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2005年04月22日

世界平和アピール七人委、政府に訴え

JanJan(2005/04/21)

 東京・神保町にある学士会館で20日午後2時、「世界平和アピール七人委員会」が2つのアピールを出し、報道陣が集まった。

 世界平和アピール七人委員会とは、1955年からこれまで73回にわたり、国内・国外にアピールを発してきた日本の“知”を代表する方々の集まり。最初の委員は、平塚らいてう氏、湯川秀樹氏など7人、その後参加された委員には、川端康成氏、朝永振一郎氏、大河内一男氏、井上靖氏、桑原武夫氏、永井道雄氏、平山郁夫氏などがおられる。

 現在の委員は、伏見康治氏(物理学、大阪大学・名古屋大学名誉教授、元日本学術会議会長、元参議院議員)、武者小路公秀氏(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長)、土山秀夫氏(長崎大学名誉教授・元学長)、大石芳野氏(フォトジャーナリスト、東京工芸大学教授)、井上ひさし氏(作家)、池田香代子氏(ドイツ文学翻訳家・口承文芸研究家)、小柴昌俊氏(平成基礎科学財団理事長、東京大学特別名誉教授、2002年ノーベル物理学賞受賞)の7人である。

 アピールの主な内容は以下の通りである。

●核兵器使用60周年にあたり、改めてその実態、非人道性を重視するよう日本国民と日本政府に訴える

 核兵器の非人道性、特にそのむごたらしい被害についての情報は、日本に集中しています。核兵器を廃絶させるため、日本の市民には、これを直視し、世界にむかって発信する責務があります。

 私たちは、日本の心ある市民一人ひとりが、将来の世代と、全世界の人たちに、最も残虐な原爆被害の姿を大胆に展示することを含め、「人類は核兵器と共存できない」という信念をもっと広める努力をするよう訴えます。

 これを同時に日本政府が、新アジェンダ連合((核兵器廃絶を目指し、推進する中堅クラスの7つの国家、アイルランド、スウェーデン、エジプト、南アフリカ、ニュージーランド、メキシコ、ブラジルの連合を言う)などとの連携を一層、強めるとともに、核の傘(非核兵器国が核兵器保有国の核抑止力に依存する状態)に依存した政策を改め、日本を含めた東北アジアの非核兵器地帯(幾つかの提案がある。例えば、『スリー・プラス・スリー』案。これは、韓国と北朝鮮による『朝鮮半島非核化宣言』<91年12月>に日本の非核化三原則を組み合わせ、これら3カ国からなる非核兵器地帯を設置し、核保有国である中国、ロシア、米国の3カ国は、これら3カ国に対しては核攻撃を行わない<消極的安全保障>という法的約束をおこなうのが骨子となっている)を実現させるための努力を速やかに開始し、多国間の平和的協議を積極的に推進するように求めます。

●核不拡散条約再検討会議に際し、核軍縮への具体的努力を求めるアピール

 核不拡散条約(NPT)が発効して今年で35年になります。本条約には、核兵器保有5カ国の核保有を認める一方で、その他の加盟国の核兵器保有を禁止するという不平等性を持っているとの批判が根強くあります。しかし、現在すでに約190カ国が批准書を寄託している、核軍縮を目指す唯一の重要な国際条約であります。

 2005年5月の再検討会議を目前にして、この条約における「核廃絶の約束」が、死文化させられかねない状況に陥っていることに、私たち世界平和アピール七人委員会は深い危惧を感じております。私たちの世界平和アピール七人委員会は、50年前の1955年に、核兵器開発競争が深刻に進む中で、ラッセル・アインシュタイン宣言に呼応して結成され、60年前の被爆国・日本から、世界に向かって平和を訴え続けてきました。

 私たちは、今年5月のNPT再検討会議に際し、核兵器廃絶に向けての実質的な成果を生み出すために、核兵器保有5カ国が真摯な努力をされるよう、次の通り要請します。

1.条約交渉における国際的約束の履行を
 (略)2005年5月の再検討会議では、「保有する核兵器の完全廃棄を明確に約束する」との最終文書にも合意しました。(略)私たちは、その忠実な履行をあくまで求め、核兵器完全廃棄の確認を求めます。

2.核不拡散のためにも核軍縮を
 (略)核保有国自体が核兵器依存の政策を改めない限り、一部の非核兵器保有国がこれを見習い、あるいは対抗することによって、核兵器の拡散はむしろ増大すると考えるからです。核兵器保有国が率先して核廃絶への具体的な道筋を示すことこそ、何よりの核拡散防止策なのです。私たちは核兵器保有国が時期を明示した核兵器廃絶への道筋を明らかにするよう求めます。

3.「後戻りしない」核軍縮政策の確認を
 私たちは冷戦終結後の現在でも、核兵器保有国が戦略核兵器を使用可能な状態におき続けると共に、「使える兵器」としての小型核兵器の研究と開発を進めていることに抗議し、直ちに中止するよう求めます。

 核不拡散条約には、重要な原則として、核軍縮の不可逆性を守ることが謳われています。米国やロシアによる新たな小型核兵器の研究や米国での地下核実験再開に向けた動きは、明らかにこの趣旨に逆行するものです。私たちはそうした計画を永久に破棄することを求めます。

 この日の出席者は、伏見康治氏、武者小路公秀氏、土山秀夫氏、池田香代子氏、小柴昌俊氏の5氏。司会は事務局長の小沼通二氏(慶應義塾大学名誉教授)だった。出席した委員からは、2005年5月の再検討会議を目前にして何らかの行動を起こさねば、との想いが伝わってきた。最高齢の伏見康治氏はこう話している。

 「全人類の運命の問題。何も具体的にできないが、若い皆さんのお力を借りて、会が催され、参加させていただいている。以前の七人委員会には、湯川秀樹さん、朝永振一郎さんなども参加され、核廃絶にむけて努力されていた。一時は難しい時期もあったが、最近、盛り返すことができて嬉しい。人類の運命を左右する問題であり、強い関心をもっていただき、核兵器廃絶に向けて多くの皆さんにこのことを知らせて欲しい」

 核廃絶への道のりは厳しいが、多くの市民の力の結集で少しずつ状況を動かすしかないだろう。


[関連ニュース]
世界平和7人委 核保有国に軍縮要求 NPT再検討会議を控え(西日本新聞4/21)

投稿者 管理者 : 2005年04月22日 00:23

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