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2005年03月09日

横浜市立大学教員組合、小川学長宛「2月15日当局提示就業規則案及び関連規程類にたいする見解と要求」

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ∟●「要求書を当局に提出 誠実交渉を! 制度変更を強行するな! 年俸制・任期制について要求と質問」横浜市立大学教員組合週報/ウィークリー(2005.3.8)

要求書を当局に提出 誠実交渉を! 制度変更を強行するな! 年俸制・任期制について要求と質問

 先月までに当局が就業規則案と諸規定類を提示したことを受け、組合は、本日、市大事務当局に対して要求書を提出しました。

 組合は、当局に対し、組合との交渉も始まっていないにもかかわらず、労働条件の変更を行おうとしていることに抗議し、誠実な交渉を行うこと、
 交渉をじゅうぶんに行わないうちに制度変更を強行しないこと、
 制度変更の実施以前においては現行の制度に拠ること
を要求しました。
 さらに、賃金についても、少なくとも2005年度については現行の制度にもとづいて支給することを要求し、年俸制についての多くの重大な問題―相対評価により必ず減給を受ける者が生ずるなど―を質しました。
 任期制についても、交渉を続けること、交渉ぬきに任期制導入を強行しないことを要求し、また、任期制への同意をしない教員について労働条件の不利益変更をしないことを強く求めました。
 最後の点に関連して、期間の定めのない雇用に留まる教員は昇任の対象としないとする、福島大学改革推進本部部長の発言の撤回を求めました。また、再任制度、昇任制度を含む任期制に関連するしくみのさまざまな問題を質しています。
(任期制については、第14面に参考記事「資料」)
 勤務時間その他の労働条件と就業規則については、今後、別途要求してきます。

(次頁以下、要求書全文掲載)

横浜市立大学学長
小川惠一殿

横浜市立大学教員組合
執行委員長 中西新太郎

2月15日当局提示就業規則案及び関連規程類にたいする見解と要求

 大学当局は2月上旬から中旬にかけ、教員組合が要求してきた教員の雇用・労働条件にかかわる規程類を組合に提示するとともに、1月14日付教員組合の「見解と要求」に対し口頭での回答を寄せた。

 雇用・賃金条件のきわめて重大な制度変更を表明した大学当局、横浜市大学改革推進本部に対し、教員組合はその制度内容を早期に示した上で教員組合との十分な協議、交渉をすすめるよう繰り返し要求してきた。

 当局は昨年9月に提案を行うとしてきたが、実際には、今回ようやく規程等をふくめた内容提示を行ったものであり、それらにしても、後述するように、いまだ制度概要にすぎない曖昧な点、相互に矛盾する点などが多くふくまれている。しかも、組合への就業規則及び関連規程類提示後に行われた教員説明会(2月末)において、これまで説明されてこなかった制度内容が口頭でのみつたえられるなど、当局の制度提案はあまりにも杜撰である。法人職員としての身分の根幹にかかわる任期制や雇用条件の内で最も重要な事項である賃金制度について、整備された制度内容を提示し周知したとはとうてい言えない状況であり、組合員と非組合員とを問わず、教員からは数多くの疑問が寄せられている。

 このような状況の下で教員に対し制度変更について同意を求めることは、拙速という以前に、不当かつ違法な振る舞いと言わねばならない。教員組合は、教員が意欲を持って働けるような勤務条件を求めるとともに、横浜市大がそこで学ぶ学生の要求や市民の期待に応え、真に魅力ある大学たりうる環境を求めてきた。そのために必要な課題の検討、遂行についてはこれまでも努力を惜しまなかったし、これからもそうである。しかし、現在当局が強引にすすめようとしている制度改変は、その手続きの点でも内容においても、大学運営に混乱をもたらし、教員の失望を誘い、横浜市大の魅力も品位も失墜させるものとなっている。何よりも恐れるのは、このような事態の進行によって、教育・研究機関としての大学の機能と役割が著しく低下することである。

 この悲しむべき状況に鑑み、大学にふさわしくかつ公正で法理に則った雇用・労働条件の確立を要求する立場から、当局提示の就業規則案及び規程類案に対する組合の見解と要求を示し、あわせて、雇用・労働条件の重大な変更事項の扱いに関する要求を示す。

