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2005年05月06日

埼玉大、裁量労働制が焦点に

埼玉大学の将来を考える会より

裁量労働制が焦点に―2005年度の労使交渉

5月の連休明けを目標に埼玉大学の各部局で過半数代表の改選作業が進んでいる。今回選出される代表は、2006年度の就業規則に盛り込まれるさまざまな労働条件に関して、使用者側と話し合うことになる。なかでも教員に対する裁量労働制の適用の可否に関する議論が、非常勤職員の処遇をめぐる問題とともに、交渉の焦点として浮上してくることになろう。

教員に対する裁量労働制の適用は、2004年4月の法人発足に先駆けて、前執行部と過半数代表の間で議論された。そのときの過半数代表は①民間会社では裁量労働制は時間外賃金減らし・労働強化の一環として導入する例がめだつ②以前は裁量労働制適用外職種であった大学教員に法人化と時を同じくして適用されることになったいきさつが明確でない③裁量労働制の適用の条件である「研究時間が総職務時間の50パーセント超」に該当する教員が埼玉大学にどのくらいいるのか不明である。まず、教員の労働時間調査を行う必要がある――などの理由で、大学執行部の提案を拒否していた。

2005年度就業規則をめぐる交渉を終えるにあたって、過半数代表と埼玉大学学長の間で、「教員の裁量労働制の導入の可否については、今後速やかに検討を行う」という確認書が2005年3月28日付で取り交わされた。大学執行部は引き続き裁量労働制導入に執着しているようである。いずれ新しい過半数代表に提案することになろう(参考)。

一般的な大学教員がはたして総労働時間の半分以上を研究に使っているだろうか。筆者の周囲を見渡したところ、半分以上は教育関連業務に費やしているように見受けられる。ざっとした感触では以下のような計算になる。1回の授業時間は1時間30分だが、①ハンドアウト作りなど直前の準備に30分②授業後の残務整理に1時間③資料収集、関連文献閲覧、授業の詳しい進行計画など1回の授業の事前準備に2時間、と1回の授業に必要な時間は合計5時間となる。週4コマの授業をもつと20時間。これに加え、毎週のオフィスアワーのための待機が最低2時間、会議が平均2時間、学部、院生の論文指導などが4時間で8時間。毎週合計28時間が授業関連にあてられる。そうした週が年間30週あるから計840時間となる。また、授業が行われない年間20余週についていえば、中間・期末試験のレポート採点、成績結果作成に最低半期1週間を費やすから年間で2週間、80時間。新学期前にシラバスと半期分のおおまかな授業計画作成に1科目15時間かかるので4科目で半期60時間、年間120時間。これだけで200時間となる。あわせると年間の研究以外の労働時間は、840+200=1040時間となる。文部科学省の調査でも、大学教員の総職務時間中の研究時間の割合は46.5%で、50パーセント未満だった(参照)。

大学法人化は「こんなに国立大学はいるのか」という小泉首相の指示で加速した(参照)。国立大学がつぶれたら、国の責任を問う前にまずは法人の長の責任、という法人法をつくった。あとは運営交付金査定のさじ加減で地方弱小国立大学を整理できる、という態勢ができあがった。したがって大学法人執行部はあちこちで効率化、競争、節約などを魔よけのように痙攣的に唱えている。そういう油断ならない状況下での裁量労働制導入交渉になる。あたらしい過半数代表の英知と活躍に期待がかかっている。
(花崎泰雄  2005.5.4)


投稿者 管理者 : 2005年05月06日 00:10

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