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2005年05月02日

全道憲法世論調査

北海道新聞(2005/04/30)

 北海道新聞社が二十三、二十四日の両日、北海道新聞情報研究所に委託して行った憲法に関する全道電話世論調査では、回答者の約八割が憲法改正に前向きな姿勢を示した。しかし焦点の九条については、「すべての戦争を放棄するよう明記」「自衛戦争は容認」などと意見が二分された。この結果をどう読み解くか。北大大学院法学研究科の常本照樹教授(憲法)の分析と共に、個別テーマの回答内容や調査結果の詳報を紹介する。
■改憲容認8割に迫る
*北大大学院法学研究科常本照樹教授の分析
*「出自」より「時代の変化」*20-40代強い「平和志向」
 改憲容認派が道民の約八割に上っているだけでなく、社民党や公明党支持層でも七割前後を占めているのは、近年のほぼ一定した傾向で、憲法改正がもはやタブーではなくなったことを明らかに示している。民主主義を標榜(ひょうぼう)する政党や各種組織は、これを「民意」として受け止めなくてはならないだろう。
 改憲容認の主たる理由が、戦後初期に主流であった「押し付け憲法論」に基づくものではなく、「時代の変化に応じて改めた方がよい」という、いわば当たり前のことである点は、現行憲法の定着を前提とした改正論といってよい。
 この点は年齢構成で見るとより顕著で、改憲を時代の変化ととらえる人々は、二十代から四十代では七割に上る。現行憲法制定後に生まれ育った世代には、「憲法の出自よりも今の問題を考えたい」ということだろう。この点は、若い世代の関心事の上位に「個人情報保護・プライバシー」が挙がっていることにも表れている。
 改憲容認派のうち九条改正を望むものが九割と大多数だが、改正の方向が「自衛戦争の承認」と「戦争の(全面)放棄」のほぼ正反対に二分されている。「戦力不保持」についても同じ傾向が見られる。年代別では、二十代から四十代に「平和志向」が強く、国際貢献にあたっての武力行使についても否定的だ。これも、この世代に現在の「平和」憲法が「定着」していることを示しているといえよう。
 ただ、世論調査に表れる「民意」は、設問の仕方や、その時点での国際情勢、社会状況によって変わり得る。「国際関係を悪化させる恐れがあっても憲法改正に踏み切るべきか」などの質問があった場合、(改憲容認八割という)結果が変化した可能性はないではない。政界関係者は、こうした点にも留意すべきだ。(談)
*「押し付け憲法」わずか5%
 憲法改正に賛成する理由として最も多いのは「時代の変化に応じて改めた方がよいから」の70・1%。前回調査(二○○四年四月)より4・5ポイント上昇し、社会状況の推移に憲法も変えざるを得ないとする意見が増えた。中でも三十代(73・5%)と四十代(75・8%)の高率が目立つ。
 ほかの理由は「解釈が分かれる条文をはっきりさせたほうがよいから」(20・0%)、「押し付けられた憲法だから」(5・5%)、「堂々と軍隊を持つべきだから」(3・1%)と続く。
 改正反対の理由では、「世界に誇る平和憲法だから」の52・8%が最多。今回、新設の選択肢である「変えたい部分はあるが、いま変えれば9条改正につながるから」は21・7%を占めた。改憲論に理解を示しながらも、戦争放棄をうたう九条改正だけは避けたいと願う人たちの存在が浮かぶ。次いで「基本的人権が保障されているから」(8・5%)が続いた。
*「すべての戦争放棄」無党派層の44%に
 調査の結果を支持政党別に分析すると、「全面的に改めるべきだ」「一部を改めるべきだ」を合わせた「改憲派」は、自民党支持層(21・4%)のうち86・0%。また民主党支持層(19・0%)の73・7%、支持政党のない「無党派層」(48・0%)の77・5%も、改憲を容認している。
