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2005年04月05日

「意見広告の会」、国立大学授業料標準額値上げに改めて抗議する

■意見広告の会ニュース 号外39(2005年4月1日)より

国立大学授業料標準額値上げに改めて抗議する。

「国立大学法人法・意見広告の会」事務局

 3月31日の文科省令により、国立大学授業料の標準額の値上げが決定した。

 この標準額の値上げ幅は、全体として国立大学法人への運営費交付金の削減額とほぼ同額であることを、私たちの「意見広告」は指摘してきた。
 すなわち、日本政府は我が国の高等教育・研究費の減額分を学生・家計負担者に新たに転嫁したのである。私たちは、この事実を怒りをこめて改めて指摘する。教育の機会均等原則のなし崩しをもたらす今回の措置は、我が国の将来に大きな禍根をもたらすものである。それとともに今回の値上げが、2003年国立大学法人法案国会審議時の大臣・副大臣の答弁、及び衆参両院の付帯決議に対する違約となることを、糾弾せざるを得ない。
 また「国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局声明」の指摘にもあるように、今回の値上げが、(1)文科省の概算要求に盛り込まれていなかったにもかかわらず、12月の政府原案で突如出現したこと、(2)国会における2005年度予算審議を待たずに、文科省から標準額改定の通知が各大学になされたこと、(3)受験生・合格者は、各大学の授業料が未決定の状態のまま受験し、入学手続きを取らざるをえなかったこと等、いわば社会の基本ルールに背馳するような形で大学・受験生・在学生に押しつけられたことも、見逃すことができない。

 このような政府・文科省・財務省の失政に対する批判は、私たちの意見広告、或いは4月1日付けの「首都圏ネット声明」、国会審議時における野党側からの問題点の指摘等々によって鮮明なものとなったように思われる。いま私たちはむしろこの間の「意見広告運動」の中で現出した問題点を指摘したいと考える。
 まず「国大協」或いは多くの国立大学法人役員会が、口では「値上げ反対」「苦渋の選択」を唱えながら、実においては政府・文科省に抵抗を試みず安易に標準額通りの値上げに追従していったことは、法人化1年目にして早くも国立大学法人の歴史に汚点を残す結果となった。授業料は経年累積的とは言っても、今や国立大学法人は自主的に授業料を決定できる。経年累積を自主的に解消することも可能なのである。値上げ以外にいかんともしがたいと言うのであれば、各法人はそのいかんともしがたい財政状況を公開し、必要最低限の値上げ措置の、その必要性の説明義務がある。ところが多くの国立大学は、特段の説明もないままに、標準額と全く同様の値上げを一斉に行っている。「苦渋の選択」は口先ばかりと批判されても仕方があるまい。
 また、我が国の民主主義の守り手の重要な一角を占める労働組合について述べると、国立大学の教職員組合のナショナルセンターとも言える部分が、「授業料値上げ・交付金削減」反対のためにほとんど有効な行動を取り得なかった事も遺憾と言わざるを得ない。一方の当事者である国立大学の教職員・学生たちに、主体的な当事意識が希薄であったことも残念なことであった。

 当然の事ながら以上のような現象については、私たちの力量不足の結果として、我々「意見広告の会」も深く反省せねばならない。

 しかしながら今回の意見広告は、「授業料値上げ・交付金削減」に反対する唯一とも言える全国規模の運動として、まだまだ不十分とは言え、少なくない成果も収めた。手前味噌になることを恐れずに言えば、国会で政府・文科省・財務省を追及する野党議員の手元には、しばしば私たちの意見広告掲載紙があった。値上げを批判するマスコミ論調にも、私たちの「意見」の影響が大いに認められた。心ある大学人、特に責任ある地位の人々の中から多くの支援が寄せられたことも特筆すべき事柄の一つである。また私立大学をも視野に入れた教育の機会均等、学生・家計の負担減、高等教育・研究費に対するOECD諸国並みの政府支出要求等々で野党の政策の足並みがそろったことも、今後の私たちの運動の大きな拠り所となると思われる。
 値上げに踏み切った各国立大学も、昨年12月、本年1月の段階では単に「値上げ決定」としていたが、日が経つにつれ「標準額の改定がなされた場合」という条件付き決定に内容を変更させていった。情けないとも言えるが、このようなことも「批判」無しでは生じ得ない事柄なのである。

 来年度予算案以降も、政府・文科・財務は、これまで2年ごとに繰り返してきた入学金・授業料の値上げを繰り返す恐れがある。私たちは、私たちの運動によって今後の学生納付金負担増に一定の歯止めを掛け得たものと考えているが、近頃の政府・財務はなりふりを構わない。夏の概算要求を考慮すれば、来年度の入学金の値上げは目前に迫っているとも言える。今後更に値上げが続けば、負担の限界を超えてしまった、或いはそんなシステムに付き合うことが馬鹿馬鹿しくなった学生・家計の大学教育からの脱落が進むであろう。
 彼らは希望を欲しているのである。

…………………………………
 なおHPをご覧下さればお分かりになるように、現在「意見広告」への賛同金は、300万円ほど不足の状態です(事務経費等は一切ナシとした上、ぎりぎりの値引き交渉もしておりますので、この程度になります)。今後のためにも、一層のご支援・ご賛同をお願い致します。


投稿者 管理者 : 2005年04月05日 00:01

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