 なお、就業規則案については、雇用・労働条件を規律する重要な内容であることから、個別条項について細目の要求を別途行う予定である。……

以下,各章の表題,および「4 任期制導入に関する見解と要求のみ」転載。(続きを読むへ)

1 雇用・労働条件に関して一方的に制度変更を行うことは許されない
2 制度変更の確定と実施以前の雇用・労働条件は現行制度に拠ること
3 年俸制の導入に関する見解と要求

4 任期制導入に関する見解と要求

① 協議・折衝を誠実につづけること、不利益変更をしないこと
 任期付教員への移行は労使双方にとって良好な雇用形態であることが合意され、教員の同意がある場合にのみ実施される。教員が「良好な雇用形態」であるかどうか判断する前提として、任期制の制度内容が適正かつ明確に設計されていることはもちろん、それが周知されかつ教員組合、各教員の疑問に答え、十分な協議、折衝を行うことが当然である。「期間の定めのない教員」を任期付教員に移行させることは、雇用形態における最も重大な不利益変更をもたらしうることから、これは当然の手続きである。こうした手続きを無視して拙速に任期制導入を実施すべきではない。
○任期制の制度内容について組合の疑問と要求とに誠実に答え、協議・折衝を続けるよう要求する。
○任期付教員への移行について、教員からの疑問に誠実に回答すること
 言うまでもなく、任期制の制度内容に関して疑問が解消されぬ場合には、かりに当局が同意を求めても教員には回答を留保する権利がある。
○任期付教員への移行を選択せず「期間の定めのない雇用」にとどまることを理由にした雇用・労働条件の不利益変更を行うべきではないこと
◎「昇任の対象は任期付教員のみ」という2月28日教員説明会での福島部長発言は不当かつ違法であり撤回を求める。
 福島発言は、「期間の定めのない雇用」を有期雇用契約に切り換えるために差別的処遇を明言したものであり、このような差別処遇は労働基準局長通達に明記された労基法第14条の趣旨に反する違法措置である。正当化されえない処遇にたいしては、組合は法的手段をふくめ必要な対抗措置をとる。
 2月28日教員説明会において、福島部長は、「期間の定めのない雇用」形態にある教員は昇任の対象としないと言明した。この発言は、24、25日説明会ではあきらかにされず、規程としてまったくあきらかにされていなかったものである。説明会資料にも記載されず、1箇所での説明会で突然こうした重大な、しかも明確に差別的な処遇を持ち出すことは、きわめて不穏当であり、制度設計の拙速、曖昧さを示すものである。制度変更に関する十分な周知と協議以前に、どのような雇用・労働条件が想定されているかさえ定かでない状況の下では、その適否についての判断も留保せざるをえない。
 「期間の定めのない雇用」に関する教員組合の質問にたいし、当局は2月15日付回答では、「公立大学法人横浜市立大学職員の勤務条件(教員)」に示された内容については任期付教員と同様としている。当然のことながら、職位は年俸水準等、勤務条件に密接にかかわるものであり、「期間の定めのない雇用」教員を昇任対象としないことは雇用・労働条件に関する明確な差別となる。また、現行制度における職位ごとの給与制度を考えるなら、28日説明会における発言は、雇用・労働条件に関するきわめて重大な不利益変更を表明したことになる。このような変更が許されないことはあまりにも明白である。

② 再任審査制度・昇任制度に関する文書の性格、規程としての明示
 任期制に関する必要事項についての学則案の提示
 任期制及びこれとかかわる再任審査制度・昇任制度について当局が直接触れている規程は、就業規則、任期規程(案)、「任期の再任審査について」「昇任等の審査について」(いずれも、2月15日市労連説明―以下、「説明文書」)である。説明文書についてはその性格があきらかではない。任期制は教員の教育研究評価にかかわるものであり、これらは学則として必要な事項を明示的に定めるべきことがらである。
○「説明文書」について、その性格をあきらかにするとともに、「異議申し立て」制度のような規程として明示すべき部分については規程に組み入れるよう要求する。
○必要事項についての学則案を提示するよう要求する。

