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2005年04月05日

国立大学の授業料 “違い”生んだ個別事情

東京読売新聞(2005/04/04)

 【国立大学の授業料】国が一律に定めてきたが、大学の判断で改定できるようになった。
     ◇
 これまで一律だった国立大学の授業料に、新年度から違いが出た。大半は国が定める標準額の引き上げに合わせたが、据え置きを決断した大学や、標準額を上回る大学院も登場した。値上げ派にも、据え置き派にも、様々な事情がある。(解説部 中西茂)
 ■不満 据え置きも交付金削減
 国立大の授業料は、大学が法人化された昨年から、国が標準額を定め、上限10%までは、個々の大学の判断で決められるようになった。下限に基準はない。
 実際には、89校中81校が標準額通り、52万800円から53万5800円に引き上げたが、横並び意識の表ればかりとも言えない。
 標準額の引き上げは国の判断。国は、標準額を上げれば、各大学に支給する補助金(運営費交付金)を減らすのが原則というルールを作った。引き上げ分が大学の収入に結びつかず、据え置いても国からの交付金が減るという仕組みが、大学側の不満になっている。
 全国立大で最後となる先月15日に値上げを決めた弘前大(青森県)は、「不況を反映して、本学の学生に授業料免除者が激増しているが、将来にわたって大学が減収に耐え続けるのは不可能」と結論づけた。授業料免除を申請する学生は、全学生の1割を超える。
 東京大は、1000人近い留学生を抱える博士課程だけ授業料を据え置いた。「競争相手である欧米の有力大学では、博士課程の学生には潤沢な奨学金が支給されており、授業料を徴収している例は少ない」と発表の際の学長見解は説明。経済学部長の解説も付けて国の姿勢を批判した。
 一方、全学的に据え置いた佐賀大は、付属病院の経営が黒字という好材料もあるが、コピー用紙の裏面利用など、徹底した経費削減を掲げる。また、専任教員が可能な限り授業を持つ。
 逆に、標準額を上回る二つの大学院は、高度な職業人を養成する専門職大学院。「他より手厚いサービス」を強調している。
 ■歴史 国立と私立格差縮小 
 新制大学が発足した1949年、国立大の授業料は3600円だった。72年にはこの10倍になり、以降はほぼ1、2年置きに値上げが繰り返されてきた。
 学費の問題は、有力私立大を中心に、60年代の大学紛争の火種にもなった。ただ、国立大に限ると、63年の1万2000円から、72年に3倍に引き上げられるまで8年間据え置かれた時代がある。
 物価が上昇した時代から低成長・デフレ時代に移っても、国立大の授業料が引き上げられてきたのは、教育条件の差を縮めてほしいという私立大側の強い要請を受けて、国が格差是正策を取ってきたからだ。
 新年度の国立大の授業料(標準額)は、30年前(3万6000円)の15倍近く。文部科学省によると、30年前の私大は平均額で18万2677円、昨年度は81万7952円だ。私立と国立の格差は5・1倍から1・6倍まで縮まった。
 ■配慮 奨学金制度関心高まる
 値上げした大学も、学生負担の軽減のために、様々な配慮をする。
 今年度から、山口大では、成績優秀者への授業料全額免除を全学部で制度化。島根大では、在学中の利子の全額を大学が負担する授業料融資制度を作った。
 お茶の水女子大(東京)では、大学職員らで作る別組織が、成績優秀者への奨学金を贈るとともに、付属の保育施設に子どもを預ける大学院生に対しては、子どもの保育料の半額を互助組織が負担する。
 奨学金制度への関心がこれまで以上に高まることは確実だ。独自に、成績優秀者への制度を設ける大学はほかにも出てくるだろう。
 大学の財政問題に詳しい東大の小林雅之・大学総合教育研究センター助教授によると、同じ国立大でも、授業料収入が大学財政に占める割合には、大きな開きがある。文系の小規模大学は、特にその割合が大きい。外部から研究費を獲得する面でも厳しいだけに、大学運営の難しさがあるという。
 その上で、小林助教授は「国立大には、私立大より、教育の機会均等を確保するという役割が大きいだけに、成績優秀者への奨学金を充実するだけでは十分とは言えない」と指摘する。
 一律だった授業料に差が付いたことで、米国のように高負担の代わりに奨学金も充実した大学が、近い将来わが国にもお目見えするかどうか――。ともかく国立大のかじ取りが、難しい時代になったことは間違いない。
 
 ◇国立大の新授業料
58万9300円
 東北大会計大学院
57万2400円
 東京農工大技術経営研究科
53万5800円(新標準額)
 81大学
53万400円
 愛媛大=来年度は新標準額
52万800円(据え置き)
 小樽商科大=後期は新標準額
 佐賀大
 北海道教育大修士課程
 北見工業大、千葉大、東京大、三重大の各博士課程


投稿者 管理者 : 2005年04月05日 00:01

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