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2005年05月07日

自由法曹団、憲法調査会「報告書」に抗議し憲法調査会の即時解散を求める声明

自由法曹団
 ∟●憲法調査会「報告書」に抗議し憲法調査会の即時解散を求める声明(2005年5月6日)

憲法調査会「報告書」に抗議し憲法調査会の即時解散を求める声明

2005年5月6日
自由法曹団団長 坂本 修

1 2005年4月14日、衆議院憲法調査会が「報告書」を衆院議長に提出し、同月20日には参議院憲法調査会も参院議長に提出した。憲法調査会は2000年1月から「調査」を進めてきたが、その結果を最終報告書として提出したものである。しかし、いずれも改憲に向けての議論をまとめ、改憲の方向性を示したものであり、自由法曹団は「報告書」に強く抗議する。
2 「報告書」は憲法「改正」の方向をにじませているが、これは調査会の任務と限界を逸脱したものである。調査会は「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」、「改正の議案提案権を持たない」として設置されたものであるから、憲法の運用状況や必要法令の整備の有無など、憲法の理念が現実の政治で生かされているか、そこに障害や問題点はないか等を調査・検討すべきである。にもかかわらず、当初から最後まで「調査」に名を借りた改憲論議に終始し、その論議をまとめたものが「報告書」にほかならない。しかも、その内容は、「改正」の意見が「多数」であるとか「すう勢」だとして9条改憲へ向けた方向づけをしているが、これは「報告書」を通して国民を意図的に改憲論議へ誘導し、9条「改正」に対する国民の抵抗を和らげることを企図したものといわざるをえない。
3 「報告書」は国民多数の意見を反映したものではない。5年間の「調査」が示した重要な事実は、「9条は日本国民の命」「9条は光り輝く宝石」等々、調査会が実施したすべての公聴会において9条改憲反対が国民の多数であることを示したことにある。医療・福祉・防災など「平和の技術」を駆使した日本の主体的役割を求める声、男女平等・人権・生存権・地方自治の分野での憲法政治を求める声、が国民の多数であることも明らかとなった。しかし、「報告書」は憲法擁護の国民の声を封殺し、改憲派議員の意見にもとづいて改憲の方向を打ち出している。このことは国民世論から遊離した改憲論議が調査会で展開されたことを物語るものである。
4 「報告書」は調査会の存続を求めているが、この意味は国民投票法案の付託委員会として機能させるなど、論議の段階から改憲手続を具体的に進めていく新たな役割を調査会に担わせようとするものである。しかし、そもそも憲法調査会の設置目的は調査に限定されているのであり、「報告書」をもって調査会の存在意義はすでに失われている。しかも、改憲が国民の声でないことが明らかとなった以上、調査会を存続させて改憲手続を推し進めることは憲法制定権力者である国民の意思に逆らうものにほかならない。調査会は直ちに解散すべきである。
5 調査会設置からの5年間、アメリカのアフガニスタン攻撃に自衛隊が参戦したのをはじめ、米軍占領下で戦闘が継続するイラクへの自衛隊派兵、有事法制の制定、改憲案づくり等、この国を「戦争ができる国」に作り変える動きが強まっているが、「報告書」はその危険な流れをいっそう加速させる狙いをもつものである。しかし、わが国がいま直ちに取り組むべきことは、9条にもとづく「戦争のない世界」を実現する平和外交であり、日本国憲法が保障する豊富な人権規定を実際に生かした憲法政治の実行である。
 自由法曹団は、改憲に拍車をかけようとする「報告書」に強く抗議し、憲法調査会の即時解散を求めるとともに、国民投票法案など国会で改憲手続の議論を進めることに断固反対するものである。


投稿者 管理者 : 2005年05月07日 00:12

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