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2005年02月23日

横浜市立大、平成17年度一般入試出願者の減少について

横浜市立大学教員組合週報/組合ウィークリー(2005.2.21)
学問の自由と大学の自治の危機問題
 ∟●平成17年度一般入試出願者の減少について 松井道昭(商学部) 05-2-21

もくじ
●(投稿)平成17年度一般入試出願者の減少について
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(組合員からの投稿)
 組合員の松井さんから入試出願者現象の問題について投稿をいただきました。かならずしも組合としての正規の見解ではありませんが、組合員の参考のため、週報に掲載します。

平成17年度一般入試出願者の減少について

松井道昭

 平成17年度の一般入試の出願が締め切られ、横浜市大は大幅な出願者減少となった。昨年度と比較するとき、学部構成や募集枠が異なり、単純比較するわけにはいかないので、看護学部を除く4学部の合計で比較したほうがわかりやすい。16年度は556人の募集に対して、4,654人の出願で、出願倍率は8.4倍であった。17年度は580人の募集に対し2,216人で出願倍率は3.8倍である。つまり、半分以下の倍率である。
 学内で「改革」をめぐるゴタゴタがつづき、それが外に出て大幅な志願者減を招いたとみる見方が一般的のようである。しかし、それは否定できないが、それがマイナスに転じた主要な原因ではない。ゴタゴタではわが大学よりもはるかに世を騒がした都立大が減らさないだけでなく、むしろ増えていることに注目したい。わが大学と都立大に、ゴタゴタ要因に基づく出願者減が表われるのは次年度以降のこととなろう。
 横市大が減らしたのはいくつかの要因が絡んでいる。最初に技術的な面からふれよう。
 一つは、前期日程のみの募集になったことである。16年度の前期日程が募集定員483人に対する2,901人の出願で6.0倍であり、後期日程のほうは募集定員148人に対する1,753人の出願で11.8倍であった。17年度は前・後期一本化されたため、出願の集まりやすい後期日程がなくなったことが出願者減に大きく影響を与えている。
 第二の要因は、募集方法と選抜方法を大幅に変えたことである。都立大学のばあい、学部構成こそ変わったが、選抜方法は従来どおりのものを踏襲した。受験生の側からみて過去のデータが使えないのは非常に心細いことである。わが大学志願者は模様眺めに走ったのだ。選抜する側のつごうのみで入試方法をイジルことはひじょうに怖いことなのである。
 もっと大きな要因について述べよう。それは、市大改革のグランドデザインが時宜に適っていないことである。つまり、市大がどこに向かっているか受験生に(高校および予備校にも)わからない。今の大学の流れは、ゼネラリスト養成の従来型大学の基礎のうえに大学院を充実させるという流れと、資格取得、職業人養成に重点をおく流れとに二分される。前者が旧国立の難関校に見られ、後者は地方私立大および公立・私立の新設校に見られる。資格取得を目的に掲げる大学はおしなべて入学難易度は高くないし、大学院重点化も目指さない。少子化と大学入学定員増でまもなく大学全入時代が訪れようとしている。大学機能の二分化はこのような状を反映しており、受験生も二層化しつつある。
 受験生が二層化しているなかで、市大の目指す方向について受験生はおろか、市大にいる教員や学生にもわからない。いわゆるプラクティカルなリベラルアーツという路線がこれである。一見、ゼネラリスト養成を掲げるようにみえて、それを受けるかたちで大学院重点化の兆しが見られない。さりとて、資格取得を目的としているようにも思えない。たとえば、先端科学を象徴するような学系名称が消え、MBAなり会計大学院なりの魅力的な経済・経営の看板もない。これで受験生を振り向かせようとしても所詮、無理な話だ。
 加えて、いま教員任期制と年俸制が日程に上っている。これを前にして、教(職)員は意気阻喪している。研究・教育業務はサービス産業の最たるものである。サービス提供者がヤル気をなくして、お客様に対して質のよいサービス提供をなしえないことは自明の理である。この弊はまもなく外部に伝わるであろうし、今後、いま始まったばかりの出願者減にいっそう拍車のかかることが予想される。杞憂であればと願うが。


投稿者 管理者 : 2005年02月23日 00:42

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