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2005年04月19日

東大・小宮山宏総長、世界一の総合大学へ意欲、退路を断ち改革実行

化学工業日報(2005/04/18)

 今月就任した東京大学の小宮山宏総長は「世界一の総合大学」を目標に掲げる。昨年四月の国立大学の法人化は東大にとっても安穏とできない厳しい競争環境での戦いとなる。任期四年を「退路を断って」改革に突き進む第二十八代の小宮山総長の手腕が期待される。(伊地知英明)
 東京大学は国際的にベストテン前後の評価をいただいている。しかし、世界的にし烈な競争に置かれている。このなかにあって東京大学は「世界一の総合大学」を目指す。世界一とは、世界の研究者や学ぼうとする人が、先端の知を集めて社会システムを議論する場として東大を選ぶかだ。もちろん学術領域を絞り込むことはあり、これが大学の個性となる。実現に向け、四年間の任期でやるべきことを百日間で抽出し、優先順位をつけて推進する。
 大学は各人の確信に基づいて教育、研究する場であり、必ずしも民間の経営センスや総長のリーダーシップだけでは運営できない。生命体を表現する概念である「自律分散協調系」が大学のあるべき姿だと考える。とくに学術領域の細分化は教員同士でも互いをみえにくくしている。知識が構造化した全体像は外部からも分かりやすく、その全体像から教員が自らの研究を認識することも期待している。
 何より協調が重要となり、その仕掛けは総長のリーダーシップで行う。教育では世界トップレベルの研究者、学者による「学術俯瞰講義」をスタートさせる。研究では細分化した学術に新しい統合化の流れをつくる「学術統合化プロジェクト」にも着手する。まずコンピューター上で人間を再現する人間シミュレーションから始め人工物、地球、宇宙にも取り組む。また教育、研究の支援組織も変える。東大の部局数は四十にも達し、人を養成し、知識をつくることは共通だが、具体的な使命は異なる。そこで本部職員が部局パートナーとして教職員の依頼をたらい回しにせずにワンストップで応える「飛車角方式」を検討している。
 知識の協調が神経網であるとすれば、資金は生命を維持する血のめぐりである。日本は世界の先進国のなかでも高等教育への投資が少なく、いかに確保していくかが課題となる。当然、民間の知恵を生かした経費削減は不可欠だが、活動そのものを縮小させることはしない。このためにも国からの運営費交付金は減らすべきではなく、制約も多い。さらに五百億-一千億円規模の基金を創設して、その運用で資金を活用して世界で戦う。
 大学の構成員は信頼している。だから無理やりなリーダーシップは必要ない。総長としての講義も行う予定で、人と人との関係を濃いものにし、教育・研究現場をよりよくするために努力していきたい。


投稿者 管理者 : 2005年04月19日 01:20

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