 同様の傾向は公明党、社民党の支持層でも見られる。既成政党の中では共産党支持層(3・8%)が唯一、過半数を「護憲派」が占めた。
 ただ九条への考え方を見ると、「(変更して)自衛戦争を含むすべての戦争を放棄することを明記すべきだ」との回答が、無党派層では44・6%、社民党支持層(3・4%)では五割に上った。
 一方、自民党支持層では「自衛戦争であれば良いことを明記すべきだ」が52・2%と多数派。民主党支持層は「すべての戦争放棄」が41・4%、「自衛戦争であれば良いことを明記」が40・0%と、見解が分かれた。
*「海外で武力」に反対50%
 憲法を一部または全面的に改正すべきだと答えた人の意見は、「自衛隊あるいは、陸海空軍その他の戦力を持つことを明記すべきだ」(48・6%)と、「(現状のまま)変更しなくても良い」(45・7%)がほぼ拮抗(きっこう)している。
 年代別では二十代で「変更しなくても良い」と答えた人が63・2%を占めるなど、若年層ほど現状維持を求める傾向が強い。中高年層では「戦力を持つことを明記」が上回り、戦争体験世代の六十、七十代では六割近くに上る。
 一方、国際貢献のあり方については「自衛隊と民間を使い分けるべきだ」が全体の56・2%で最も多かった。「主に自衛隊が担うべきだ」は15・2%にとどまったが、昨年四月の前回調査からは、6・0ポイント上昇している。
 イラクの自衛隊は、武力行使しないことを条件に多国籍軍に参加したが、「国連の決議がある場合も海外で武力行使すべきでない」と考える人は過半数の50・2%を占めた。
*新憲法草案*各党の思惑に隔たり*折衝 早くても次期衆院選後
 憲法改正をめぐっては、衆参両院の憲法調査会が四月に相次いで最終報告書をまとめ、自民党、民主党、公明党の主要政党も改正を前提に党内論議を進めており、改憲か護憲か-という自社五五年体制当時の対立は過去のものとなった。しかし、改正内容や思惑には開きがあり、改正案が一気にまとまる状況にはない。
 衆院憲法調査会の報告書は焦点の九条について「自衛権及び自衛隊について何らかの憲法上の措置を取ることを否定しない意見が多数」と改正の方向を明記した。「否定しない」との控えめの表現になったのは、九条改正に積極的な自民党と、党内に慎重・反対派を抱える民主党、公明党の妥協点を探った結果だ。
 改正の党内論議が最も進んでいるのは自民党で、五月に新憲法起草委員会の試案をまとめ、結党五十年の十一月に改正草案を公表する。党内には、改正発議に衆参両院議員の三分の二以上の賛成が必要なため、民主党、公明党に配慮した内容にするか、自民党色を強調するかで意見が分かれている。天皇を「元首」と明記するか、「象徴」のままにするかなどに双方の対立が反映されている。
 民主党の憲法調査会は二十一日まとめた「憲法提言」の基本的考え方で、国民主権など現行憲法の三原則に「環境重視」を加えて四原則とすることや、「分権型社会」などを柱に据え、自民党の改憲論との差異化を図る。
 公明党は現行憲法に新たな条文を加える「加憲」の立場だが、自民、民主両党の状況をにらみ、慎重に論議を進める方針だ。
 共産党、社民党は九条をはじめ憲法改正反対を貫いている。
 自公民三党は、憲法改正手続きを定める国民投票法案の共同提出に向けて連休明けから協議を始める。ただ、民主党内には次期衆院選での政権交代を最優先させる立場から「自民党主導の改憲論議に乗るのは得策ではない」との慎重論も根強く、憲法改正自体が政治日程に上るのは早くても次期衆院選以降となりそうだ。

[関連ニュース]
「憲法見直し」52% 九条堅持は過半数 本紙世論調査(琉球新報5/01)

投稿者 管理者 : 2005年05月02日 00:15

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