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2005年04月26日

横浜市立大学、教育研究費について思うこと

■横浜市立大学教員組合、教員組合週報組合ウィークリー(2005.4.25)より一部抜粋
大学改革日誌(永岑三千輝氏)-最新日誌(4月25日)を経由

教育研究費について思うこと

吉岡直人

 3月18日に開かれた法人組織説明会で、17年度の「教育研究費」について説明があった。「定額基礎分」としての一律30万円にも驚かされた(「低額」の間違いではないのか?)が、もっと腑に落ちなかったのは、「研究戦略プロジェクト事業」のほうである。そこには、(a)共同研究推進費、(b)若手研究奨励費、(c)地域貢献促進費、(d)先端的医科学先行的研究という4つの項目が並べられている。私が応募できそうなのは、(a)共同研究推進費ぐらいなのでその中身を見た。そしてもっと驚いた。重点研究分野として、①ライフサイエンス、②先端医療、③ナノテク・材料、④環境、⑤産業・地域再生、⑥都市経営・まちづくり、⑦文化・教育の7つが限定されているではないか。私は地震の震源のメカニズムに関連して、石や砂を使った実験をしており、どう強引にこじつけようとしても、上記の重点研究分野には当てはまりそうもない。どうやら応募を諦めざるを得ないようだ。しかし、これでは「競争的資金」といいながら、初めから競争に参加させない、差別的な研究費の配分と言わざるを得ないではないか。
 私は幸運にも今、科研費の恩恵に浴している。それだけではない、ここ16年の間に科研費を含め、13年間も外部資金の恩恵に浴してきた。国や学界は私のやろうとしていることを、やる価値があると認めてくれている、と私は思っている。ところが、この大学では、私がやりたいと思っている研究は意味がない、と考えており門前払いなのである。この落差に愕然とした。このようなくやしい思いをしている者は私ばかりではあるまい。
 私の敬愛してやまない寺田寅彦は、70年以上前に次のような文章を書いている。
「その当代の流行問題とは何の関係もなくて、物理学の圏外にあるように見える事柄でも、将来意外に重要な第一線の問題への最初の歩みとなり得ないとは限らない」と。そして当時はまだ誰も目を付けていなかった、今日「複雑系の科学」と呼ばれる分野の問題に、一人で果敢に挑戦したのだ。
 「学則」第1条(目的)から「真理の探究につとめ」と「世界の平和と人類の福祉に貢献し」という文言が消え、「国際都市・横浜とともに歩み・・・市民・横浜市・市内産業界及び医療の分野をはじめとする多様な市民社会の要請に応える」という、やたらに「横浜市」のみに擦り寄った(と私には思われる)文言が並べられるようになった現状では、横浜市立大学は、もはや寺田寅彦のような大きな視点とは無縁の存在になったようだ。


投稿者 管理者 : 2005年04月26日 00:01

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