③ 任期制及び昇任制度の制度内容に関する見解と要求
A 再任審査手続きと審査体制について
 任期制における再任審査手続きと審査体制について、審査の客観性、公正性、透明性を保障する観点から以下の点を要求する。
○審査機関が審査内容と審査基準とにもとづいて構成で客観的審査が行える資格を備えており、かつ審査が公正に行われたかどうかを検証できることが再任審査の条件である。この当然の原則を確認していただきたい。
○「教員人事委員会」の構成及び再任審査決定手続きについての規程、学則案を提示するよう要求する。
○また、説明文書「任期の再任審査」では、「必要に応じて人事委員会のもとに部会を設置し、審査する」とあるが、部会の設置要件、構成、組織及び審査権限、手続き等に関する考え方及び規程、学則案を提示するよう要求する。
○「教員人事委員会」は学長の諮問機関とされるが、学長は「教員人事委員会」メンバーに加わるのか?
○「学長は人事委員会からの再任の適否の判定結果を確認し、理事長に申し出る」(「説明文書」)とされているが、「確認」の意味は、「教員人事委員会」による適否の判定結果を翻すことなく自動的に理事長に申し出るということか?
○「教員人事委員会」は再任に関してその適否のみを決定するのか?
 教員説明会において「教員人事委員会」は教学組織より2名、経営管理組織より2名、学外より2名の組織となると説明されている。しかし、「教員人事委員会」の構成、審査手続き等については提示されておらず、再任適否の決定権限を持つと想定される重要な委員会についてその制度機構があきらかにされていない。
 また、教員の業績評価について説明された「教員人事委員会」が客観的評価を適正になしうるかはきわめて疑問である。説明された「教員人事委員会」の構成が大学自治の原則にてらし、教学の自律性を確保するとともに、公正かつ客観的機関たりうるかどうか疑問である。この点は、教員評価の結果をどのように扱うかにかかわり、また、「部会」の位置づけ、権限にかかわる。これらの点についてあきらかにすることが必要である。
○学長による審査手続きの省略は恣意的な再任拒否を許す制度上の危険をもつものであり、容認できない。このような規定をなぜ設けているのか理由をあきらかにするよう求める。
 任期規程案では、「学長が特に認めた場合は、教員人事委員会における審査の一部又は全部を省略できる」としている。主観的意図はどうあれ、この規定は、学長が一切の審査手続きを省略して再任の適否だけを人事委員会に求められるようにしており、再任審査の恣意的運用を制度上で可能にしてしまう。
○再任の適否に関する判定理由を再任申請者の求めに応じて遅滞なく示すこと。
 なお、判定理由の提示を求める請求は「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第3条にもとづき、再任否の場合、請求理由を付す必要はない。そもそも再任の判定理由は教員の大学における職務・業績をみるものとして、本人の求めに応じ適否にかかわらず示すべきものである。
 また、後述するように、再任審査は降任や新たな任期期間における年俸の増減にかかわるものであり、その審査内容の透明性が厳密に保障されるべきである。
○この点から、判定理由の提示内容には、任期規程案に示された審査項目の全内容がふくまれるべきである。
○言うまでもないが、以上の開示内容は文書において示されるべきである。
○説明文書「任期の再任審査について 4 異議の申し出」における「審査の結果を知り得た日」とは曖昧であり、再任申請者にたいする審査結果通告日を規定すべきである。
○前項「異議の申し出」について調査・確認及び報告を行う組織が「教員人事委員会」とされているのは不適切であり、審査結果及び判定理由の適切・公正を検証するためには別個の組織によって異議申し出の審議がなされるべきである。
 2月28日教員説明会において、「教員人事委員会」での調査・確認を経た上で別途審議を考えると説明されたが、そうであれば、異議申し出を扱う組織、プロセス全体を示すべきである。
○再任審査の申請時期、期限及び再任審査期限(「最終年度の夏頃」)の整合性と妥当性をはかること

