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2005年04月13日

中田市長は“官僚的不誠実回答”をいつまでくりかえすのか

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ∟●中田市長は,“官僚的不誠実回答”をいつまでくりかえすのか?

中田市長は,“官僚的不誠実回答”をいつまでくりかえすのか?

 「横浜市立大学問題を考える大学人の会」(以下,「大学人の会」と略)が,去る3月23日に「横浜市立大学の教員全員任期制・年俸制・評価制導入の撤回を求める」-研究・教育の劣化を押しとどめるために-を記者発表し,新大学(「公立大学法人横浜市立大学」)では,《・・・それぞれ誇るべき歴史と伝統を持ち性格も違う3つの学部を、特別な理念もないまま強引に1学部に統合し、教授会から人事権のみならず教学権まで剥奪するという、まともな大学がどこもしなかった暴挙をあえて行った上で、どたんばで前代未聞の教員全員任期制・年俸制・評価制の導入を強行しようとしている。これらの制度の導入は、大学の最大の資産である「優秀な人材」の確保を保証しないばかりか、大学の存立根拠である「研究・教育の自由」を奪う怖れが極めて強く、ひいては市民の「言論の自由」の侵害にも道を拓きかねない危険性を持つものであり、認め難い。》と,中田市長および横浜市官僚による横浜市大“改革”の不当性・違法性を糾弾した[脚注1]

 これに対して,中田市長は,またも,“官僚的不誠実回答”で応じた[脚注2].今回の市長“回答”は,内容的にとくにひどく,教員全員任期制・年俸制・評価制の導入強行がもたらす弊害についての「大学人の会」の指摘に何ら答えようとせず,あいも変わらず,“横浜市大改革”が《大学自らがまとめた改革案「横浜市立大学の新たな大学像について03-10-29」》にもとづく改革である,つまり,“市長のトップダウンによる改革ではない”という,とっくに論破されてしまった虚偽の主張をくりかえすのみで,「大学人の会」の要請に対してまったく答えておらず,市長公文書としてオソマツ極まりない代物になっている.それにしても,中田市長は,真っ赤なウソも,何度も言い張ればウソではなくなるのだと確信しているらしいが,このような白を黒と言い繕って恬として恥じない態度では,すでに定着しつつある“えせ市民派”のレッテルだけでなく,“不正直”政治家・“ウソツキ”政治家のレッテルを貼られても仕方がないのではないか.

 今回の「市長回答」に対しては,永岑三千輝氏がすでに反論[脚注3]しているので,ここでは,「大学人の会」に対する今までの「市長回答」を整理し,中田市長には自分の過去の行状をよーく思い出してもらうことにする.

 上で,“またも”と言ったのは,昨年の春から夏にかけて,「大学人の会」に対して中田市長が同様の“官僚的”不誠実回答をくりかえしたからである[脚注4].その経緯を,簡単におさらいしておこう.昨年2月16日付『東京新聞』紙上[脚注5]で,《「改革」に揺れる横浜市大、密室で決定 いきなり公表 トップダウン、学部統合 全教員の任期制 研究費ゼロ》の見出しのもとに,《・・・中田市長は市民派を看板に掲げるが、改革案で会見を申し入れても、会ってくれない。煙たい市民には会わない“えせ市民派”だ。十人十色の意見があってまとまらず、業界団体のない大学が一番、経費削減の標的にしやすかっただけだ》,あるいは,《・・・大衆受けするパフォーマンス的政策を打ち出す点で両者(注:中田市長と石原都知事)は似ている。反権威主義で、エリートや学歴に対して強い反発を持っている。両者とも自己を礼賛する者しか評価しないポピュリズムの権化で、不採算部門の学問・芸術の存在が邪魔になる。その延長線上に大学改革がある》などと大きく報道されて,“市民派”市長の仮面が偽りであることを暴露され,あわてた市長が,直後の記者会見(2月19日)[脚注6]で,《・・・あそこに書いてあることは、完全に誤報のたぐいである。もしも誰かが言ったことをそのまま書くのが新聞であるというならば、それは、泥棒の理屈も全部載せてあげるべきである。私は、横浜市大の負債ということを理由に改革を持ち出したことはない。密室で決めたことは一度もない。すべて皆さんも見ていたはずである。全部、議論は一字一句、私は出している。それに、トップダウンでやっていない。市大自身がこういう改革をやりたいという報告をこちらに出してきた。・・・あれは誤報である。・・・事実関係が異なっていることを誤報というのである。・・・負債というバランスシート上の話を持ち出したことは、私は一度もない。》と,取材源である「大学人の会」の見解を,あろうことか“泥棒の理屈”呼ばわりしたことに端を発している.

