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2005年04月26日

中教審部会、理工農系大学院教育 方向性示す

科学新聞(平成17年4月15日号)

研究者養成か
技術者育成か 専攻単位で明確に

 研究者を育てるのか、高度専門職業人を育てるのか、各大学院は専攻単位で明確にしなければならない。また、修士課程と博士課程前期は幅広い知識と教養、博士課程後期は優れた研究者養成。これが、中央教育審議会大学分科会大学院部会の理工農系ワーキンググループが整理した理工農系大学院教育のあり方。14日の大学院部会に報告した。文部科学省はこれを受け、大学設置基準の改正などを進める。また大学院部会は医療系、人文社会系の報告を受け、4月下旬には大学院の教育研究機能の強化方策について中間報告をまとめる。今年度中に作成する大学院振興計画に反映されるという。

 理工農系については、これまで研究者として自立する能力を育て、特定専門分野の深い研究を行い得る研究者の養成が大学院の目的だったが、現在は、産業界などで活躍する高度な技術者等、社会の様々な分野で活躍する知的な人材育成も求められるようになってきた。そこで各大学院は、研究者養成を主な目的とするのか、高度な研究能力で社会に貢献できる人材の養成を主な目的とするのかを、教育内容も含め専攻単位で明確にしなければならない。専攻の規模によっては、前期・後期を通じて研究者養成のためのプログラムと、社会に貢献する人材養成プログラムを併存させることもできる。
 また、研究者の活動領域が広がっていることから、研究者養成を主な目的とする場合でも、専門分野だけでなく関連領域も含めた幅広い知識や社会の変化に対応できる素養を身につけさせることが重要。高度な技術者等の養成が主な目的の場合は、授業科目の履修と論文指導だけでなく、知識を実際に活用していく訓練が必要。
 これまで多くの理工農系大学院では、学生教育と教員の研究が混然一体となって行われ、学生に対する教育が研究室の中で完結する手法がとられてきたが、この方法だと個々の教員の指導能力に依拠するため、場合によっては、専門分野のみの閉鎖的な教育になり産業界等で求められる人材が育成されていなかった。
 そこで修士課程と博士課程前期では、専門知識と幅広い教養を身につけさせるため、各研究科や専攻で組織的に教育プログラムを実施する必要がある。各専門分野に関する専門的知識を身につけるための体系的な教育プログラム、様々な教員と関与するなどして幅広い知識を身につけるための関連領域に関する教育プログラム、毎週学生にテーマを与え実験・実習・ホームワーク・フィールドワーク等と講義とを組み合わせた効果的な授業などの自立した研究者や技術者等として必要な能力や技法を身につけるための教育プログラムなどが必要。また、外国語はもちろん倫理教育なども必要。
 博士課程後期は、優れた研究者を育成するため、前期と合わせた5年間の体系的な教育課程を編成し、特に教員の研究活動への参画などが必要。また、サマー・インスティテュートや学会等、一定期間外国等で教育やトレーニングを受ける機会を提供するなども有効。
 単位は、実験・実習と講義・演習に分かれている従来の算定方式から、講義と実習を合わせて一単位にするなど、大学設置基準を改正するとともに、取得すべき総単位数についても見直す。また、前期・後期を一体的に教育する場合、必要に応じて修士論文の代わりに一定の学修成果を前期修了をもって前期修了を認める。
 論文博士制度については、廃止の方向で検討。企業や公的な研究所等で経験を積み、その成果を基に博士の取得を希望する人が相当数いることや、アジアには自国で研究を続けその成果を基に日本の博士取得を目指している人もいることから、廃止までの条件整備や期間について検討するとともに、社会人等を対象に一定の体系的な教育を提供し、学位授与に結びつける仕組みについて検討する。
 教員の教育・研究指導能力向上のために、教員研究などのファカルティ・ディベロップメント(FD)を適切に実施するとともに、研究実績だけでなく教育実績や教育能力も教員の評価に反映する。
 学生の流動性を高めるため、他大学や他分野からも受験しやすいように入試科目を整備するとともに、Eラーニングによる単位互換、補完的な授業科目の設定など、多様な学修歴を持つ学生の受け入れを促進する。
 学生の支援については、博士後期では自立して生活できるよう支援を充実。大学院に進学する前に経済的支援が決まるような仕組みが必要。


投稿者 管理者 : 2005年04月26日 00:01

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