位3人の得票数を公表し、その後に選考会議が絞る形にした。選考会議委員の加藤静吾・理学部長は「学内の支持があって初めて、学長は大学を運営できるのでは」と話す。

 東北大の小田選考会議議長は「有識者でつくる選考委員が議論を尽くせば、ふさわしい人が選ばれる」と理解を求める。

 東北大は年内に選考基準などを公表するとして、署名活動を静観。ある選考委員は「他大学が追随するものにしてみせる」と自信を示すが、学内を納得させることができるかどうかは不透明だ。

[学長選考会議]経営を審議する経営協議会(学内、学外委員各13人)と、教育を担う教育研究評議会(学部長ら52人)の代表計12人で構成する。両機関から各5人以内の推薦と、教授・助教授30人以上による推薦を受け付け、1人に決める。資格を学外にも広げ、これまで1期4年(再選時は2年延長)だった任期を1期6年とした。新方式は来年秋から適用される。


投稿者 管理者 : 2005年02月14日 00:51

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