 「大学人の会」は3月8日に見解を発表し,そのなかで,市長の主張である(1)「負債ということを理由に改革を持ち出したことはない」,(2)「トップダウンではない」,(3)「密室で決めたことは一度もない」が,まったくの虚偽であることを論証して市長発言の撤回を求めた[脚注7].なお,筆者も,《事実関係が異なっていることを誤報というのである》という市長発言にしたがって事実関係を徹底的に検証し,『東京新聞04-2-16』報道が《完全に誤報や100%誤報 》であるという市長発言は悪質な“言いがかり”で,それどころか,すべての点で“真実報道”であることを明らかにした[脚注8]

 これに対し,中田市長は,4月16日に第1回目の“官僚的不誠実回答”で応じ,上記3点の主張を,壊れたテープレコーダのようにくりかえした.これに対し,「大学人の会」が,市長への再質問状を発表し,そのなかで,《・・・(1)「市大の大学改革に負債ということを理由に持ち出したことはないこと」に関して.市長の諮問機関「あり方懇」が出した答申は、改革の理由の一つに市大の負債問題を取り上げています。これは市長の改革意図に反するものと考えますが、それに対して市長は反論または批判をされておりますか。(2)「トップダウンではなかったこと」について.東京新聞の特集記事(2004.4.20)で、市大の小川学長が「改革が進むなら中田市長のトップダウンで構わない」と発言し、「市長の意向を受けての改革案づくりだったことを認めた」ことについて、どうお考えですか。(3)「密室審議ではなかったこと」について.市立大学改革推進・プラン策定委員会が「改革案」をまとめる過程で委員会のメンバーに緘口令をしいたこと、教員の任期制等重要な問題で教授会の審議を経なかったこと等、についてどうお考えですか。》と,市長の急所を鋭く突いた[脚注9]

 これに対しては,さすがに反論できないだろうと思っていたところ,驚いたことに,2ヶ月半も経った後に第2回目の“官僚的不誠実回答”(7月14日付)を「大学人の会」あてに送ってきたが,これも,直後に任期なかばで解任を告げられることも知らずに市長の“忠犬”役を懸命に努める小川学長のことばを新たな反論の“根拠”と称して引用した以外は,上記の質問にはまともに答えていない(答えられない)“はぐらかし回答”であった[脚注10]

 それにしても,主要メディアとして初めて「横浜市大問題」の真相を大きく報道し,“市民派”中田市長の仮面を剥いだ『東京新聞』(2004年2月16日付け)報道がよほどコタエタのか,中田市長による“言い逃れのための悪あがき”はまさに必死の様相を呈するものだった.すでに述べたように,まず,直後の定例記者会見(2004.2.19)において,きかれもしないのに,中田市長自らが『東京新聞』報道は《完全に誤報のたぐいである》などと長々と虚偽の主張をまくしたて[脚注11],ついで翌日(2004.2.20)付けで,“忠犬”小川学長をして,東京新聞特報部長宛に《抗議および善処方申し入れ》をさせ(実際には,おそらく,事務局の手になる作文に学長が署名)[脚注12],さらに,横浜市議会において自民党議員の(八百長)質問に答えるかたちで,小川学長および高井事務局長をして,上記の事務局作文にしたがって市長を擁護すべく“証言”という名の“ウソ答弁”を行わせしめた(2004.3.11)[脚注13]

 その後も(および,それ以前からも),あらゆる機会を通じて中田市長は,今回の“回答”にあるのと同様の発言をくりかえした.すなわち,改革案(「横浜市立大学の新たな大学像について03-10-29」)は,大学自らがまとめたもので,『東京新聞(2004.2.16)』報道にあるように「トップダウン」で決めたものではないとくりかえし強調した.たとえば『新春恒例市長対談(2004.1.1)』のなかで中田市長は,《・・・横浜市立大学についても自ら「こう変わりたい」というプランが出て参りました。》[脚注14],また,『平成16年市長年頭所感(2004.1.7)』のなかでも,《・・・横浜市立大学については、・・・横浜が税金を出すことの意味をどう定義できるか問うたところ、自らの再定義と改革案が示されました。》[脚注15],最近では,『市長定例記者会見(2005.3.9)』のなかで,《・・・横浜市立大学には、既に自ら策定した中に、当然、市民に貢献できる、市に貢献できるような大学のあり方を目指していこうということが含まれているわけです。》と述べた[脚注16].つい先日の『横浜市大入学式来賓あいさつ(2005.4.5)』のなかでも,「これから先は、それぞれに幸福感、価値観を温めなければならない。新しい大学ではこれまでの伝統の上に新たな価値を作る。市長として、大学の中身に口を出したことは一度もない」と述べた上で、昨年の浜大祭での講演と同様に「八割は市民の税金でまかなっている大学だということを頭に入れてほしい(注:この発言も事実を歪曲)」と強調した[脚注17]

