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2005年03月12日

成果主義賃金について

成果主義賃金導入のポイント

FujiSankei Business i(3/11)

 ◆制度の仕組み整備
 成果主義賃金制度の導入企業が相次いでいる。導入率は調査機関によって異なるが大体六割から八割といった高い水準にある。近年、成果主義の是非をめぐる議論が盛んであるが、趨勢(すうせい)としては導入の動きがとどまる気配はない。
 いうまでもなく成果主義は従来の年功的な賃金と違い、毎年の評価によって賃金が増減し、社員の生活にも大きな影響を与える。導入後二-三年もすると同期入社組の間でも年収格差が生まれる。もちろん、本来の成果主義が機能しているという前提であり、中には上司が部下間の評価差をつけるのを嫌がり、結果的に以前の年功型賃金以上に同年齢間の賃金格差が縮小したという企業もある。
 先日、取材先の大手企業の人事部長が「年収の格差が開きすぎてとまどっている」という感想を漏らした。聞けば三十代後半で四百万円の格差が生じているという。この企業だけが例外というわけではない。成果主義導入後三年目を迎える大手商社は、大卒同期入社の三十五歳でやはり三百万-四百万円の年収差が開いている。大手精密機器メーカーの四十代以降の管理職層では五百万-七百万円の格差がついている。
 とくに格差が著しいのは賞与である。従来は月額給与の五カ月程度と固定していたが、今や個人・部門業績が反映され、毎年大きく変動する。いくらもらえるか予測できないために、多く支給された年に住宅ローンを繰り上げ返済する社員も出始めている。
 成果主義の浸透に伴い、必然的に年収差が拡大する。そのこと自体は問題はないが、注意すべき点がある。一つは、もちろん同期に比べて年収が多い社員から不満が出ることはないが、少ない年収の社員が甘受できるかどうかである。不満があるとすればその矛先は必ず評価制度や上司の評価姿勢に向かう。評価の仕組みが不備な状況での格差拡大は社員の士気に大きな影響を及ぼす。評価者の説明能力の向上策など制度のメンテナンスを常に行うことは不可欠である。
 ◆モチベーション喚起
 もう一つは賃金原資が十分に確保されているかどうかである。業績が好調でベースとなる社員の賃金が安定している企業は問題ないが、業績が低迷し、賃金原資を減らさざるをえない状況下での極端な格差は社員の反発が必ず発生する。ベース賃金の削減で社員から怨嗟(えんさ)の声が上がり、モチベーションの低下を招いた企業も少なくない。とくに近年、労働分配率は低下傾向にあり、個別賃金水準も下降の一途をたどっているだけに気になる点ではある。
 三つ目は成績不良者に対するセーフティーネットの構築である。成果主義は成績優秀者と成績不良者の存在を鮮明化する機能を持つ。成果主義の母国アメリカでは成績不良者を解雇することで組織の活性化を維持しようとする。内部に成績不良者を抱え込むことはコストの負担はもちろん、社内のモラールダウンにつながりかねないというリスクもある。
 どちらの道を選択するかは個々の企業の問題である。仮に安定雇用の看板を掲げるのであれば、人的資源の再活性化のための職種転換教育は不可欠となる。さらに社員が自律的にキャリアを磨く機会を用意するなど、モチベーションを喚起するためのセーフティーネットの構築が必要になるだろう。


投稿者 管理者 : 2005年03月12日 00:52

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