個別エントリー別

« 神戸大学教職員組合、外国人教師問題と特任教員制度導入にあたっての組合のとりくみについて | メイン | 東京都立大学独文学専攻解体に際して -- 中間報告 »

2005年03月15日

埼玉大、労組の看板はずせば会おう 田隅学長が文書で団交回答

埼玉大学の将来を考える会
 ∟●労組の看板はずせば会おう 田隅学長が文書で団交回答

労組の看板はずせば会おう 田隅学長が文書で団交回答

「法人化後の学長の権限とその行使に関する見解」について、団体交渉の場で学長自らが説明することを要求していた埼玉大学教職員組合(林量俶委員長)に対して、田隅埼玉大学長が、団体交渉の席で直接話し合うことはしないが、「組織代表という資格を外した形の教職員個人またはグループとは、直接話し合う用意はある」と書面で回答していることがわかった。

この文書は2005年3月2日の団体交渉で、津田理事から林執行委員長に手渡された。文書の骨子は以下のとおり。

①学長見解については1月12日の第6回団体交渉で津田理事が十分説明したと聞いているので、私(学長)からこれ以上申し上げることはない。
②津田理事に交渉権限を委任しているにもかかわらず、私(学長)が説明しなければならない理由は何か。
③「見解」については、仕組みとして説明しているだけで、それ以上説明申し上げることはない。
④しかし、私(学長)は、組織代表という資格を外した形の教職員個人またはグループとは、直接話し合う用意はある。
⑤「見解」に誤りがあると組合が主張するのなら、その証拠となる文書類を提出されたい。

国立大学法人埼玉大学の使用者(学長)が労働組合に対して、労組とは団交の席で語り合わない、用があれば労組の看板をはずした個人・グループとして会いに来い、そうすれば会って直接話し合うにやぶさかではない、と文書で回答したわけだ。

労働組合法は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なしに拒むことを、不当労働行為として禁じている。この意味で、労組への学長回答は、労働組合の団体交渉権に対する揶揄であり、埼玉大学労組・林執行部に対する嘲笑を感じさせるものになっている。林執行部は急ぎ学長文書の内容の評価と、それへの対応を迫られることになった。①見解を示した②反論はなかった③よって見解は認められた、というのが田隅式三段論法といわれているからだ。

 <解説>法人化からまだ日が浅く、労使双方の不慣れと無知による交渉の場での齟齬が、今後とも発生することになるだろう。
 すでに非常勤講師料の削減を理由とした労働問題がこじれかけた。この問題は埼玉大学と東京公務公共一般労組との和解で解決した。このときの準備書面(東京丸の内法律事務所の永野剛志、吉田ゆう子両弁護士、丸市綜合法律事務所の二宮照興弁護士が代理人となって2004年12月24日、東京地方労働委員会に提出された)で国立大学法人埼玉大学は、非常勤講師が「授業の委嘱形態、業務内容、『非常勤』という特殊性からしても、そもそも『労働者』に該当するかどうか疑問なところではあるが、その点についてはここでは言及せず、以下……」と不必要な言辞を弄する脇の甘さを見せた。
 労働基準法は、労働者を、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定義し(第9条)、賃金を名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定義している(第11条)。さらに埼玉大学自身が、国立大学法人埼玉大学非常勤教職員就業規則で、非常勤講師を「授業を業務とする非常勤教職員」とし(第2条2項)、非常勤教職員を「本学に勤務する常時勤務を要しない教職員」と定義している(第1条)。以上のような定義のもとで、非常勤講師は労働者ではない、と主張しようとすれば、相当の工夫が必要になったことだろう。
 一方、使用者側から学長団交拒否の文書による回答を受けたことを、埼玉大学労組はいまだに労組員に広報していない。日本国憲法第28条が勤労者の団結する権利、団体交渉、団体行動の権利を保障しているのはなぜか。労働者に対して圧倒的な力を行使できる使用者に対抗するために、労働者が団結して、使用者と団体交渉する権利を認めているわけだ。黙って文書を受け取り、その後も沈黙を続けている労組側にも、団体交渉の場が労働条件にかかわる一切の事柄について労使が切りむすぶ真剣勝負の場であるという、きびしい認識が欠けているのではないか。
 「私人には会うが労組員には会わない」という法人大学運営責任者の発言の正当性をめぐって、労使とも専門家の意見をよく聞き、納得できる結論を得てもらいたい。また、その過程で、双方とも将来のために、交渉のルールのABCをよく学んでほしい。


投稿者 管理者 : 2005年03月15日 02:03

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/870

コメント