 中田市長は,このような“不正直発言”・“ウソ発言”をいつまでくりかえすのか?

(2005.4.12 佐藤真彦)


[脚注]

(1)横浜市立大学問題を考える大学人の会:「横浜市立大学の教員全員任期制・年俸制・評価制導入の撤回を求める」-研究・教育の劣化を押しとどめるために- 05-3-24
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050324daigakujin.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-03/050324daigakujin.htm 

(2)05/4/1“市民派”中田市長、またも「大学人の会」へ“官僚的不誠実回答” (2005.4.12)
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-04/050412nakada-kaitou.htm 

(3)永岑三千輝氏『大学改革日誌』(2005.4.11)
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-04/nagamine.htm

(4)“市民派”中田市長の“官僚的”不誠実回答―“横浜市大問題”関連資料集―04-7-18
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040718nakada-siryou.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-07/040718nakada-siryou.htm 

(5)『東京新聞』2004年2月16日付 こちら特報部:『改革』に揺れる横浜市立大 学部統合全教員の任期制 研究費ゼロ
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040216tokyo.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-02/040216tokyo.htm  

(6)中田横浜市長定例記者会見2/19で東京新聞記事2/16を批判
http://www.city.yokohama.jp/se/mayor/interview/2004/040219.html 

(7)東京新聞2月16日朝刊報道に関する中田横浜市長の「誤報」発言について:市長に発言の撤回を求める04-3-8
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040308daigakujin-gohou.htm  
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-03/040308daigakujin-gohou.htm  

(8)中田市長の “東京新聞報道は 『完全に誤報』 発言” を検証する04-3-3
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040303gohou.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-03/040303gohou.htm 

(9)久保新一・柳沢 悠(「横浜市立大学問題を考える大学人の会」):「市長の『誤報』発言についての(回答)」について04-4-30
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040430daigakujin-gohou.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-04/040430daigakujin-gohou.htm 

(10)“市民派”中田市長、またもや“官僚的”不誠実回答――市長の「誤報」発言について(回答)04-7-14
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040714nakada.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-07/040714nakada.htm 

(11)「ごごご誤報ですよ!」”赤字報道”に言ったれや
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-03/040315spoichi-gohou.htm

(12)04/2/20小川学長の書簡:『東京新聞』2月16日付記事に対する抗議及び善処方申し入れ(2004.5.13 up)04-5-13
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040220ogawa.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-02/040220ogawa.htm 

(13)市会傍聴記の感想(続々々):市長の『東京新聞報道は“完全に誤報”発言』を擁護する学長ら04-3-18
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040318kansou+++.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/04-03/040318kansou+++.htm 

(14)青葉区 タウンニュース: 新春恒例市長対談 民との協働で新時代の横浜を 中田宏横浜市長に2004年の市政運営を聞く 
http://www.townnews.co.jp/020area_page/01_thu/01_aoba/2004_1/01_01/aoba_top1.html  

(15)平成16年1月7日 - 市長年頭記者会見 【資料1】市長年頭所感「平成16年年頭にあたって」 
http://www.city.yokohama.jp/se/mayor/interview/2004/04010703.html  

(16)横浜市、大学と都市の連携について  中田市長「横浜市立大は最も有力で最も私たちとしても期待をする大学」?!05-3-17
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050317katayama-nakada.htm 
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-03/050317katayama-nakada.htm 

(17)中田市長 市大入学式で、またも、“大ウソ” 《市長として、大学の中身に口を出したことは一度もない》 横浜市大新聞 ニュースブログ (2005.4.5)
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-04/050405oouso.htm 


投稿者 管理者 : 2005年04月13日 00:41

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