B 審査内容と基準

◎任期規程案及び説明文書「任期の再任審査について」における審査項目相互の関係、ウエイト、設定理由があきらかでない。
 教員評価結果以外の審査項目を付加することによって、業績を評価しうる「現場」から離れた「評価」によって審査結果が左右される可能性が増す。
○「本人が関係している組織の長」は教員評価における2次評価者であり、その評価は教員評価に反映されている。2次評価者にあたる組織の長の「意見」と2次評価とはどのように関係しているのか? 評価のダブルカウントではないか?
○「本人が関係している組織の長」は複数存在しており、その意見は「評点」としてどのようにカウントされるのか?
○「本人が関係している組織の長」の「意見」はその職責において管轄する事項について評点化しうるような段階をつけて記述されるのか?
○「教員評価の結果についての学長の意見」とは、教員評価のS~Dのランク付とどのように関係するのか?
○再任審査の性格にてらし審査項目、審査基準はあらかじめ明示的に示されるべきであり、「その他学長が指定する事項」を設けることは審査項目の恣意的操作を可能にする。このような審査項目を設ける理由は何か?
○また、任期規程案では、「学長が特に認めた場合は、審査する事項の一部又は全部を省略することができる」としており、審査項目全体が学長裁量により自由に操作できる規定となっている。再任の可否がもたらす重大な結果を考えるなら、このような規定のもつ危険性を座視することはできない。
○再任の判断基準が任期期間中において「普通にやって来られたかどうか」であるならば、任期期間中の業績評価が問われるべきであり、「次期任期に向けた取組計画」を審査項目に加えることは、業績評価に拠らず、検証されていない項目をふくむことになる。再任審査を歪めることになり不適切である。
○各審査項目間の関係、評点としてのウエイトはどのように考えているか?
◎再任可否の判断基準を任期規程に明記するよう要求する。
 再任可否の判断基準を規程上で明示することは有期労働契約において使用者側に課せられた義務である。(「使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」厚生労働省告示第357号)「普通にやっていれば再任する」という基準を任期規程において明記しなければ、この告示に背馳することになる。
◎説明文書「任期の再任審査について 3 再任基準等」について以下の諸点の説明を求めるとともに整合性を質す。
○「一定水準以上を得点した者を再任適任者とする」とあるが、「一定水準」とはどのような水準か? 「普通にやっていれば再任」という考え方にてらし、水準の内容を明確に示すよう要求する。
○また、その水準は得点として表示されるとしているが、そうであるとすれば、あらかじめ各審査項目の評点配置、得点基準が示されるべきである。
○教員評価の評価結果以外の評点は相対評価で行われるのか?
 絶対評価で行われるとすれば、教員評価の評価結果を相対評価とすることと不整合になるのではないか?
○教員評価の評価結果をS~Dの相対評価で示すことと再任の可否を一定の基準によって判定することとはどのように関係しているか?
○相対評価による評点化は上位から下位の枠づけられた分布を実現するものであり、一定水準をその枠内に設定するかぎり必ず再任不可の者が生じることになる。「普通になっていれば再任」という考え方と相対評価による再任の可否判定は矛盾するが、制度上での整合性ある説明を求める。
○「職位別に一定水準以上を得点した者を再任適任者とする」としているが、この場合に判定されるのは、その職位において再任可ということである。逆に、その職位において再任否となった場合には、教授、準教授においては「降任」判定を意味することになるのか?

C 期間と再任回数

○助手、準教授について再任回数をかぎる合理的根拠は存在しない。現行制度から不利益変更にあたるこうした限定についてその根拠を説明するよう要求する。
 とりわけ、助手の再任回数を原則1回とし、しかも任期3年以内としていることは容認できない。また、助手において、博士号取得の有無にかかわらず任期3年以内としていることも差別的処遇である。当局案による再任審査のスケジュールによれば、任期最終年度の評価はできないため、2年間の評価によって再任の可否が判断されることになり、このような制度設計では助手が大学において業績を積む環境は著しく阻害される。
○博士号を持たない準教授、教授が簡易審査によって3年任期を5年に任期に延長できるとする法律上の根拠について説明を求める。
○任期規程案3条、4条における休職中、育児休業又は介護休業中の任期付教員の再任回数について、恣意的運用を避けるために別途規程を設けるべきである。

D 再契約における条件設定

○新たな任期期間中の年俸等の条件はどのような基準にもとづいてどのように決定されるのか? またこの条件設定と再任審査とはどのように関係しているか?
○「普通にやっていれば再任」という考え方に立つならば、再任にさいしての減俸とされる根拠は何か?
 減俸しての再任は「普通にやっていても」賃金を減額することになり、再任の考え方と矛盾することになる。
○再任決定にもとづく新たな労働契約の締結は、教員が著しく不利な雇用・労働条件に同意せざるをえない恐れがある。再任決定にもとづく労働契約においては、あらかじめ規程上で明示された事項を除き、再任時における雇用・労働条件を引き下げぬよう定めるべきである。


投稿者 管理者 : 2005年03月09日 00:05

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